「前田別格」で近畿大会連覇の大阪桐蔭! 神宮大会連覇へのカギは?
大阪桐蔭がエース・前田悠伍(2年・主将=タイトル写真)の活躍で近畿大会連覇を果たした。報徳学園(兵庫)との決勝は白熱の投手戦となり、報徳は3投手のリレーで1失点に凌いだが、前田が報徳打線を3安打に完封(1-0)し、貫禄を見せた。前田は神戸国際大付(兵庫)、彦根総合(滋賀)にも完投勝ちしていて、レベルの高い近畿でも「別格」の存在。一方で、前田に次ぐ投手や、大会を通して要所で打てず守れずが散見された野手陣の整備が急がれる。大阪桐蔭には神宮大会連覇も懸かっているからだ。
西谷監督が認める前田の能力の高さ
昨秋、大阪大会の苦しい場面で鮮烈デビューを果たした前田は、近畿大会でも上級生を上回るパフォーマンスを見せた。初めて前田の投球を目の当たりにして、西谷浩一監督(53)に当面の課題を尋ねてみたが、「球威、制球、変化球、間合い、駆け引き、牽制、フィールディングなど、教えることは何もない。特に真っすぐの回転数がいい。先発、救援を問わないし、立ち上がりも悪くない。あとは連投になった時のスタミナかな」と大絶賛した。「比較してください」と、近年の同校OB左腕の名をいくつも挙げたが「そんなん全然。はるかに上」と、20年を超える指導歴でもトップ左腕であることを認めた。
新チームでは前田を主将に指名
昨秋は近畿大会時がピークだったようで、神宮大会では打たれる場面もあり、西谷監督の指摘通り、試合間隔が詰まると投球内容が落ちた。今春センバツでは大事に使われ、先輩に花を持たせる西谷監督の采配もあったが、肝心な場面では別次元の投球を披露し、優勝に大貢献した。投手陣の柱として春夏連覇に挑んだが、準々決勝で救援に失敗して下関国際(山口)にまさかの逆転負けを喫し、涙にくれたのは記憶に新しい。そして新チームがスタートすると、西谷監督は前田を主将に指名した。
前田を主将にした狙いは?
「誰よりも経験しているし『お前が引っ張っていけ』と。あとは、主将をやることで視野が広くなり、今後の彼の野球人生のプラスになると思った」と指名の理由を話した西谷監督。投手主将は負担が大きい。試合前のトス(じゃんけん)を始め、グラウンドの内外で気の休まる暇はない。特に集中力が必要な投手には荷が重い。敢えて前田にその重責を背負わせることで、西谷監督は野手陣に自覚を持たせたいと言う。捕手の南川(みながわ)幸輝や1回戦で満塁弾を放った村本勇海(いずれも2年)の名を挙げ、「本来なら主将にならないと」と奮起を促す。決勝はまさに野手陣が前田におんぶにだっこの試合だった。前田を援護するどころか、内野ゴロで1点しか奪えず、最後も失策であわや同点という場面まであった。優勝の喜びもそこそこに、「帰って練習します」という西谷監督の厳しい声をどう聞いたか。
前田以外の投手も140キロ超ばかり
2日前の準決勝では前田を温存し、5人の投手で龍谷大平安(京都)を5-3と振り切った。起用法やイニング数などを見る限り、まだ適性を見極めている段階で、序列もはっきりしない。ただ、驚くべきは5人全員が140キロを超える速球を投げたということだ。だからと言って、前田との差が縮まったということにはならない。今の高校野球では、140キロを超える球を投げても、それだけでトップクラスは抑えられない。確かな制球力や、勝負所で使える変化球がないと、長いイニングを投げることは不可能だ。投手陣も、神宮大会までに西谷監督の信頼を得るための競争をしていることだろう。
神宮大会は4つ勝たないと優勝できない
神宮大会(18日開幕)は、開幕戦で東邦(東海・愛知)と当たる。昨年は2回戦からの登場で、3勝して優勝したが、今回は1回戦から4つ勝たないと優勝できない。優勝するためには6日間で4試合という強行軍を勝ち抜かねばならず、さらに2回戦(準々決勝)と準決勝は連戦となる。したがって、2試合は前田以外の投手が先発することになるだろう。東邦は投打ともかなり力があり、前田には完投が求められる。夏の覇者・仙台育英(東北・宮城)とは準決勝で当たる組み合わせで、対戦することになれば前田に頼らざるを得ない。日程も対戦相手も昨秋より厳しく、かなりハードルは高い。
控え投手と野手陣の奮起次第
それだけに、野手陣の援護が不可欠になる。昨秋は、近畿大会からオーダーを少し変えて打線がよくつながった。今チームはまだ打順が固まっておらず、守備力を含めて野手陣も適性を探っている最中だ。神宮開幕までの二週間でどこまで調整できるか。前田という絶対的な切り札がいる一方で、控え投手と野手陣は昨年よりも不安が大きく、一段のレベルアップが求められる。初戦をいい形で乗り切って、神宮連覇、そしてセンバツ連覇へ、確実に道をつなげたい。