累積赤字は2900億円…ツイッターのお財布事情を確認しよう
売り上げは拡大、赤字も拡大
Facebookと並び日本では良く知られるソーシャルメディアながら、財務状態では厳しい状態が続いていると伝えられているツイッター(Twitter)。その実情をツイッター社が公開している決算書類などから確認していく。
まずは同社売上と営業利益率の年ベースでの動向。
「営業利益率」とは「売上高営業利益率」を意味する。これは売上と営業利益の関係を示しており、「総売上で営業損益を割る」ことで算出される。この値は「本業の稼ぎにおける効率の良さ・悪さ」を示しており、高いほど本業が効率よく稼げている。もちろんマイナスならば本業は赤字。
グラフの動向からも分かるように、売上高は累乗的に増加する一方、営業利益率はマイナス圏のまま。つまりツイッター社は本業の上では赤字を計上し続けている。累積赤字(Accumulated deficit)は2016年12月末時点で25億5035万0000ドル(約2899億円、1ドル113.69円で換算)にのぼっている。無論グラフの動きを見れば分かる通り、収益状況はともあれ売上は上昇し続けており、上場で得た資金を用いて各種投資をした上で、さらなる規模の拡大と収益改善を図る目論見のようだ。ただしその状況が経営陣が想定しているほど進展はしておらず、苦悩のさなかにある、さらにその経営陣自身をはじめとした中核メンバーが入れ替わる事態が生じていることは、すでに各報道やリリースで公知されている通り。
各種営業指標からお財布事情を確認
続いて「総売上」「売上原価」「営業費用」「営業損益」「純損益」の推移もグラフ化する。7年分しかないが、それなりに同社の動向が把握できる。
「総売上」と「売上原価」の差、つまり「粗利」はそれなりに大きなものになりつつあるが、「営業費用」がかさんでいることもあり、「営業損益」、そして「純損益」がマイナスに落ち込んでしまっているのが分かる(「営業損益」「純損益」にはあまり差異が無いため、グラフ上で多分に被ってしまっている)。「総売上」の上昇率は向上しているものの(直近ではやや穏やかになったが)、少なくとも「営業費用」を超えないと、本業部分での利益確保すらおぼつかない。
なお「営業費用」は「売上原価」に各種販管費を足したもの。つまり上記のグラフなら、青線が緑線を上回らない限り、本業の部分で黒字化は果たせない。少しずつ状況は改善しつつあるように見えるが、黒字転換にはまだ手が届かない。
ちなみにツイッター社では現時点で売上を「広告費」と「データライセンス代(など)」の2つから計上している。「ツイッターのアクセス動向をグラフ化してみる」でも触れている通り、利用者の増加、中でもモバイル経由の利用者の急増に伴い広告売上も増加し、2016年時点では総売り上げのほぼ9割が広告費で占められている。
今後はスマートフォンやタブレット型端末などのモバイル系を中心に、ツイッターのデータをマーケティングなどに活用する企業などが増えてくることから、データライセンス代の売上は堅調な伸びを示していく。そしてそれ以上に利用者、特にモバイル経由の利用者が増加し、既存利用者の利用密度が高まることから、広告売上も増していくのは間違いない。実際、直近の2016年Q4四半期決算書類では「該当四半期の広告収入の89%はモバイル端末経由の売上によるもの」と言及している。
ツイッターが広告依存型のビジネスモデルで成り立っていること、売上が上昇の一途をたどっていることに違いは無く、成長が続いているのが分かる。ただしここ数四半期は成長の鈍化が見受けられ、財務的な苦しさもより強いものとなっている。
報告書の中でツイッター社のCEO(最高経営責任者)のJack Dorsey氏は「2016年は変革の年であり、人はなぜツイッターをツイッターを使うのかという点に焦点を当てた。それはツイッターこそが世界で起きていることや、人々が何気なく話していることを知るのに、最速の方法であるというものだった」「さまざまな施策を凝らして利用者の減少傾向に歯止めを成し、利用性向を加速させた。結果として直近四半期も合わせ4四半期連続してDAU(Daily Active Users、1日の利用者数)が増加し、成長することができた」「利用者動向と比べて収益の伸びは遅滞しているが、自社の強みとリアルタイム性の特性に焦点を当てることで、利用者の増加が収益に直結するようなアプローチをしている。結果が出るまでには時間がかかるが、迅速な対応をしている」と述べている。
上場を果たしたものの、続々登場する新規競合サービスとの争いの中で苦戦を強いられているツイッター社。利用者の注力を維持しつつ、同社が今後いかに安定した収益モデルを確保し、どのような姿に変貌していくのか、あるいはスタイルを維持し進化していくか。その動向を見守りたいところだ。
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