日本で発見…北朝鮮の女優が処刑された「禁断の作品」の決定的場面
北朝鮮で最近、エリート校である平城市第1高級中学校(高校に相当)の3年生の男子生徒3人が、同じ学校の女子生徒らを自宅やトイレなどで盗撮したことが明らかになり、大問題になったことは本欄でも伝えた。
当局は全員を退学させた上で、ひとりを少年教化所(少年院)送りにした。それなりに厳しい処罰ではあるが、同国で「性録画物」と呼ばれる映像についてははるかに厳しいルールがある。
たとえば、2020年12月に制定された反動思想文化排撃法は29条で、こうした映像を「見たり保管したりした者は、5年以上15年以下の教化刑に処す。これらを流入させ、流布した者には無期労働教化刑、罪状の重い場合には死刑に処す」定めている。
だが、北朝鮮当局は同法ができるずっと前から、こうした映像を極端に厳しく取り締まってきた。韓国のメディア、デイリーアンは2013年9月、北朝鮮筋の話として、映画「所属なき部隊」で人気を呼んだ、人民俳優のピョン・ミヒャンが出演した性録画物が日本で発見され、それを見た在日本朝鮮人総連合会(総連)の関係者が本国に通報したことで発覚し、制作に関わっていた人たちが家族の見守る中で極刑に処されたと報じた。
(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面)
ちなみに、この映像の制作者たちは、本国にバレないよう海外で作品を売っていたという。それなのに発覚してしまったきっかけは、作品中のある場面にあった。その場面にはハンガーに掛けられた服が映っているのだが、そこに金日成バッジが付けられていたことから、北朝鮮で撮影されたことがバレてしまったというのだ。
それにしても、明らかに被害者の存在する高校生の犯罪が「退学」と「少年院送り」で済まされ、必ずしも被害者がいるとは言えない映像作品について極刑を下すとは、きわめてバランスが悪い。
もちろん、高校生の行為に厳罰を与えればいいということではない。北朝鮮当局が何を「罪」と見なすかが、きわめて場当たり的に決められていることが問題だということだ。
原則のないルールはルールとは言えず、それをもって人々を統制することなどできない。北朝鮮当局は様々な悪法を通じて国民をコントロールしようとしているが、こうした示威的な振舞は、いずれ自己矛盾を増大させて体制に深刻な危機をもたらすかもしれない。