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レベルの低下が著しい今の日本代表の問題と、確実に歩み寄る危機的状況

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:ロイター/アフロ)

日本のレベルを疑いたくなるカンボジア戦の試合内容

「W杯予選過去最高記録の6試合連続無失点!」、「本田のW杯予選5試合連続得点も日本最高記録!」

メディアが無理して並べる明るい見出しが、より空しさを倍増させる。精一杯盛り上げようという報道姿勢が、返って試合を見た人をしらけさせてしまうのではないだろうか。

2018年ワールドカップ・アジア2次予選。シンガポール、カンボジアと対戦したアウェイの2連戦で、日本代表は確かに2勝した。そして、グループ首位のポジションをキープした。

しかしながら、その2試合で見えたものに明るい材料はほとんどなかった。いや、敢えて皆無だったと言うべきだろう。

とりわけ、カンボジア戦は目を覆いたくなるようなシーンの連続。試合終了のホイッスルが鳴り響いた後、ハリルホジッチ監督もさすがにしばらくベンチを立ち上がることができなかったようだが、その時の指揮官の気持ちは想像に難くない。

「勘弁してほしい。これが、本当に日本の選手のレベルなのか?」

試合を重ねるごとにレベルが低下している日本代表

おそらく、長年に渡って日本サッカーを見続けてきた人も、同じような気持ちになったと思う。進歩していると言われ続けていた日本サッカーだったが、実はそれは大きな勘違いだった、と。ここまで6試合を消化したワールドカップ予選を見るにつけ、日本は試合を重ねるごとに、化けの皮がはがれてきたと感じる人も多いと思うのだ。

たとえば、当初は「引いた相手をどう崩すか」といったお決まりの課題がクローズアップされていたが、6試合目となったカンボジア戦ではチーム戦術どころか、「蹴る、止める」といった個人としてのプレー、あるいは2対1のディフェンスなど、サッカーの基本とも言うべき部分が相当におろそかになっていた。おろそかなのか、はたまた出来ないのかは分からないが、少なくとも明らかに格下のカンボジアと同レベルのサッカーをしてしまったことに違いはない。

ホームで行われたカンボジア戦と比較してもよく分かる。あの時は、守るだけのカンボジアに対して、ほぼベストメンバーの日本代表が必死に攻めたものの、乏しい内容で3ゴール奪うのが精いっぱい、というものだった。

ところが今回プノンペンのナショナル・スタジアムで見た試合では、前半立ち上がりから相手との格の違いを見せることができなかったばかりか、日本代表が攻守に渡って基本的なミスを連発。歯車のかみ合わない単発的な攻撃、雑なフィニッシュ、不正確なパス、コントロールミス、適当なポジショニング……。

言い出せばきりがないほど、日本のサッカーのレベルは著しく低く、そうこうしている間に防戦一方であるはずのカンボジアが、逆に日本の凡ミスを突いてカウンターでチャンスをつかみ始めるといった始末である。

0-0で前半が終了した時には、カンボジアは手応えをつかんでいたように見えた。それは選手に限った話ではない。スタンドを埋めた観衆さえも、時間が経つにつれて異様な盛り上がりを見せていた。ホームとアウェイの違いもあるとはいえ、9月の対戦ではなかった現象だ。

それは、後半立ち上がりに日本がオウンゴールで先制した後も変わらなかった。

1点のビハインドを背負っていても、充実感いっぱいでプレーしていたのはカンボジアの方で、日本には1点リードの余裕など微塵も感じられなかった。

だからなのか、0-1で迎えた後半34分、こともあろうか中国人レフェリーはリードされているカンボジアの選手(12番)に遅延行為によるイエローカードを提示した。教科書通りの判定と言えばそうかもしれないが、その時スタジアムでそのカードに違和感を覚えた人は少なかった。要するに、まるでカンボジアが勝っているかのような錯覚を覚えさせるほど、その時のカンボジアの選手とスタンドの観衆はノリノリだったのだ。

ワールドカップ出場を逃す時は確実に迫っている

「選手をトライし、補完関係のない選手を使ったのは私の責任。それにより前半は少し混乱が起きた」

試合後の会見で指揮官はそう語ったが、個人的にはそこを問題にする必要はないと思っている。以前のコラムでも書いたように、この2次予選では積極的に多くの選手を使い、最終予選で起用できる戦力を発掘してチーム力を底上げしなければいけないからだ。これまでのハリルホジッチはそれをやっていなかったので問題視していたが、今回のアウェイ2連戦では、先を見据えての常識的な選手起用をしたと思う。

もっとも、カンボジア戦ではその新戦力になるべき選手のパフォーマンスがあまりにも酷過ぎた。指揮官が今後どのような評価を下すのか注目されるところだが、それよりも問題なのは、今の日本には下からの突き上げが自然と発生するような選手層の厚さが望めない状況にあることだ。

ご存知の通り、近年の日本のアンダー世代の代表チームは、ことごとく世界大会の出場権を逃す状況が続いている。来年1月に行われるU22代表のリオ五輪予選も危険信号が灯っている状況であることを考えれば、その影響が次第にA代表に歩み寄っていると見るのが妥当だ。

岡田ジャパン世代から継続して代表でプレーする選手が年齢を重ねて下降線を辿り始め、しかも下からの突き上げもなければ、当たり前の話だが、いずれワールドカップ予選を突破できない時は確実にやってくる。

それがロシア大会なのか、カタール大会なのか……。

少なくとも、現在の日本代表が2018年ワールドカップの出場権を逃したとしても驚きはない。最終予選は五分五分の戦いの連続。苦戦必至。敗退の可能性も十分にあり。その時は、確実に迫ってきている。

もはや不安などといった生易しい言葉は、今の状況を語るには相応しくない。今回のシンガポール戦とカンボジア戦を目の当たりにして、そのことを確信した。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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