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全米オープン:大坂なおみ、いきなり叩きだした200キロ越えサーブ! その背景には「セリーナ」が…?

内田暁フリーランスライター
(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

全米OP1回戦 ○大坂なおみ 67(4) 63 64 C・バンダウェイ(28)

「サービス合戦のような試合を予測していた」

大坂なおみが、試合前に抱いたその予感は確かに現実のものとなり、そして実際に勝敗の分岐点となったのも、象徴的な2本のサービスエースでした。

第1セットをタイブレークの末に失うも、第2セットを2度のブレークの末に大坂が奪い返して雪崩れ込んだ、ファイナルセット――。ゲームカウント3-3からのサービスゲームで、大坂はミスを重ねて0-40の危機に陥ります。そのピンチをまずはサービスウイナーで1本逃れると、ここから圧巻の見せ場が訪れました。

乾いた破裂音を轟かせ、時速125マイル(約201キロ)の超高速サービスをセンターに叩き込んでエース。さらに相手に息つく間も与えず、すぐさま120マイル(約192キロ)をセンターに叩き込んで2連続エース。

この後も相手のミス、そして相手のボディへと打ち込むキックサービスによる5連続ポイントで、3連続ブレークポイントの窮地を切り抜けてみせたのです。

この最大のチャンスを逃した第28シードのバンダウェイは、徐々にプレッシャーを感じ始めたようでした。

「ファイナルセットの私は、あまりに消極的だった。あれでは勝てない」

憮然と振り返る敗者の姿が、試合終盤のターニングポイントを示しているでしょう。結果的に最終ゲームとなった第10ゲーム、バンダウェイはスイングを上手く制御できなくなったかのように、フォアで立てつづけにミスを重ねます。

そうして迎えた最初のマッチポイント――バンダウェイが叩いた低い弾道のバックは、バスッと豪快な音を立ててネットに。この瞬間、灼熱の中で行われた2時間25分の熱闘に、終止符が打たれました。

試合後のバンダウェイは、チェアアンパイアとの握手を拒絶。それほどにこの日の彼女は、主審に対し苛立ちを募らせていました。

対する大坂は、相手の乱れに気が付きながらも「気にしない」ことを心がけていたと言います。マッチポイントがどう決まったかも「覚えていない」ほどに高まっていた集中力。例の第3セット第7ゲームの0-40をどう切り抜けたかも、会見で指摘されるまで思いだせなかった様子。そうして例の場面での胸中を、彼女は思い起こします。

「あの場面では、セリーナ(ウィリアムズ)を頭の中に思い描いていた。彼女はいつも、リードされている時こそエースを決めるから」

憧れの存在であるテニス界の女王の姿をイメージすることで、叩きだしたこの試合最速のサービス。ちなみに大会初日が終わった時点で、女子の最速サービスは大坂が記録した125マイル。2位はバンダウェイの120マイル。まさに試合は「サービス合戦」であり、その戦いを制した大坂が勝者となったのです。

これで参戦したグランドスラムでは、全て初戦を突破してきた大坂。大舞台に強い理由を問われると、「頭のどこかで、すごく大切な大会だと思っているからかな?」。

驚異の集中力と勝利への執念、そして試合のみならず、「会見やお客さんが応援してくれること」をも楽しむメンタリティで、より多くの勝利を奪いに行きます。

テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookより転載。連続テニスの最新情報を掲載

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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