【寝屋川市】健診や医療機関で腎臓の検査を受けていない高齢男性は透析のリスクが高いことが明らかに !
健康診断や医療機関で腎臓の検査を受けていない高齢の男性は透析のリスクが高いことが大阪大学と寝屋川市の共同研究で明らかになりました。
今回、大阪大学キャンパスライフ健康支援センターの芦村龍一特任助教と山本陵平准教授らの研究グループの研究で、過去1年間に健診でも医療機関でも腎臓の検査(尿定性検査または血清クレアチニン検査)を受けていない高齢男性は、透析のリスクが高いことが明らかになり、毎年健診を受診することがいかに大切かということがわかりました。
透析治療が必要な末期腎不全を予防する上で、腎臓病の早期発見が重要です。健診は、生活習慣病に加えて腎臓病の早期発見の役割を担っていますが、特定健診と後期高齢者健診の受診率はそれぞれ 50%、30%と低いことが知られています。
これまで、健診を受けていない人は死亡のリスクが高いことが知られていましたが、透析治療を必要とする末期腎不全への影響は報告されていませんでした。
この研究は、寝屋川市の国民健康保険と後期高齢者医療制度の加入者 69,147人を5年間追跡した結果、過去1年間に健診を受けた人と比較して、健診でも医療機関でも腎臓の検査を受けていない人は、透析に至るリスクが高く(男性 1.66 倍、女性 1.51 倍)、特に75歳以上 の高齢男性では、健診でも医療機関でも腎臓の検査を受けていない人の透析のリスクは2.72倍に上昇していることが明らかになりました。
【大阪大学キャンパスライフ健康支援センターの芦村龍一特任助教の話】
日本は世界有数の透析大国です。近年、高齢者の透析導入患者が増加し、75 歳以上の高齢者が導入患者 の約 40%を占めています。我々の研究により、健診や医療機関で腎臓の検査を受けていない高齢男性は 透析のリスクが高いことが明らかになりました。透析導入患者を減らすためには、高齢者の健診受診を促し腎臓病の早期発見と介入を行い、透析治療が必要な末期腎不全への進行を予防することが重要だと考えます。
【研究の内容】
本研究グループでは、寝屋川市の国民健康保険と後期高齢者医療制度の加入者 69,147 人を、2012年度の健診受診の有無と医療機関での腎臓の検査(尿定性検査と血清クレアチニン検査)の有無に基づいて、1健診あり、2健診なし・腎臓の検査なし、3健診なし・腎臓の検査ありの 3 群に分類し、透析のリスク を評価しました。傾向スコアマッチング法を用いて1健診ありと2健診なし・腎臓の検査なしの 2 群の対 象者の特徴(年齢など)を揃えて解析を行った結果、男性では、1健診あり(5,332 人)のうち 11 人 (0.2%)が透析を発症し、2健診なし・腎臓の検査なし(5,332 人)のうち 24 人(0.5%)が透析を発症し ました(図)。女性では、1健診あり(7,573 人)のうち 6 人(0.1%)が透析を発症し、2健診なし・腎臓の 検査なし(7,573 人)のうち 9 人(0.1%)が透析を発症しました。
多変量解析の結果、男性では、1健診あり(9,474 人)と比較して、2健診なし・腎臓の検査なし (9,833 人)の透析のリスクは 1.66 倍に上昇していました。特に、75 歳以上の高齢男性では、1健診あ り(2,951 人)と比較して、2健診なし・腎臓の検査なし(1,412 人)の透析のリスクは 2.72 倍に著しく上 昇していました。女性では、1健診あり(14,145 人)と比較して、2健診なし・腎臓の検査なし(10,311人)の透析のリスクは 1.51 倍に上昇していました。男性と異なり、75 歳以上の高齢女性では、1健診あ り(4,265人)と比較して、2健診なし・腎臓の検査なし(2,809 人)の透析のリスクは 0.84 倍でリスク の上昇は認めませんでした。
本研究は、過去 1 年間に健診でも医療機関でも腎臓の検査を受けていなかった75歳以上の高齢男性は、透析のリスクが高いことを報告しました。女性については、透析の発症数が少なかったため(2017年度末までの透析発症者数:男性 246 人、女性 124 人)、より大規模な研究で評価をする必要があります。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義) 本研究成果により、健診でも医療機関でも腎臓の検査を受けていない高齢男性は、透析のリスクが高く、末期腎不全の予防のために、健診の受診勧奨の重点対象候補となることが期待されます。
この研究成果は、2021年10月26日(火)18時(日本時間)に国際科学誌「Scientific Reports」(オンライン)に掲載。
タイトル:“Associations of kidney tests at medical facilities and health checkups with
incidence of end-stage kidney disease: a retrospective cohort study”
著者名:Ryuichi Yoshimura, Ryohei Yamamoto, Maki Shinzawa, Rie Kataoka, Mina Ahn,
Nami Ikeguchi, Natsuki Wakida, Hiroshi Toki, and Toshiki Moriyama DOI: https://doi.org/10.1038/s41598-021-99971-w