「2000万ドル適用1年延長」でも大谷翔平を巡るポスティング交渉はMLBの圧勝だった
結局、日米のポスティング交渉はMLBの圧勝で終わった。ある程度予想していたことだが、大谷翔平という今回の交渉のキーを握っているのはNPB側であっただけに、この結果は残念だ。
すでに日米の複数メディアが報じているが、失効していたポスティングシステムの1年間の延長が基本合意に達したらしい。早ければ、来月初にもポスティング手続きが開始されるという。
もともと今回の交渉に関しては、MLB側がNPB球団に支払われるポスティングフィーといういわば「ムダ金」の削減にさらなるメスを入れようとして始まったものだ(従来は青天井だったが、MLBは2013年オフに田中将大の移籍を巡って2000万ドルに上限を設定することに成功していた)。
それが、大谷の移籍が成立すれば、今回も日本ハムは田中の時同様に2000万ドルを確保できることになったのだ。「NPBは良くやったじゃないか」と思われる筋もおられるかもしれない。
しかし、それは違うと思う。このオフは2000万ドルの上限維持が確約されたとはいえ、しっかりと来オフからのMLB球団と対象NPB選手の契約総額に応じたポスティングフィーの変動制の導入が決まってしまったからだ。
例えば、田中将大級の大物選手(次はだれだ?)が来オフ以降ポスティングに掛けられたとしよう。その結果田中とヤンキースの契約同額の1億5500万ドルまで条件が跳ね上がったとすると、その際にNPB球団が受け取れる金額はその15%(契約金額に応じてレートは変動する)の2325万ドルとなる。「ならば今より前進」と考えることができるかもしれない。しかし、FA市場で総額1億ドル以上の契約を手にできる投手はMLBの中でも相当なエリートだ。現在のシステムなら、田中ほどの大物でなくても(例えば、菊池雄星あたりをイメージして欲しい)交渉のテーブルに付くためには、MLB球団は「取りあえず満額」の2000万ドルを提示しなければならないし、逆に言えばNPB球団はその恩恵に浴することができるのだ。
その点では、契約総額に連動したポスティングフィーは明らかにMLB側にメリットがある制度だと言えるだろう。そのためなら、どのMLB球団にとっても今回大谷に2000万ドルを投じることなどタダみたいなものだ。
交渉とは本来その対象物(今回で言えば大谷)を物理的に掌握している方が有利なはずだ。その点ではもっとNPBは強気でも良かったと思うし、そのためには、今回決裂し大谷の移籍が流れることも辞さず、くらいの覚悟で臨んでほしかった。2000万ドル適用の1年延長くらい、来年オフ以降のコミット一切なしで獲得して欲しかった。あと2年たてば、大谷を獲得するには総額2~3億ドル必要になるかも知れないのだ。MLBとしては、是が非でも今オフ彼をポスティングに掛けて欲しいのだ。