給与所得者の数や所得税額の実情をさぐる
平均給与と賞与の合計額は
日々の仕事をこなして得た給与に対し、国は所得税を徴収する。多くの給与所得者は会社側が各種計算をしてくれるので、年末調整の手続きをする程度で済むこともあり、所得税に関しては日頃から意識をする機会は無い。一方、所得税は国の税収においては重要な要目の一つであり、その額は国全体の経済の動向を推し量る一つの指標にもなる。今回は国税庁が公開している各種データを基に、いくつかの所得税に関する動向を確認していく。
まず最初に確認するのは、正規・非正規給与所得者別の各種動向。国税庁の公開データでは2012年分から正規・非正規別のデータ公開を始めているため、現時点では5年分のみが確認できる(1年勤続者、つまり該当年を通して勤続し続けた人のみ)。
まずは給与所得者。直近2016年では正規給与所得者が3182万1832人、非正規は1154万6495人。この他に役員や非給与所得者も所得税の課税対象者としては存在するが、今回は取扱い範囲外。
双方とも増加傾向にある。データ取得開始が2012年からだっため、現時点では5年分しかないのが残念。
続いてこれら給与所得者における総計給与・手当と賞与額。そして人数で除算した平均額。人数が多ければ多いほど総額は増えるが、一人一人の額面も増えないと平均額は上昇しない。
総額は正規・非正規共に上昇、平均額は正規給与所得者では上昇継続中、非正規では2013年に減少したものの、2014年では増加に転じ、前々年となる2012年を上回る値を示している。そして前年比増の動きは2015年以降も続いている。2013年に前年から減少した理由について、その詳細を確認すると、給与・手取りでは減っているが賞与は増えていることから、定年退職者などによる再雇用組が多分に平均額を押し下げた代わりに、賞与額を底上げしたものと推定できる。
ちなみに給与所得者の役員は2016年時点で約47万人(前年比約8万人増)、平均給与・手当+賞与は634万4000円(前年比4万7000円増)となっている。当然正規・非正規社員よりは高い金額である。
給与所得者数や総所得税税額はどうだろうか
給与所得者の数そのもの、そしてその人たちから徴収できる所得税は、経済そのものの指標の一つとなる。次に示すのは役員も含め、正規・非正規を問わずの給与所得者数(給与をもらっていない人は含まれない。それらの人の中にも、例えば配当生活者のように、所得税を支払う人はもちろん存在する)の推移。1年勤続者と1年未満勤続者の双方を合わせた数の推移を示している。後者は1年継続して就業できなかった人であり、正規・非正規とはまた別の区分であることに注意。
給与所得者は漸増していたものの、前世紀末ぐらいからその伸び率を緩やかなものとしている。今世紀初頭は1年勤続者が減り、1年未満勤続者が増加する動きもあったが、2008年の1年未満勤続者の大きな増加をピークとし、それ以降は1年未満勤続者が漸減、1年勤続者が増加の流れを示している。直近分2016年は1年勤続者が前年比で1.6%増、1年未満勤続者は0.2%減となっている。
続いてこれら給与所得者からの所得税税額の総数推移。給与所得者が多ければ、そして個々の稼ぎが大きければ、つまり総所得税税額が大きいほど、一般的に国としての税収も大きなものとなる。要するに景気がよくなり多くの人がたくさん稼げば稼ぐほど、税収も増える次第。また繰り返しになるが、これが所得税の徴収額すべてでは無いことに注意。
景気が悪くなれば給与所得者は減り、受給額も減る。当然所得税税額も減ってしまう。バブル経済期には所得税税額も大きく伸びていたが、その後経済の失速と共に漸減、金融危機直前まではいくぶん回復の兆しも見られたものの、2007年以降は減退。リーマンショックで大きく下落し、その後円高不況、震災などを経て低迷を続け、2013年からようやく持ち直しを示す形となっている。
今件は所得税の中でもある程度仕切り分けした範囲での動向が主な解説対象となっている。それでも経済の動向と小さからぬ連動性のある給与所得者の数や、その人たちから徴収されている所得税などの推移を介し、経済の鼓動が聞こえてくるはずである。
■関連記事:
2016年平均給与は421万6000円・給与や賞与の動向をグラフ化してみる
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。