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高額報酬・高収入が闇バイト そう思っているあなたは犯罪行為に手を染めることになるかもしれない

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(提供:イメージマート)

犯罪グループによる闇バイトによる詐欺被害は深刻です。SNSを通じて募集されて、今も多くの人が詐欺の手足になって動かされています。
「受け子をしたかもしれません」
主婦である30代の川田さん(仮名)は話します。

「闇バイトのことは知っていました。でも、私のしていることが闇バイトだとはまったく思わず、仕事をしてしまいました」

募集内容は日給1万5千円、週1からも応相談、副業、日払い

きっかけは、SNS上に載るアルバイト情報でした。

「子育てに専念するため、前の仕事を辞めていたので、子供を預けている間にできる仕事がないかと考えていました。SNSの検索ワードで『日払いバイト』で出てきたのが、今回の仕事の募集でした」

その時の募集の書き込みは残っていませんが、彼女の記憶では「日給1万5千円から。平日9時から18時の間で、週4日くらいできる方。週1からも応相談」とあり、副業、日払いのワードも載っていて、特に怪しいものではなかったそうです。

彼女がDMで「詳しく内容を教えてください」と連絡をすると「暗号資産における相対取引(あいたいとりひき)の仕事になる」との返信がありました。

「暗号資産に関しては知識がなかったので、メッセージアプリの電話で詳しく話を聞くことにしました」(川田さん)

一般に、相対(あいたい)取引とは、金融商品を扱う取引所を通さずに、売り手と買い手が当事者同士で価格や数量などを決めておく、取引方法です。

川田さんは、面接担当を名乗るA男から次のように説明されます。

「仕事は暗号資産の取引で、本来ならば互いに顔を合わせて、取引するのですが、(取引の)相手同士が遠方に住んでいると直接会うのが難しいので、その代わりを自分たちがしている」「この仕事は手数料で稼ぐ仕事で、相対取引は税金対策でしている人も多い」ともいいます。

闇バイトは知っていました。でも高額な報酬ではないので、普通の仕事かと

「最初にいつ仕事ができるかのシフトを出すようにいわれました。私は『子供のお迎えがあるので、週3日の短時間でしか入れない』といいました」

それで了解してもらい、川田さんはこの仕事をしてみることにします。

A男からは「個人情報を取り扱いますので、身分証の提示が必要です」といわれたので、彼女は運転免許証や現住所が分かる郵送物の写真を送ります。

ここまでの話を聞いて、川田さんは闇バイトとはまったく気づかなかったといいます。

「もちろん闇バイトのことは知っていましたし、SNS上でみかけたこともあります。日給が5万円から10万円ぐらいで募集されていて高いじゃないですか。そのワードも「運び」とか、そういうのが入っている。しかしこの仕事は、その金額に比べたら低く、日給1万円ほどでしたので、普通のアルバイトだと思いました」

詐欺グループは高額報酬で闇バイトに応募者を誘うことをせずに、ごく普通のバイト代を提示して募集をすることがあります。しかも闇バイトとあからさまにわかるような言葉は一切使わず「副業」「日払い」「バイト」という文言で募集します。

「高額報酬・高収入が闇バイト」との先入観を持っていると、川田さんのように、犯罪行為に巻き込まれてしまうことになります。

待機業務での報酬を名目で仕事をさせる詐欺グループ

川田さんはA男に5日分のシフトを出しました。

しかし「5日間、1回も仕事はなかった」と彼女はいいます。この時、川田さんはいつでも指示された仕事先にいけるように、都内の指定された所で待機するようにいわれています。

「これは待機業務となり、5日分のお給料を出すといわれていました」(川田さん)

筆者も昔、人材派遣の仕事で、病気などで欠員などが出た時のための待機業務を何度かしたことがありますが、指定された場所で待っているだけでお金がもらえました。実際に行われている仕事のように装い、応募者を犯罪に駆り立てていることがわかります。

初めての仕事は段ボールの受け取り

その後、初めて仕事があります。

「届いた荷物を取りに行く仕事があるといわれて、都内のB駅に向かいました。駅近くの場所で待っていると、中年の男性が小さな段ボールを持ってやってきました。その方の名前を確認して荷物を受け取りました。それは通販で送られてきたようなものでした」

その荷物は「軽かった」と川田さんは話していますので、段ボールのなかに現金を入れて、人から人へ受け渡してお金の足をつかなくさせる「運び」の可能性があります。

今度は、それを少し離れたC駅まで運んで届けるようにいわれました。この時、指示された男からは「本当なら人に渡す予定だけれども、その人の到着の時間が遅れているので、待っていてほしい」といわれます。

報酬はどうやって受け取ったのか?

しかし彼女は子供を迎えにいく時間が迫っており「これ以上は待てません」と強くいうと、男からは「では、〇〇という商業施設に荷物を置いておいてください」と指示します。

「そこは傘立てのある、人目につかないような場所で、そこに荷物を置きました」(川田さん)

報酬はどのようにして受け取ったのでしょうか?

「本当は銀行振り込みといわれていたのですが、途中で『営業の者が向かっているので手渡しで渡します』という話になり、さらに『すれ違いか起きたので、次の場所に取りにいってください』といわれました」

川田さんが指定された所にいくと、封筒が置いてありました。そのなかには、6万5千円が入っていたといいます。

「5日分の待機業務が1万円(合計5万円)といわれてましたので、そのお金も含まれて、当初の説明通りのお給料でしたし、おかしいとは思わなかった」と語ります。

詐欺グループはあらゆる手立てを使い、川田さんを罠にはめた

川田さんは説明通りにお金が払われることで、しっかりしたアルバイトだと思ったようですが、私はこの話を聞いて詐欺グループが彼女をうまく、詐欺に加担させる罠にはめたことを感じます。

まず彼女の予定はシフトを見て知っているはずです。わざと「前の人の時間が押している」といって、当初の目論見通りに非対面で荷物を置かせて、お金を渡したと思われます。

何より、あえて5日間、仕事がない状況を作り出しています。
結局、仕事を1回するだけで6万円を超えるお金を受け取っていますので、高額報酬です。しかし5日間の待機業務をはさむことで、まっとうなアルバイトに見せかけているわけです。

もしかすると、この話を聞いて6万円を超える現金を外に置いておく。なんとも不用心だと思われる方もいるかもしれません。しかしそうではありません。

彼女は気づかなかったかもしれませんが、詐欺グループの受け子には、多くの場合、見張り役をつけます。その人物は彼女のそばで絶えず見張っていたと思います。彼女が初めて仕事をするとなれば、なおさらです。その人物が現金を置いた可能性は高いと考えています。つまり、すべて仕組まれていたわけです。

どこで闇バイトかもしれないと気づけばよいのか?

では、どうしたところで、危険な闇バイトだと気づけばよいのでしょうか。
仕事をする前に、必ず相手(会社)の身元を確認することです。川田さんはメッセージアプリのやりとりだけで仕事をしていますが、これでは相手がどこの誰かわらないまま仕事をすることになり、とても危険です。

また、現金を人目のつかない場所に置くといった、通常では考えられないお金の受け渡しであれば詐欺を疑い、すぐに警察に相談するようにしてください。
なぜ、川田さんは詐欺に加担しているのではないかと気づいたのか。それは2回目の仕事で疑問を抱いたのです。このことは改めて書きたいと思いますが、いずれにしても、今は高額な報酬で犯罪行為に加担させるだけではありません。高額報酬、高収入が闇バイトという知識だけでは、見抜けないということを知っておいてください。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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