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ウクライナ軍「7月3日は地対空ミサイル部隊の日」"ウクライナの防空に栄光あれ!"

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

「地対空ミサイル部隊のおかげで多くのウクライナ人の命が救われています」

ウクライナ軍は2023年7月3日に「今日は地対空ミサイル部隊の日です。我々はロシア軍のドローン、ミサイル、戦闘機、ヘリコプターからウクライナの空を平和で安心に護ってくれる兵士たちに敬意を表します。地対空ミサイル部隊のおかげで多くのウクライナ人の命が救われています。彼らは常にウクライナの空を防衛してくれて、いつでも戦える準備ができています。ウクライナの防空に栄光あれ!」とウクライナ軍の公式SNSに投稿していた。

ウクライナ軍の防空のほとんどがロシア軍の攻撃ドローンからである。最近ではミサイルでの攻撃も目立ってきたが、圧倒的に多いのが攻撃ドローンである。2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。小型の民生品ドローンに爆弾を搭載して標的に突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンをウクライナ軍もロシア軍も多く使用している。

ロシア軍はロシア製の神風ドローンも使用しているが、イラン製軍事ドローン「シャハド」で毎日のようにウクライナの主要都市や軍事施設を朝から晩まで攻撃している。特に一般市民が寝静まった深夜や早朝にイラン製軍事ドローン「シャハド」で奇襲をしている。それらのドローンやミサイルをウクライナ軍の地対空ミサイル部隊が迎撃して破壊している。またロシア軍の監視ドローンも地対空ミサイルで大量に破壊している。

ウクライナ軍では2022年2月24日にロシア軍に侵攻されてから殺害したロシア軍の兵士の数、破壊した戦車、戦闘機など兵器の数をほぼ毎日公表している。地対空ミサイルによってロシア軍のドローン、ミサイル、戦闘機、ヘリコプターからウクライナの空を防衛しているが、2023年7月2日までに破壊した数はドローン3557機、巡航ミサイル1261機、戦闘機315機、ヘリコプター308機である。ドローンは他の兵器や乗り物と比べると安価で入手しやすく攻撃だけでなく監視にも使用されていることから、防空の観点ではドローンの破壊が目立っている。

上空からの攻撃に対する防衛は非常に重要であり、安全保障の観点からも急務である。上空のドローンを機能停止したり、上空で爆破するためのシステムや兵器もウクライナ軍には提供されている。上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように軍人が持って上空のドローンを爆発させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。地対空ミサイルは明らかにハードキルである。

また地対空ミサイルシステムや防空ミサイルだけでなく対空戦車のような大型システムで監視ドローンを攻撃して爆発させるのはコストもかかるし、大げさかと思うかもしれない。しかし監視ドローンこそ検知したらすぐに破壊しておく必要がある。監視ドローンで敵を検知したらすぐに敵陣をめがけてミサイルを大量に撃ち込んでくる。監視ドローンとミサイルはセットで、上空の監視ドローンは敵からの襲撃の兆候である。また部品を回収されて再利用されないためにも徹底的に破壊することができる"ハードキル"の方が効果的である。そして攻撃ドローンだけでなく、安価な監視ドローンも徹底的に破壊しておいた方がトータルでのコストパフォーマンスは高い。

▼ウクライナ軍は公式SNSで「7月3日はウクライナの地対空ミサイル部隊の日」を伝えている。

▼2023年7月2日までのロシア軍の兵器の破壊の数を伝えるウクライナ軍の公式SNS

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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