「働かないおじさん」は若者よりも承認欲求が強い、これだけの理由
「働かないおじさん」とは?
昨今「働かないおじさん」という表現が、ちまたに溢れかえっています。50~60代の男性管理職で、30代~40代の社員よりも高給取りなのに、会社への貢献度が低い。貢献度が低いだけならともかく、貢献度ゼロの人であったり、部下の足を引っ張って、実質貢献度マイナスの人。こういった方々を総称して「働かないおじさん」と呼ぶのだと思います。
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。
当然のことながら、このような「働かないおじさん」に対しては丁寧な態度をとります。「意欲が低い若者」には毅然とした態度で臨めばいいのですが、たとえ現在は「働かないおじさん」であっても、多くの方はその企業の功労者です。外部から来たコンサルタントが真正面から相手を批判していいはずがありません。相手をリスペクトしながらも、組織を変えていくための支援をお願いします。(多くの場合、手を貸してほしいとはお願いせず、あまり口を出さず、温かく見守ってもらえるよう調整することが多い)
「働かないおじさん」は承認欲求が強い
日本の大企業に潜む「アラ定(アラウンド定年)」の深刻な問題に書いたように、「アラウンド定年」となり、意欲が減退してしまった「働かないおじさん」はまだいいでしょう。
手こずるのは、承認欲求が強い「働かないおじさん」たちです。承認欲求が強い「働かないおじさん」は、存在に対する承認欲求が強い。したがって無視されることを極度に嫌います。
「なぜ私に相談せず、勝手に決めたんだ?」
「チャレンジ精神も大事だが、たまには年寄りの話も聞くもんだ」
相談されずに、組織の大事な方針を決められると、強く憤慨します。だからこそ私どものような外部のコンサルタントは気を遣います。事前に、どのような意思決定をするときは声をかけるかルールを伝えておくのです。しかし、それでも「私は聞いてない!」と突っかかってくる方は少なくありません。
後付けの評論は最悪
評論家気取りの「働かないおじさん」には、多くの組織メンバーが苦労することでしょう。何らかのプロジェクトが失敗に終わったあと、
「あえて口出しせず、ガマンして見ていたが、はじめからわかっていた。こんなプロジェクトがうまくいくはずがないってことは」
ヒドイ人になると、
「社長、このプロジェクトの失敗はすべて私の責任です。私がもっと早く彼らにそのことを知らせてやれば、こんなことにはならなかったはずです」
などとカッコつけはじめたら、プロジェクトメンバーたちは屈辱です。それを聞いた社長が、
「まだ君たちにプロジェクトを任せるのは、早かったかもしれないな」
などと、承認欲求が強い「働かないおじさん」の意見に同意したら最悪でしょう。私ども外部のコンサルタントは、できる限り事前の「根回し」をし、「働かないおじさん」の組織内影響力が復活することを阻止しなければなりません。
このような「働かないおじさん」に、してはならないのは、
「あなたなら、このプロジェクトはどのように成功させましたか?」
などと過去の出来事に対する意見を求めることです。過去の出来事には、どれだけでも後付けで仮説を立てられます。
「私だったら、はじめからこんなプロジェクトはやらない。それよりも、こうすべきだったんだ」
過ぎた時間を取り戻すことはできません。したがって、この「働かないおじさん」が言う仮説が正しかったかどうかを検証できない。「そんなやり方ではうまくいかない」と否定したくてもできないため、尋ねるだけ相手に主導権を握られます。
したがって、やるなら未来のことを尋ねるのです。しかも具体的に、です。
「貴重なご意見をありがとうございます。ところで、このままだと、今期の売上総利益が達成しそうにありません。とくに販売が低調な商品Xをどうすべきか、お知恵を貸してもらえませんか。社長が今期最大の目玉として市場に投入させた商品ですから、撤退はできません」
このように言われると、相手は言葉を濁すしかないでしょう。
有名な投資家が言った「リスクが嫌いな人は、世の中の格差を支えている人」という名言があります。リスクとは「危険性」ではなく「不確実性」という意味です。不確実なことに取り組むことを制限したら、人も組織も成長していきません。まさに「格差を支える」側にまわってしまいます。
不確実性の高いことを嫌い、承認欲求だけが強い「働かないおじさん」は、かなりタチが悪いと言えるでしょう。「ミレニアル世代」「ジェネレーションY」などと呼ばれる若者たちは承認欲求が強い、などと言われますが、アラウンド定年(アラ定)の「働かないおじさん」のほうが強い気がします。
しかも上から目線で承認欲求が強いことが多く、周りの人は大変です。「飼い殺し」にすることなどできませんから、正しくペーシングし、上層部と協力しながら「働かないおじさん」の居場所を見つけることが大事です。