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投資家の熱狂への警戒、注意すべきは金融システムに潜むリスク

久保田博幸金融アナリスト
左がFRBのブレイナード理事、右はパウエル議長(写真:ロイター/アフロ)

 FRBは6日、半期に一度の金融安定性に関する報告書を発表した。このなかで、多様な資産市場でのリスク選好の高まりがバリュエーションを押し上げるとともに、米金融システム内に脆弱性が生じている。こうした状況下でリスク選好が低下すれば、資産価格の「大幅下落」が起こりかねないと指摘した。

 FRB金融安定委員会の委員長を務めるFRBのブレイナード理事は同報告に付随する声明で、「リスク選好の高まりに関連した脆弱性が高まっている」と分析。「バリュエーションの伸長と極めて高水準の企業債務が重なり、価格調整イベントの影響を増幅する可能性があるため注視が必要だ」と説明した(7日付ブルームバーグ)。

 欧米の株価指数が過去最高値を更新。国債利回りも一時期よりも多少上昇したとはいえ、かなり低位に位置している(国債の価格は高値にある)。景気回復への期待も相まって銀やアルミニウムなどの商品価格が上昇している。また、ビットコインなどの暗号資産やポケモンカードなどのレアアイテムにいたるまで資金が流入しており、リスク選好が高まっていることは確かであろう。

 このリスク選好の要因となっているのは、FRBを含む中央銀行の非常時対応ともいうべき大胆な金融緩和策と政府による巨額の財政政策である。いわゆる過剰流動性相場が起きている。

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は止まらないものの、感染にブレーキが掛かりつつある国を中心として景気が正常化に向かいつつある。コロナ禍により、歴史的な景気の落ち込みが起こったことから、その反動もまた歴史的なものとなりつつある。

 過剰な資金流入と景気回復による需要拡大も合わさり、インフレ圧力も強まりつつある。しかし、中央銀行の正常化への動きはかなり慎重であり、政府による経済対策も途中で止めることはできない。その分、投資家の熱狂は続き、バブルは膨らみ続けることになる。

 ブレイナード理事は声明で「力強い回復への期待で投資家が熱狂する中、金融システムに絡むリスクを注意深く監視し、弾力性を確保することが重要である」とも表明した(7日付ロイター)。

 金融システムに絡むリスクとは、たとえばアルケゴスなどが意識されたものとみられる。バブル時には、分散されて個別では見えにくいリスクが膨れ上がっていることがある。リーマン・ショックを生んだサブプライムローンのリスクなどもそうであろう。リスクはいくら分散されようが全体量が大きければ、その反動も当然大きいものとなる。

 アルケゴスの問題については、いまのところシステミック・リスクに及ぶことはなかった。しかし、大手金融機関の体力を削いだことは確かである。今後同様の問題が発覚し、リスクが表面化した際にはシステミック・リスクに及ぶことはないとは断言はできないであろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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