就活ルール廃止で就活はどう変わるか
経団連会長の「就活ルール廃止発言」がその後も大きな反響を呼んでいます。安倍総理が反対を表明する一方、麻生財務相や経済同友会代表は理解を示すなど、評価は割れているようです。
この問題について正しい理解が広まるよう、就活ルールを廃止した場合に企業の採用活動がどう変わっていくかについてまとめておきましょう。
就活ルール廃止は必ず新卒一括採用の見直しにつながる
今回の就活ルール廃止の背景にあるのは「外資や新興企業が早々と内定を出すからだ」とする見方もありますが、やや不正確です。そういった非・経団連企業による青田買いは昔から行われてきたことです。いくら早期に内定を出されたとしても、大企業が後から内定を出して内定辞退させれば済む話です。
問題は内定を出す時期ではなく、大企業が行っている新卒一括採用では優秀な学生を採用できなくなりつつあるという点にあります。ですから就活ルール廃止後、新卒一括採用自体も見直しが進むことになるでしょう。
採用は長期化ではなく二極化する
では具体的にどう変わるかといえば、2,3年生の長期休暇中に実際の職場で数週間程度のインターンを実施し、適性を査定したうえで選考が行われることになるはずです。
とはいえ、すべての採用枠をインターン経由で行うのは非効率です。具体的な配属先を決めずに入社させ、会社都合で担当業務を決めるという採用枠は会社にとってこれからも必要でしょうし、そちらの方が安心できるという学生も少なくないでしょう。
結果、実際には一部の専門性の高い職種のみをインターン経由で採用し、その他の職種は従来通りの一括採用に近い形で採用が行われるはずです。そういう意味では就活は長期化するというよりも二極化すると言えます。
学生はもっと勉強するようになる
「就活ルールを廃止して自由競争させると学生が勉強する時間が無くなる」という声もありますが、まったく心配いりません。なぜかというと、就職活動を規制している現状でも日本の大学生はほとんど勉強しておらず、いくらでも時間的余裕があるためです。
むしろ、インターン受け入れ選考では学業や専攻内容を重点的にチェックするようになるはずなので、従来より学生の勉強量は増えるでしょう。
キャリア教育がとても重要になる
従来の新卒一括採用においては、採用後にいろいろな業務でOJTを経験しつつ、結果的に20代半ば~後半でキャリアの礎を構築するというのがキャリアパスの流れでした。
ただ、インターン経由での採用においては、このプロセスが大学時代に下がってくることになります。そのため、高校段階で一定の労働観、キャリアビジョンを与えられるような教育が必要となるでしょう。
これは最終的には家庭の教育方針にも大きく影響するでしょう。「具体的な目標やビジョンがあってそのために高等教育機関に進学する」という子供を育てることが必要となるためです。
と言われるとハードルが高いと感じる人もいるでしょうが、「特にやりたいことはないがマークシートのテストは得意だ」という子供を育てるよりそちらの方がよほど健全だというのが筆者のスタンスです。