米国家安全保障担当副補佐官 中国から台湾へのサイバー攻撃と偶発的衝突を懸念:サイバーでも重要な同盟
「同盟国でのリスク管理と地域でのインフラの強靭化、情報共有が必要」
アメリカのアン・ニューバーガー国家安全保障担当副補佐官(サイバー・先端技術
担当 )が2021年11月17日に日本で会見を行った。
ニューバーガー氏は、台湾を狙った大規模なサイバー攻撃が中国から行われていることから、そのようなサイバー攻撃が偶発的な衝突に発展することを懸念。そして、そのような衝突から紛争に発展しないように、同盟国でのリスク管理と地域でのインフラの強靭化、情報共有が必要であることを強調していた。
またアメリカで石油パイプラインがランサムウェアによるサイバー攻撃をうけたことを例示して、サイバーセキュリティは国家の安全保障と経済安全保障の中核であることを訴えていた。そしてインド太平洋地域においても日本、アメリカ、オーストラリア、インドのクアッド4か国でのサイバーセキュリティ担当高官での協議の枠組み創設を目指しており、ソフトウェア、重要インフラのサイバー攻撃からの防衛で連携していく考えを示した。
同盟国で「弱い環」を作らないために
国家のリアルな安全保障と同様にサイバーセキュリティも国家の安全保障において重要である。サイバー攻撃による情報窃取は経済の安全保障において危機であり、重要インフラへの攻撃によるブラックアウトや原発事故などが発生した場合は国家の安全保障においても非常に危険である。
サイバースペースの安全保障の維持と強化は一国だけではできない。サイバー攻撃はどこから侵入してくるかわからない。自国のサイバースペースを強化するのは当然のことだが、自国だけを強化していてもネットワークでより緊密に接続されている同盟国や他の国々を踏み台にして侵入されることがある。そのためにも、安全保障協力の関係にある同盟国の間でサイバースペースにおける「弱い環」を作ってはいけない。
同じ価値観を共有し、同等の能力を保有している国同士でのサイバー同盟は非常に重要である。日本もサイバー攻撃の脅威として中国、ロシア、北朝鮮を名指ししているが、これらの国々は日本は同じ価値観は共有していない。そして特にサイバーセキュリティの能力の高い国家間でのサイバー同盟は潜在的な敵対国や集団からのサイバー攻撃に対する防衛と抑止能力を強化することにつながる。防衛同盟において重要なのは、リアルでもサイバーでも対外的脅威に対する安全保障だ。
そのため多国間で協力しあいながら、相互でネットワークの強化、サイバー攻撃対策の情報交換、人材育成に向けた交流などを行っていく必要がある。マルウェア情報やサイバー攻撃対策の情報交換だけでなく、平時においてもパブリックでの議論を行うことも信頼醸成につながるので重要である。