ブラジルで旱魃発生、コーヒー価格が急騰している
今、コモディティ市場ではブラジルの気象環境に対する関心が高まっている。一般メディアでは殆ど報じられていないが、ブラジルではホット・アンド・ドライ(Hot and Dry)と言われる高温・乾燥型の厳しい気象環境になっていることで、農作物の生産障害が警戒されているためだ。
特に、注目が高まっているのがコーヒー相場である。ICEアラビカコーヒー先物相場は、昨年11月7日の1ポンド=100.95セントをボトムに、2月5日の取引では一時143.70セントまで、約3ヶ月で42.3%もの急騰相場になっている。特に1月下旬からは上昇ペースが加速しており、新興国市場発でリスク回避の動きが強まる中、ファンド筋がコーヒー市場で積極的にリスクを取っていることが窺える状況にある。
コーヒーの国際需給を見てみると、2012/13年度、13/14年度と2年連続の供給超過状態にあり、世界的には潤沢な在庫が存在している。その原動力になったのが最大生産国であるブラジルであり、同国のコーヒー生産高は11/12年度の4,920万袋(1袋=60kg)に対して、12/13年度5,610万袋、13/14年度5,370万袋と、記録的な豊作環境を実現している。特に、隔年の生産サイクルから減産圧力が強まり易い13/14年度の生産高はサプライズと評価されており、昨年のコーヒー相場低迷を決定付けた。
しかし、昨年後半以降はブラジルのコーヒー生産地で土壌水分不足が指摘されており、生産障害が発生した可能性が強く警戒されている。現地気象予報会社によると、主要生産地の1月降水量は過去5年平均を50~75%下回っており、開花から結実期という重要な生育シーズンに十分な水分を確保できず、イールド(単収)が大きく落ち込むのは必至との見方が強くなっている。
例えば、政府系のブラジル食糧供給公社(Conab)は、今年度の同国コーヒー生産高が4,834万袋に留まるとの見通しを示している。昨年末の開花時期の水分不足の影響を指摘しているが、その後も一向に水分環境の改善が見られない中、更なる減産に対する警戒感が一段と強くなっていることが、ここにきて一段とコーヒー相場を押し上げる原動力になっている。
世界的に潤沢な在庫が存在すること、中米やアジア地区の増産期待が強いことなどから、こうしたブラジルの減産によって14/15年度需給が逼迫化するリスクはそれ程高い訳ではない。ブラジルの減産を考慮に入れても、3年連続の供給「超過」となる可能性も決して低くはない。ただ、今後のブラジルにおけるコーヒー生産動向次第では、3年ぶりの供給不足というシナリオも存在するだけに、コーヒー市場では危機感が反映されたのが、足元のコーヒー価格を高騰させている。