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ウクライナ軍、ロシア軍のドローン攻撃に対抗"ドローンキラーズ:空の守護者"「移動式ドローン迎撃車」

佐藤仁学術研究員・著述家
「移動式ドローン迎撃車」(ウクライナ軍提供)

上空のドローンなら3キロメートル先まで迎撃

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。

2022年10月にはロシア軍はミサイルとイラン政府が提供した標的に向かって突っ込んで行き爆発する、いわゆる神風ドローンの「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」で首都キーウを攻撃して、国際人道法(武力紛争法)の軍事目標主義を無視して軍事施設ではない民間の建物に攻撃を行っている。一般市民の犠牲者も出ていた。11月に入ってからはイラン製軍事ドローンでの攻撃が激減したことから、英国国防省はイラン製軍事ドローンの在庫が枯渇したのではないかとの見解を示していた。だが12月に入ってからはロシア軍はイラン製軍事ドローンで電力施設にも攻撃を行いオデーサ近郊の150万人以上の市民生活に打撃を与えている。

2022年12月14日にはロシア軍は首都キーウにイラン製軍事ドローン「シャハド136」と「シャハド131」13機が攻撃をしかけようとしてきた。それら13機のイラン製軍事ドローンはウクライナ領土防衛隊の移動式迎撃部隊によって、全て破壊されたとウクライナ領土防衛隊の公式SNSで発表していた。

ウクライナ軍では自動車やトラックの後方部にライフル銃や地対空ミサイルを設置した自作の「移動式ドローン迎撃車」があり、上空からドローンを迎撃して破壊している。ドローン以外の標的への攻撃にも使用できる。

ウクライナのメディアUATVではロシア軍の軍事ドローンを迎撃して破壊する「移動式ドローン迎撃車」を紹介していた。4台の自動車がアメリカやウクライナ市民からの寄付で提供され、その自動車の上にマシンガンを設置しており、ウクライナ北部と北西部の国境でロシア軍のドローンを迎撃している。上空のドローンなら2キロメートルまで、地上の敵であれば3キロメートル先までマシンガンの射程距離である。「ドローンキラーズ(Drone Killers)」というタイトルの動画の中で「移動式ドローン迎撃車」は「空の守護者(Guardians of Sky)」プロジェクトと呼ばれていると紹介していた。

▼ウクライナのメディアUATVでの「移動式ドローン迎撃車」紹介

首都キーウの防空でも実績。パトリオットミサイルよりコスパ高い「ロシアの占領者の皆さん、また後ほど!」

ウクライナ軍ではロシア軍のドローン攻撃に対抗するために手作りのドローン迎撃銃をトラックやバンなどに搭載して「移動式ドローン迎撃車」を作って、ロシア軍の攻撃ドローンを迎撃して破壊している。いわゆる「DIY(Do It Yourself)」である。既存の銃を用いて上空のドローンを迎撃しやすいように設計している。さらにトラックやバンなどの後方部に搭載することが可能で、簡単に移動しながらロシア軍のドローンを迎撃できる。

2022年12月にはアメリカ政府がウクライナ軍に地対空ミサイルシステム「パトリオット」を提供すると報じられていた。パトリオットでも、攻撃ドローンの迎撃や破壊もできる。だが大型のミサイルなどの迎撃に比べるとパトリオットのような高額なシステムでの攻撃ドローンの破壊はコストパフォーマンスは良くない。自分たちで作った「移動式ドローン迎撃車」に搭載したライフル銃や重機関銃で攻撃ドローンを破壊した方がコストパフォーマンスは高い。

但し「移動式ドローン迎撃車」は人間の兵士がライフル銃や機関銃を持って自動車の後ろに乗っているので、兵士らが攻撃の標的になる危険性はある。

ウクライナ軍の公式SNSでも「移動式ドローン迎撃車」を紹介しており「ロシアの占領者の皆さん、また後ほど!」とコメントしていた。

▼ウクライナ軍公式SNSでも「移動式ドローン迎撃車」を紹介

▼ウクライナ軍が自ら作った移動式ドローン迎撃車

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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