ナイキの厚底シューズ「アルファフライ」がアップデート。マラソン世界記録保持者キプチョゲも太鼓判
世界選手権オレゴン大会の開幕を1カ月後に控え、各メーカーから新作シューズが続々と発表されている。
度々改定されてきた世界陸連(WA)のシューズ規定では、開発段階のプロトタイプでもWAの事前承認の上、使用可能となっている。しかし、オリンピックや世界選手権となると、一般発売しているシューズ、または、安全や医療上の理由によりカスタマイズされたシューズだけが使用可能となる。つまり、このタイミングで続々と新発売となっている理由は、ここにあった。
2017年以降、厚底シューズで世界のマラソンシーンを一変させたのはナイキだった。そのナイキからは「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%2」が新たに発売となる。
2020年に発売された前作の「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%」は、男子マラソン世界記録保持者のエリウド・キプチョゲ(ケニア)が、非公式ながら人類史上初めて42.195kmで2時間の壁を破ったシューズだ(2019年10月にオーストリア・ウィーンでプロトタイプを履いて1時間59分40秒で走った)。厚底に加えて、前足部にある2つのズームエアポッドが印象的だが、このシューズがアップデートされた。
主なアップデートした点は3つ
アスリートのパフォーマンスアップのために、細かく見ていくと様々な点で改良がなされているが、大きな改良点としては3つあるという。
1つ目は、アッパーに新たなフライニット素材のアトムニットを用いた点。アトムニットは、より軽量で、通気性にも優れている。また、編み方に工夫を凝らし、甲の部分を柔らかくすることで甲へのストレスを和らげている。これにより、快適性がアップした。さらに、しっかりと足を包み込み安定性もあるので、レース時にも安心感がある。
2つ目は、ミッドソールの部分。踵の部分を少し幅広くして、安定性を高めた。その分、軽量かつ抜群の反発力を誇る衝撃吸収素材のズームXフォームを前作よりも多く使用している。さらに、前足部のエアポッドの下にもズームXフォームを挟み込むことで、体重移動がよりスムーズにできるようになった。これにより、前作では接地時の音が気になるという声も聞かれたが、この点も改良された。
そして、3つ目は、オフセット(爪先と踵の厚みの差)が4mmから8mmになった点だ。これによっても、スムーズな足運びが可能となり、トップアスリートのみならず、一般ランナーにとっても履きやすくなった。
「エリートアスリートだけではなく、全てのアスリートが自己記録を目指す時に履いてもらえるシューズになった」と、ナイキのプロダクトマネージャーを務めるエリオット・ヒース氏が言うように、前作よりも汎用性のある1足になった。実際に、今回のアップデートにあたっては、キプチョゲのようなトップアスリートのみならず、マラソン3時間台、4時間台の一般ランナーにもテストをしてもらったという。
キプチョゲ「これからはマラソンでアルファフライを履く」
実は、昨年の東京オリンピックで金メダルに輝いたキプチョゲが履いていたのは、アルファフライではなく、ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%だった。
キプチョゲはコース条件に合わせて、戦略的にシューズを使い分けており、コーナーの多い札幌の周回コースには、スムーズな履き心地に定評があったヴェイパーフライを選択していた。
一方で、今年3月の東京マラソンで履いていたのは、「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%2」のプロトタイプだ。ほぼ最終形態にあったこのシューズをテストし、「これなら100%大丈夫」と太鼓判を押したという。
「彼は“これからはマラソンでアルファフライを履く”と言ってくれています。『2』にアップデートし、“速く走る”ことに加えて、あらゆるレースに対応できるシューズになり、戦術や路面にかかわらず選んでもらえると思っています」
アスリートの声に耳を傾けて、さらに進化したアルファフライ。ナイキ創設の地・オレゴンで開催される世界選手権はもとより、秋冬のマラソンシーンでも、多くのアスリートの足元を飾りそうだ。