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累積赤字は2900億円…ツイッターのお財布事情を確認しよう

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 最近は何かと話題に登るツイッター。そのお財布事情は

売り上げは拡大、赤字も拡大

Facebookと並び日本では良く知られるソーシャルメディアながら、財務状態では厳しい状態が続いていると伝えられているツイッター(Twitter)。その実情をツイッター社が公開している決算書類などから確認していく。

まずは同社売上と営業利益率の年ベースでの動向。

↑ ツイッター社の売上と営業利益率(2010年以降、年次)
↑ ツイッター社の売上と営業利益率(2010年以降、年次)

「営業利益率」とは「売上高営業利益率」を意味する。これは売上と営業利益の関係を示しており、「総売上で営業損益を割る」ことで算出される。この値は「本業の稼ぎにおける効率の良さ・悪さ」を示しており、高いほど本業が効率よく稼げている。もちろんマイナスならば本業は赤字。

グラフの動向からも分かるように、売上高は累乗的に増加する一方、営業利益率はマイナス圏のまま。つまりツイッター社は本業の上では赤字を計上し続けている。累積赤字(Accumulated deficit)は2016年12月末時点で25億5035万0000ドル(約2899億円、1ドル113.69円で換算)にのぼっている。無論グラフの動きを見れば分かる通り、収益状況はともあれ売上は上昇し続けており、上場で得た資金を用いて各種投資をした上で、さらなる規模の拡大と収益改善を図る目論見のようだ。ただしその状況が経営陣が想定しているほど進展はしておらず、苦悩のさなかにある、さらにその経営陣自身をはじめとした中核メンバーが入れ替わる事態が生じていることは、すでに各報道やリリースで公知されている通り。

各種営業指標からお財布事情を確認

続いて「総売上」「売上原価」「営業費用」「営業損益」「純損益」の推移もグラフ化する。7年分しかないが、それなりに同社の動向が把握できる。

↑ ツイッター社の「総売上」「売上原価」「営業費用」「営業損益」「純損益」(単位・億ドル)(年次)
↑ ツイッター社の「総売上」「売上原価」「営業費用」「営業損益」「純損益」(単位・億ドル)(年次)

「総売上」と「売上原価」の差、つまり「粗利」はそれなりに大きなものになりつつあるが、「営業費用」がかさんでいることもあり、「営業損益」、そして「純損益」がマイナスに落ち込んでしまっているのが分かる(「営業損益」「純損益」にはあまり差異が無いため、グラフ上で多分に被ってしまっている)。「総売上」の上昇率は向上しているものの(直近ではやや穏やかになったが)、少なくとも「営業費用」を超えないと、本業部分での利益確保すらおぼつかない。

なお「営業費用」は「売上原価」に各種販管費を足したもの。つまり上記のグラフなら、青線が緑線を上回らない限り、本業の部分で黒字化は果たせない。少しずつ状況は改善しつつあるように見えるが、黒字転換にはまだ手が届かない。

ちなみにツイッター社では現時点で売上を「広告費」と「データライセンス代(など)」の2つから計上している。「ツイッターのアクセス動向をグラフ化してみる」でも触れている通り、利用者の増加、中でもモバイル経由の利用者の急増に伴い広告売上も増加し、2016年時点では総売り上げのほぼ9割が広告費で占められている。

↑ ツイッター社の売上詳細(万ドル)(年次)
↑ ツイッター社の売上詳細(万ドル)(年次)
↑ ツイッター社の売上詳細(項目比率)(年次)
↑ ツイッター社の売上詳細(項目比率)(年次)

今後はスマートフォンやタブレット型端末などのモバイル系を中心に、ツイッターのデータをマーケティングなどに活用する企業などが増えてくることから、データライセンス代の売上は堅調な伸びを示していく。そしてそれ以上に利用者、特にモバイル経由の利用者が増加し、既存利用者の利用密度が高まることから、広告売上も増していくのは間違いない。実際、直近の2016年Q4四半期決算書類では「該当四半期の広告収入の89%はモバイル端末経由の売上によるもの」と言及している。

ツイッターが広告依存型のビジネスモデルで成り立っていること、売上が上昇の一途をたどっていることに違いは無く、成長が続いているのが分かる。ただしここ数四半期は成長の鈍化が見受けられ、財務的な苦しさもより強いものとなっている。

↑ ツイッターの月次アクティブユーザー(世界規模)(億人)(2014年3月以降はカウント方式変更)
↑ ツイッターの月次アクティブユーザー(世界規模)(億人)(2014年3月以降はカウント方式変更)

報告書の中でツイッター社のCEO(最高経営責任者)のJack Dorsey氏は「2016年は変革の年であり、人はなぜツイッターをツイッターを使うのかという点に焦点を当てた。それはツイッターこそが世界で起きていることや、人々が何気なく話していることを知るのに、最速の方法であるというものだった」「さまざまな施策を凝らして利用者の減少傾向に歯止めを成し、利用性向を加速させた。結果として直近四半期も合わせ4四半期連続してDAU(Daily Active Users、1日の利用者数)が増加し、成長することができた」「利用者動向と比べて収益の伸びは遅滞しているが、自社の強みとリアルタイム性の特性に焦点を当てることで、利用者の増加が収益に直結するようなアプローチをしている。結果が出るまでには時間がかかるが、迅速な対応をしている」と述べている。

↑ ツイッター社の売上詳細(万ドル)(2014年~、四半期単位)
↑ ツイッター社の売上詳細(万ドル)(2014年~、四半期単位)
↑ ツイッター社の売上詳細(項目比率)(2014年~、四半期単位)
↑ ツイッター社の売上詳細(項目比率)(2014年~、四半期単位)

上場を果たしたものの、続々登場する新規競合サービスとの争いの中で苦戦を強いられているツイッター社。利用者の注力を維持しつつ、同社が今後いかに安定した収益モデルを確保し、どのような姿に変貌していくのか、あるいはスタイルを維持し進化していくか。その動向を見守りたいところだ。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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