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本を食べる小さな銀色の虫、シミ(紙魚) 家の中に住みつかないための対策を解説

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
写真はイメージ(写真:アフロ)

「シミ」という名前の虫を知っていますか? 見た目はテカテカと銀色っぽく光っていて、お尻に3本の毛のようなものが生えています。紙を食べる虫なので、本の隙間から出てきて、素早くくねくねと動く様子は奇妙で気持ちが悪く、見たことのある方はビックリされたかもしれません。今回は、「シミ」についてお話しします。

シミは「紙魚」と書きます

シミは、漢字では「紙魚」です。紙の上を魚が泳ぐようにすいすいと動き回ることや、全身が魚の鱗のような鱗粉というもので覆われているところが魚に見えることから紙魚という名前になったようです。英語では「Silver Fish(シルバーフィッシュ)」と言い、こちらにも魚(Fish)が付いています。

大きさは成虫で8~11mm程度、色は種類によって多少異なりますが、光沢がある銀色や暗い銀色に見えるものが多いようです。

※リンク先にシミの画像が掲載されています。苦手な方はご注意ください。

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最も原始的な虫のひとつ

シミの起源は3億年以上前といわれていて、2億年前が起源のゴキブリより以前から存在しています。3億年前のシミと現在のシミの形はほぼ変わっていません。蛹(さなぎ)にもならず、翅(はね)も生えない無変態の昆虫で、成虫と幼虫はほぼ同じ形をしています。通常、昆虫は成虫になったら脱皮はしないのですが、シミは成虫になっても脱皮を続ける少々変わった昆虫です。シミの多くは野外に生息しているのですが、一部の種類は家屋内に住みついています。

なお、昆虫の中では寿命が長く、7~8年ほど生きます。

何を食べているの?

家の中では、書籍や掛け軸、壁紙などを食べています。また、わずかな隙間から食品庫やクローゼットに侵入して、小麦粉などの粉類や乾物、衣類などを食べることもあります。シミは、文化財の厄介な害虫として知られていて、紙の表面をなめとるように食べることから、古文書の文字が失われることもあり復元が難しくなってしまいます。

また、シミは絶食に強く、何も食べなくても1年程度は生息ができると言われています。

写真はイメージ
写真はイメージ写真:イメージマート

夜行性で湿度を好む

シミの身体は平べったいので、本当にわずかな隙間からでも家の中に簡単に入ってきて住みついていることがあります。夜行性なので昼間は室内の暗い場所やさまざまな隙間、書庫や納戸等に潜んでいるのであまり見かけることはありません。夜になると這い出してきて、書籍などを食べています。湿ったところが好きなので、夏の時期に活動的になることが多いのですが、最近の住宅は高気密で加湿されていることが多いため秋や冬でも活動していることがあります。

湿度が高いところを好んでキッチンやお風呂場に来ることもありますが、泳げないので、1滴の水滴が命取りとなり溺れてしまいます。また、紙類を食べるときは口からですが、水は口から飲むことができず、お尻から空気中の水分を吸収しています。

シミに出会わないようにするには

・こまめな換気

シミは、湿度の高い場所が大好きです。そのような場所をなくすことで見かけなくなります。換気の際は、押入れやクローゼット、書棚の扉を開けておくとよいでしょう。毎日1回は、家の中に風を通すことが、予防対策になります。

・虫干しをする

「虫干し」とは、書籍や衣類、調度などを箱から取り出し、これに風を通してカビや虫の害を防ぎ、かつその害のあるときはこれを補修することです。(※)

虫干し(ムシボシ)とは? 意味や使い方 - コトバンク (kotobank.jp)

書籍や掛け軸などは直射日光に当たると変色することがあるので、日が当たらないで時間をかけて行うのがいいでしょう。掛け軸は取り出して飾ることでも湿気を飛ばすことができます。書籍は開いて、数時間放っておくだけでも効果があります。また、押入れやクローゼットに収納している紙類も虫干ししましょう。

大切にしている書籍や掛け軸などは、シミの被害に遭わないよう桐の箱などに入れて保管することもお勧めします。

・不要な紙類は処分する

シミは、食べることもでき、隠れ家にもなる紙類が大好きです。湿気の溜まりやすい押入れやクローゼットに置いている紙類のうち、不要なものを処分しましょう。どうしても取っておきたいものは上記のように定期的に虫干しをして、収納することをお勧めします。ダンボールも棲み処になる危険性があるので処分しましょう。

・こまめな掃除

シミは、紙類だけではなく、小麦粉などの粉類や乾物などの食料品も食べるので、食品を収納している戸棚や引き出しの中に細かな食品のカスなどがないように掃除しましょう。これは、シミだけではなく他の虫が出ないようにするためにも役立ちます。

シミを見つけたときは?

不快害虫用のスプレー剤を直接スプレーしてください。ただ、あまり近くからスプレーすると小さな虫なので吹き飛んでしまう可能性があります。少し離れた場所から行うとよいでしょう。

写真はイメージ
写真はイメージ写真:アフロ

最後に…

シミは、重要な文化財や、大事な書籍、掛け軸にダメージを与えてしまう害虫ですが、人を襲うことはなく、噛むなどの被害も与えません。この記事でシミの生態や習性を知ることで、もし遭遇しても落ち着いて対処できることを願っています。

また、シミと間違われやすい虫に「チャタテムシ」がいます。1mm程度の黄色っぽい茶色い虫です。こちら(※)をご覧ください。この虫も書籍から出てくることが多い虫です。

※古い本やダンボールなどにいる、ダニと間違う茶色い虫 実は健康被害が出ることも 対策法は?

【この記事は、Yahoo!ニュース エキスパート オーサーが企画・執筆し、編集部のサポートを受けて公開されたものです。文責はオーサーにあります】

アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

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