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ヘッジファンドの金先物売りが急増中

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

ヘッジファンドが金相場の上昇を見込む買いポジションからの撤退を進める一方で、金相場の下落を見込む売りポジションを構築する動きを加速させていることが判明した。米商品先物取引委員会(CFTC)が7月24日に発表した最新データによると、21日時点でヘッジファンド(Managed Money)がCOMEX金先物市場で保有している買いポジションは10万6,297枚となっているのに対して、売りポジションは11万9,853枚に達しており、2週連続で売りポジションが買いポジションの規模を上回っている。

金相場が急落しているとは言え、実は買いポジションの規模が大きく減少している訳ではない。当然に短期売買のヘッジファンドは買いポジションからの撤退を余儀なくされており、昨年末と比較すると約7ヶ月で買いポジションの規模は15%減少した状態にある。ただ、金市場における買いポジションは長期的なインフレ懸念への対応、突発的なリスクイベントへの保険的な意味を有するものもあり、金価格が急落したからといって直ちに全てが決済される訳ではない。

寧ろ大きな動きを見せているのは、売りポジションの方である。こちらは米連邦準備制度理事会(FRB)がゼロ金利政策、更には量的緩和政策を展開する中では、概ね1万~3万枚程度の規模に留まっていた。買いポジションが09~11年にかけて20万枚台に乗せるような動きを見せていたのと比較すると「誤差」とも言える小さい規模であり、金価格動向はファンドが買いポジションの規模をどのようにコントロールするのかが専らの関心事になっていた。

しかし、いわゆるバーナン・キショック後は量的緩和の終了を見据えて、積極的な金相場の下げを見込んだ売りポジション構築の動きも強まり、2万~8万枚水準まで水準を切り上げ、金相場の値下がり傾向を支援する原動力になりつつあった。それでも買いポジションの規模を上回るような動きまでは見られなかったが、6月下旬以降はいよいよ量的緩和も終了するとの一種のイエレン・ショックが金相場売りの第二派とも言える動きを呼び込んでおり、上述のように今や12万枚規模の売りポジションが構築される状況になっている。

これは、金価格の底打ちに懐疑的な見方が一気に広がり、金価格の下落が更に本格化するシナリオに賭け始めたヘッジファンドが急増していることを意味する。買いポジションが今回の急落にどのように対応すべきか明確な答えを用意できない中、下げ相場への誘導を意図した積極的な弱気マネーの流入現象が発生していることが、金相場の下げをエスカレートさせている一因と言えるだろう。なお、今月は24日時点で1オンス当たり前月比-86.30ドルの1,085.50ドルとなっているが、このまま来週も大きな変化がみられなければ、13年6月の169.30ドルに次ぐ大きな下げ幅を記録することになる。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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