Yahoo!ニュース

NY金13日:小幅続落も、週末にパリでテロ発生

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

COMEX金12月限 前日比0.10ドル安

始値 1,083.50ドル

高値 1,088.00ドル

安値 1,078.20ドル

終値 1,080.90ドル

為替相場がドル高方向に振れたことが嫌気され、期近は小幅続落した。ただ、期先は前日比横ばいに留まっており、大きな値動きには発展しなかった。

アジアタイムから終日1,080ドル台前半をコアとした小動きに終始している。為替市場では改めてドル高圧力が見られたことが、ドル建て金相場の上値を圧迫した。原油相場の軟化傾向が続いていることで、商品市況全体の水準が切り下がっていることもネガティブ。ただ、週末を前にしたショートカバー(買い戻し)を入れる動きも強く、ほぼ前日終値と同水準で引けている。

なお金相場を取り巻く環境は厳しい。特に目立った材料は見当たらなかったが、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ着手の方向性を織り込む動きは強い。本日は米長期金利が低下したものの、為替相場はドル高方向に振れ、CRB商品指数は年初来安値を更新している。クリーブランド連銀のメスター総裁が「米経済は政策金利の引き上げに耐えられる」と発言するなど、米金融政策の正常化プロセスに対する圧力は着実に強くなっている。

10月小売売上高が前月比+0.1%となり、市場予測+0.3%を下回ったことはポジティブ。ただ、ガソリンや自動車・同部品といったブレが大きい項目が一時的に悪化しただけの可能性が高いこともあり、これを手掛かりに改めて金相場を買い進むような動きまでは見られなかった。11月ミシガン大学消費者マインド指数が前月の90.0から93.1まで急伸したことも、金価格の上値を圧迫した。金上場投資信託(ETF)市場からの資金流出傾向も続いており、なお金相場を取り巻く環境は厳しい。このため、年初来安値1,072.30ドル割れを打診する展開は維持されていることが確認されており、金相場に対してはなお強力な先安感が存在した状態にある。

ただ、ニューヨーク市場もクローズして殆どの市場参加者が週末入りした後、フランスのパリで犠牲者が129人にものぼる大規模なテロが発生した。市場がクローズしている時間帯のテロ発生とあって、この材料を消化する時間は十分にあった。ただ、まだ現在の金価格にはテロを受けての相場環境の変化は全く織り込まれていないだけに、週明けのマーケットではリスクオフの動きが金相場を押し上げるリスクを想定しておく必要がある。ここ最近の地政学的リスク後のグローバルマーケットの値動きを考慮すると、年末に向けて本格的なリスクオフ局面に発展するとは考えづらい。ただ、株価動向などによっては短期スパンで安値是正の動きが強まる可能性も想定せざるを得ない状況になっている。1,100ドル水準までは自立反発だけでも達成可能である。一時的な戻りリスクを想定しておけば十分と考えているが、テロを受けて最初の取引でグローバルマーケットがどの程度の衝撃を受けるのかを確認すべき局面になっている。

画像
マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

小菅努の最近の記事