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「進化を実感」2階級制覇を目指す元WBOチャンプ

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
撮影:筆者

 元WBOミニマム級チャンピオンの谷口将隆が、10月13日(日)、プロ23戦目のリングに上がる。今回の会場は横浜武道館。対戦相手はWBA級暫定王座に就いたことのなるパイ・パーロップである。

 2021年12月14日に世界王座に就いたファイトから、3年が過ぎようとしている。谷口は2023年1月6日に行われた2度目の防衛戦でKO負けを喫した。試合前からミニマム級の体を作ることに限界を感じていた谷口は、王座陥落後、ライトフライ級に転向。元同級日本王者の堀川謙一に判定勝ちするも、顎を2箇所骨折。その後、リハビリを重ねながら下半身を中心にフィジカルを鍛え、今年5月に5ラウンドKO勝ちでリングに復帰した。

撮影:筆者
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 試合を間近に控えた谷口は言う。

 「パーロップは頑丈でパンチがありそうですね。あの一発を喰らったら危ないな、倒れてしまうな、と警戒しながら練習してきました。前回、パーロップが日本でやった試合も、ダウンを奪っていますよね…結果は負けでしたが。絶対に集中力を切らさないことをテーマにしています。

 パーロップは41歳ですが、自分は43歳の堀川さんに顎を割られていますから、年齢は関係ありませんね。老獪さでカバーしてくるでしょう。彼のキャリアに飲み込まれないようにしたいです」

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 顎の骨が完治するまでの間、谷口は自分のボクシングをじっくりと見つめ直した。<なぜ、自分はKO率が低いのか?>をひたすら自問自答した結果、タイミングの悪さだという回答を出す。

 「ズレるんですよね。攻と守が分離してしまう。全体重を中指のナックルに、乗せなければいけません。そのイメージを本番のリングで発揮できるよう、一歩一歩積み上げているところです。少しずつですが、スパーリングでは距離感やタイミングが掴めてきました。が、実戦ではまだですね。5月の試合も新しい自分を出せたとは言えません。でも、及第点くらいはいったかな。

 5月の一戦は、序盤に集中して相手を削りながら、自分の当てたいパンチ、当たるパンチを探っていきました。消耗させた上で、クリーンヒットすることを意識したんです。ボディで崩して左クロスが出せたのが良かったですね。これまでサウスポーに右ボディは出せていなかったので、克服できた点が収穫です」

撮影:筆者
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 谷口は、来たる13日も、自分のイメージと体のズレをどこまで埋められるかがテーマだと話す。

 「自分が伸びている実感があります。ここ最近、ボクシングが楽しくて仕方ないんです。今の僕が一番強いと感じますね。谷口将隆はこれから円熟期を迎えます!

 サバイバルに勝ち抜きながら、チャンスを待つ状態でしょうか。WBOアジアパシフィックタイトルや、OPBF東洋太平洋タイトルなど、自分よりランキングが上の選手と是非、やりたいですね」

 このところ、谷口は定期的に解説のオファーを受けているが、冷静かつ的確な分析が高評価を得ている。

 「自分の頭で納得し、次にきちんと噛み砕いて発信することで、気付きや確認、振り返りがあります。それが戦い方にもプラスに働いています。参考になる動きは、どんどん取り入れていますよ」

撮影:筆者
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 2022年の4 月にYouTuberデビューも果たした。「自分の考えを言語化する」ことで、その日の課題や練習の反省にも活かせるようになった。

 「やるべきことのリストが頭の中で出来上がるんですよ。僕は今、進化していますから、10月13日はそういう姿をご覧頂きたいです。世界2階級制覇に結びつけられるようやっていきます。これまでの敗北も、全て糧にしていますよ」

 

 谷口将隆は、どんな形で自身の成長を披露するか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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