スペイン・カタルーニャ独立問題 ープチデモン元自治政府首相がブリュッセルで会見「亡命ではない」
「州政府はまだ活動を続けている」と宣言
スペイン北東部の自治州カタルーニャは、先月末の州政府による独立共和国宣言を受けてスペイン中央政府の直接統治下にある。
これまでの経緯を振り返ってみよう。
10月1日、独立をめぐる住民投票がカタルーニャ地方で行われ、有権者の43%が投票し、約90%が独立を選択した。住民投票を違法とみなす中央政府側は投票行為を阻止しようと手荒な手段を使った。
その後、独立を宣言しようとする自治政府とこれを阻止しようとする中央政府との間で駆け引きが続いてきたが、27日、プチデモン自治政府首相(当時)が州議会での独立支持を元に共和国としての独立を宣言したことで、中央政府は憲法155条の適用に動いた。自治州が憲法、もしくはその他の法律に基づく義務を満たしていない、あるいは国の利益を著しく侵害している場合に適用されるもので、中央政府はこれを使って自治権を停止する力を持つ。
そこで、ラホイ首相は州政府の閣僚らの解任、州警察幹部の解任などを実行した。12月21日に州議会選挙を行うことを発表している。
自治政府側は解任を認めていないが、以下では便宜上「元」をつけて表記する。
昨日から姿が一時見えなくなっていたプチデモン元自治州首相はブリュッセルで記者会見をし、100人を超える報道陣を前に「カタルーニャの合法的な政府はまだ活動を続けている」と宣言した。スペインの「司法制度に政治介入が行われている事態」に対し、政治的に戦ってゆくという。
12月21日の州議会選挙には参加する予定だが、もしその結果、独立派勢力が多数を占めた場合、「スペイン中央政府はこれを受け入れることができるだろうか」と問いかけた。
プチデモン氏はカタルーニャ州民に対し、今後の長い道程に備えるように呼びかけた。「平和主義こそが唯一の武器だ」。
同氏は国際社会に訴えた。「議論に応じない」スペイン政府が「軍事的行動を行い」、元自治政府閣僚らに対し(反逆罪などで)30年の禁固刑を課す準備をしていることを指摘し、「このようなやり方は欧州の考え方に反している。間違いだ」。
10月27日のカタルーニャ州政府による独立共和国宣言以来、中央政府が憲法155条を盾に対決的な姿勢を維持する一方で自治政府が宣言以上のことを実行に移さなかったのは、自治政府側も対決的になれば「暴力が発生する状態を防ぐためだった」と述べた。
これが共和国実現への歩みを遅くしたとしたら、「そうする価値があった」。
「政治亡命のために来たのではない」
プチデモン氏はまた、ブリュッセルに来たのは政治的な亡命のためではないと述べた。
「政治的亡命を求めてここに来たのではない」、「ブリュッセルに来たのは、独立問題が欧州の問題だと思うからだ」。国内では国家反逆罪などで起訴される可能性があり、ブリュッセルにいた方が「安全にかつ平和的に作業を進められる」と述べた。「ベルギーの政治とは関係ない」。
あとどれぐらいベルギーに滞在する予定かをプチデモン氏は明らかにしなかったが、スペインで公正な司法が行われることが確実になるまでは自国には戻らないことを示唆した。
プチデモン氏とともにベルギーに渡ったのは元農業大臣、元保健大臣、元労働大臣、元統治大臣、元内務大臣の5人。
ベルギーのミシェル首相はプチデモン氏はEU加盟国の他の市民と同様の権利と責任を持つ、と述べている。ベルギーとフランスは国境検査をせずに互いの国を行き来できる「シェンゲン協定」で合意しており、プチデモン氏は「自由に行き来できる」。
2つの異なる見方
カタルーニャ地方の独立については、賛成派と反対派という2つの立ち位置がある。
これまでの日本の及び欧州の報道を見ていると、「無謀な行動に出たプチデモン氏」という、否定的な文脈が多いように見える。
「スペイン政府は正しい」という立場に立つと、当然だろう。
しかし、独立賛成派の立ち位置からすると、違った面も見えてくる。
例えば、ある地域で住民投票が行われ、圧倒的な答えが出た時(圧倒的ではない、と見る人もいる)、これを無視するのはどうなのか。「住民投票自体が違法だから」といって、それで会話を終わらせることもできる。しかし、本当にそれでいいのだろうか。また、12月に州議会選挙があるとして、そこでもしプチデモン氏が言うように独立賛成派が多数となった場合、スペインの中央政府ははたしてこれを認めるのだろうか?
今日、ブリュッセルで会見をしたことで、プチデモン氏は「ボールを相手のコートに入れた」のではないか。
スペイン政府、あるいはEUはプチデモン氏と独立を支持したカタルーニャ市民になんらかの返答をするだろうか。