北朝鮮の「堕落した男女」両手を縛られ吊し上げショー
一度権力を握れば、フル活用してワイロを集めまくる。北朝鮮の幹部たちにとっては当たり前のことだ。もちろん、トラブルの「もみ消し」もお手の物である。しかし、常に上手くいくとは限らない。運悪く捕まる者もいる。平安南道(ピョンアンナムド)价川(ケチョン)市人民委員会(市役所)のキム労働局長もそのひとりだ。
北朝鮮において就職は原則として、個人の希望よりも国の要求に応じて、職場が割り当てられる。その役割を担っている部署が労働局だ。
現地のデイリーNK内部情報筋によると、キム局長は、個人の希望はもちろんのこと、国からの要求も無視して、就職希望者が上納するワイロの額に応じて職場を割り当てていた。
特定の企業所への配属を望む者には、「そこは誰もが志願ができるところではない。とてもいいところなのでドルが必要だ」などと言って、露骨にワイロを要求していた。また、既に就職した若者の大学進学に必要な推薦書も、ワイロと引き換えに発行していた。
(参考記事:北朝鮮の女子高生が「骨と皮だけ」にされた禁断の行為)
だが、さらに欲をかいたのが運の尽きだったのかもしれない。
「南朝鮮(韓国)映画やドラマ、料理番組、歌を集めてくれ」
「電子書籍も取り寄せてくれ」
それも自分が見たいからではなく、「妻が見たがっているから」と言い訳をしていた。
キム局長の妻と親しくしていた女性が、違法行為を告発したことから一連の事実が明るみに出た。この女性の告発が嫉妬からの行動なのか、あるいは当局のスパイだったのかなど、詳しい経緯は不明だ。
かくしてキム局長夫婦は先月25日、价川市文化会館で行われた公開闘争会議(吊し上げ)の場に、両手を拘束されて引き立てられてきた。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
参加者は入れ代わり立ち代わり、情勢が緊張しているときなのに南朝鮮の映画や小説をワイロとして要求したことそのものが思想的に腐って病んでいる証拠だなどと、お決まりのレトリックを使って厳しく批判した。
通常なら最後に懲役刑なり管理所(政治犯収容所)送りなり厳しい処罰が言い渡されるところだが、キム局長夫婦は人前で恥をかかされただけで済んだ。金正恩総書記の親衛隊として知られる朝鮮人民軍(北朝鮮軍)974部隊(護衛司令部)に勤務している家族が、強力なコネを使って処罰だけは回避させたのだという。
市民の評判は当然のことながら悪い。
「バックに誰もいない人があんなことをしたら、管理所送りになっていただろうに、権力とカネがあるから解任だけで済まされた」
「妻の尻に敷かれて違法行為をするなんて、間抜けな夫だ」