中央銀行が発行するデジタル通貨とは何か
フェイスブックが導入を計画している暗号通貨(仮想通貨)「リブラ」に対し世界の規制当局が警戒感を示す中、欧州連合(EU)が欧州中央銀行(ECB)に対し、公的なデジタル通貨の発行を検討するよう提言することがロイターが入手した草案文書で明らかになった(ロイター)。
フェイスブックが計画するリブラはステーブルコインと呼ばれる法定通貨を裏付けとしたデジタル通貨だが、先月ワシントンで開いた財務相・中央銀行総裁会議では、ステーブルコインに対する厳格な規制を導入することで合意していた。
フランスとドイツは共同声明で、リブラは金融部門に対するリスクとなるとし、欧州での認可を阻止する可能性を示すと同時に、代替となる公的な仮想通貨の創設に支持を表明した(ロイター)。
そもそも公的なデジタル通貨とは何か。すでに我々の使っているお金の多くはデジタル化されており、現金保有の割合は極端に少ない状態にある。我々の保有しているお金はデジタル化されたものを現金化することができるが、デジタル通貨は現金化できない反面、海外送金などを容易にさせるあらたな決済システムということになるのであろうか。
日本銀行のサイトの「教えて!にちぎん」というコーナー内に「中央銀行発行デジタル通貨とは何ですか?」というページがある。このなかで、中央銀行発行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)とは、次の3つを満たすものであると言われているとしている。(1)デジタル化されていること、(2)円などの法定通貨建てであること、(3)中央銀行の債務として発行されること。
さらに、現金を代替するようなデジタル通貨を中央銀行が発行することについては、具体的な検討を行っている国もあるが、民間銀行の預金や資金仲介への影響など検討すべき点も多いことなどから、多くの主要中央銀行は慎重な姿勢を維持している。日本銀行も、現時点において、そうしたデジタル通貨を発行する計画はありませんとしている。
その一方で、中央銀行の当座預金という既にデジタル化されている中央銀行の債務を、新しい情報技術を使ってより便利にできないかという議論もあるとして、日本銀行では、欧州中央銀行と共同で分散型台帳技術と呼ばれる新しい情報技術に関する調査(プロジェクト・ステラ)を実施している。
このプロジェクト・ステラは、概念的な調査・実験を通して、分散型台帳技術(DLT)が金融市場インフラに対してもたらし得る潜在的な利点や課題を洗い出し、議論を促進することを目的としている。分散型台帳技術とはいわゆるブロックチェーンである。
日銀のサイトには「Project Stella:日本銀行・欧州中央銀行による分散型台帳技術に関する共同調査報告書」もアップされている。ここでクロスボーダー取引における支払の同期化についてアップされている。