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[訃報]“天使の歌声”と賞賛されたジミー・スコットさん逝去

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家

遺伝性のホルモン欠乏疾患で変声期を迎えないことから備わった“天使の歌声”で世界を魅了したアメリカのジャズ・シンガー、ジミー・スコットさんが亡くなられました。享年88歳。

Jimmy Scott, jazzman with ethereal voice, dies

LAS VEGAS (AP)-- Jimmy Scott, a jazzman with an ethereal man-child voice who found success late in life with the Grammy-nominated album "All the Way," has died. He was 88.

引用:Jimmy Scott, jazzman with ethereal voice, dies|毎日新聞

ジミー・スコット『オール・ザ・ウェイ』
ジミー・スコット『オール・ザ・ウェイ』

1980年代末、勢いを失っていたメインストリーム・ジャズのシーンに再び灯がともり、脚光を浴びないなかで活動を続けてきたベテランたちにも再び注目が集まるようになってきました。

そんな“リヴィング・レジェンド(生きた伝説)”と呼ばれた人たちのなかでもひときわ話題になったのが、このジミー・スコットでした。

ニュースでも伝えているように、彼はホルモン異常の疾患によって変声期がないまま成人になりました。しかし、その独特の高音が評価され、プロとしても高い評価を得るようになります。

彼が“レジェンド”になったことに関係する、もうひとつ物理的な障害がありました。レコード会社と“排他的な生涯契約”というものを結んだため、レコーディングに関して自由に活動することができなくなってしまったのです。この影響でジミー・スコットの新しい録音物は20年間も世の中に出ることはありませんでした。失意のなか故郷のクリーブランドに戻った彼は、1985年にステージに復帰するまで、ホテルのフロント係や療養所の受付など音楽に関係のない仕事をして過ごします。

大きな転機が訪れたのは67歳を迎えた1992年。友人の葬儀で歌った彼の姿をたまたまレコード会社の役員が見て、彼のアルバム『オール・ザ・ウェイ』を制作。これが世界的なヒットとなり、再びジミー・スコットをメイン・ステージへと呼び戻すことになったのです。

♪the first time ever I saw your face( Jimmy Scott)

ご冥福をお祈りいたします。

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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