驚異の「奪三振」能力。“宝庫”ホークス育成に、未来の守護神候補を発見した!
背番号120の20歳右腕
宮崎県内で行われていた秋季教育リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」が10月28日に閉幕した。ホークスは16試合を行って10勝5敗1分。今季のファーム日本一に輝いた王者としてふさわしい戦績を残した。
ただ、この時期の若手主体チームで重要なのは「勝敗」よりも「個」だ。秋は「個」を磨き、アピールをする時期である。
このフェニックス・リーグでとてつもない個人成績を残した期待の新星がいる。
今季入団2年目だった尾形崇斗、背番号120だ。
以下の表を見れば、そのスゴさは一目で分かる。
尾形崇斗、フェニックス・リーグ登板戦績
・12日 対ハンファ(日向)
2回 0安打 無失点 5奪三振 0四球
・15日 対横浜DeNA(生目第二)
1回 0安打 無失点 3奪三振 0四球
・19日 対横浜DeNA(アイビー)
1回 0安打 無失点 2奪三振 0四球
・22日 対東北楽天(アイビー)
1回 1安打 無失点 2奪三振 0四球
・26日 対巨人(生目第二)
2回 0安打 無失点 4奪三振 0四球
・28日 対横浜DeNA(生目第二)
1回 0安打 無失点 2三振 0四球
計6試合にすべてリリーフで登板。8イニングを投げて被安打1、無四球で無失点の“準パーフェクト投球”を見せたのだ。
さらに驚くのが奪三振18である。じつに24アウトの75%を三振で取ったのだ。奪三振率に換算して「20.25」という、異次元の数字を叩き出した。
この驚異の成績。期待以上でもあり、一方では期待通りの結果でもあった。
藤川ばりの火の玉ストレート
今季の尾形は二軍公式戦では5月15日の阪神戦に一度登板したのみで、0.2回を投げて被安打2、2四死球、2失点、防御率27.00と全く振るわなかった。
しかし、主に三軍の非公式戦では25試合3勝1敗、防御率1.84、58.2投球回、43安打 21四球、5死球、86奪三振と一定以上の成績を残していた。やはり目を引くのが奪三振数だ。投球回数を大きく上回っている。
尾形の長所はストレートだ。
とにかく速くて、しかも伸びる。
球速は150キロに迫る。藤川球児(阪神)の全盛期の「火の玉ストレート」にそっくりだ。その真っ直ぐに加えてカーブやスライダーも制球が出来ている。三軍で対戦する独立リーグや社会人、大学の打者たちに手が出るはずもなかった。もう一目見ただけで三軍レベルではないのは明らか。NPBの打者相手への投球が見たかったところでのフェニックス・リーグだった。三軍戦と同様、むしろそれ以上の結果を残してみせた。
千賀のフォームを参考に大変身
尾形には確かな手応えがある。自身の変化をしっかりと理解している。
「4月27日に三軍で先発をした時に試したことがハマりました」
この日はタマスタ筑後で徳島インディゴソックスと対戦。4回3安打5奪三振1失点と好投した。
「それまでは上半身だけに頼った投げ方になっていて、何か違うなと思っていたんです。僕が参考にしたのは千賀(滉大)さん。千賀さんはセットポジションの時に少し右膝を曲げている。それを真似ました。すると右の股関節にしっかり体重が乗った感じになり、下半身もしっかり使って体重移動も上手くできるようになったんです」
あれこれ考えずにその一点だけを修正。結果は劇的に変化をした。
努力を継続できるという才能
もともと投げっぷりのいい投手だ。マウンドの姿から連想するのは現守護神の森唯斗だ。それくらい気迫が前面に押し出せるタイプである。
努力を継続できるタイプでもある。プロ1年目だった昨年は「トレーニングをし過ぎて」肋骨を疲労骨折したこともあったが、自身の体の構造や向き合っている課題などを嬉しそうに話す姿は非常に好感が持てる。
「これと決めたら、とことんやる性格なんです」
リリーフ投手の力量が、現在のプロ野球界では順位を大きく左右する。常勝時代を突き進むホークスの屋台骨もやはりブルペンだ。ただ、長く活躍するのが難しいポジションだ。毎年新しい顔ぶれが出てこなければ、そのチカラを維持することは出来ない。
まだ背番号120の尾形。今はほぼ無名の右腕が、来年の日本シリーズで大活躍する姿など多くのファンは想像できないだろう。しかし、彼の投げっぷりとマウンドでの立ち振る舞いを一度見てほしい。その夢を叶えてくれるかもしれないという期待感がどんどん膨らむはずだ。