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「球聖」タイ・カッブに肉薄しているイチロー

豊浦彰太郎Baseball Writer

現地時間7月30日のナショナルズ戦では3打数無安打に終わったイチロー。今季打率は.246と成績は不振だが、米通算安打数は2901本で史上30人目の通算3000本安打まであと100本を切っている。

しかし、今季はここまで57安打なので、加齢による衰えが進むと思われる来季中に3000本に到達できると断言するのはやや憚れる。いや、それどころか現在OPSが.589とかなり悲劇的な彼に、来季契約をオファーする球団があるかどうかも不透明だ。

しかし、現時点ではあまり日本メディアでも話題になっていないが、イチローには目前に迫っているマイルストーンがある。それは日米通算でのタイ・カッブ越えだ。

米通算2901安打のイチローだが、NPB時代に積み上げた安打数は1278本で、合計すると4179本となりカッブの4191本に対しあと12本だ。イチローは打率.208と不振を極めた7月でも15安打なので、出場機会さえ得られれば8月中にもカッブに並び、追い越す可能性は大だ。

カッブは20世紀初頭のボールが飛ばない時代のメジャーを代表する選手で、通弾打率.367は歴代1位。首位打者を史上最多の12度獲得。「球聖」の異名を取るレジェンド中のレジェンドだ。

もっとも、「日米通算」は、日本のスポーツ紙ではすっかりお馴染みになったが、NPBでもMLBでも公式記録ではない。しかし、イチローに関しては、アメリカのファンやメディアも一昨年の「4000本安打」を代表に、結構大きく取り上げている。

それは、彼らは常に「この偉大な選手がもっと早くからMLBでプレーしていれば、一体どこまで記録を伸ばしただろう」との思いを持っているからだ。

確かに、デビュー初年度の2001年にいきなり首位打者&盗塁王となり、新人王のみならずMVPまでもさらってしまったイチローが、アメリカでプロ入りしていたら、その間も少なくともNPB時代に積み上げた安打数くらいは記録したであろうと考えるのは少しも荒唐無稽ではない。したがって、アメリカ人はイチローに関しては、彼の偉大さを推し量る物差しとして日米通算の数字を時には持ち出すのだ。言いかえれば、他の選手で「日米通算○○」に言及するは、彼らにとっては全くナンセンスだが。

なお、米通算496盗塁のイチローはNPBでも199盗塁を記録しており、日米通算では現在695盗塁。米通算501盗塁目が日米通算700盗塁となり、こちらでも立て続けのマイルストーンが目前だ。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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