使ってわかったApple Watchの欠点
前回筆者は、Apple Watchを実際に使ってみた経験から、利点について報告した。第2回となる今回は、「欠点」及び「使うことによる不利益」について、医学的な見地から検討してみたい。
前回の結論は、以下のとおり。
(結論)
利点
・ダイエットができる
・寿命が延びそう
・スマホ依存が少し治る
欠点
・45歳以上の人は文字が見えない
・スマホ依存が加速する危険性
・視力が低下する危険性
前回の記事では利点について述べたが、今回は欠点について論じたい。
・45歳以上の人は文字が見えない
これはとても単純な話だ。45歳を超えるとかなりの方が老眼となり、近くの小さい文字が見えなくなる。実際に45歳の知人2人にApple Watchをみていただいたが、「まず見えないよ」と言っていた。(老眼について詳しくは日本眼科医会ホームページを参照)
「文字を大きく」「線を太く」する機能は実装されているが、それでもかなり字は小さい。人によっては40歳くらいの方でもかなり字が見づらいだろう。
これは「腕時計のサイズ」という特性上、不可避の欠点である。が、前回に述べたようにApple Watchが最も威力を発揮する「健康」の観点からは、最高の適応年齢は40歳代。厚生労働省によると40歳以上の男性の二人にひとりはメタボになる。ぐっとメタボが増える世代だし、運動不足の世代だ。
おまけに40歳代の人々の生活をいまさら変えるなど、ほぼ不可能に近い。自身が心筋梗塞などの大病にかかるくらいのことがなければ、酒量は減らず運動はしないままだ。
この「最も良い適応である人々は、字が小さくて使えない」という致命傷が今後どのように改善されていくのだろうか。
音声化、シェーマ化が鍵だと筆者は考えている。Siri(音声による人工知能)のさらなる開発が待たれる。
・スマホ依存が加速する危険性
前回筆者は利点の一つに「スマホ依存が治る可能性」を挙げた。
一見矛盾した指摘をしているが、そうではない。
Apple Watchを使用していると、自分で設定した「通知」はすべてあなたの腕を短いバイブレーションで叩いて教えてくれる。歩行中でも食事中でも、昼寝をしていても気づくくらいきっちりとした通知だ。これまでポケットの中で、あるいはハンドバッグの中で静かに震えていたiPhoneに変わり、ほぼ見落とさない通知をApple Watchは可能にしている。
これによって、筆者は幾つかのメッセンジャーアプリを「通知オフ」にせざるを得なかった。あまりにも頻繁に手首を叩くので、その都度確認していたら多くのメッセージの支配下におかれてしまったからだ。
電車での移動中、歩行中、運転中、トイレでも、大切な人との一流レストランでの食事中でも休む暇はない。
リアルタイム性の極端な向上は、依存を加速させる。
もちろん手首をこちらにひねって時計を見るしぐさをしなければ、通知内容はわからない。でも一流レストランの豪華なトイレに入るや否や、すべての通知を確認してしまう。
・視力が低下する危険性
小さい画面に集中して見るため、近視になる可能性がある。
若干だが、筆者もやや視力が低下した印象がある(検査は行っていないが)
その他の問題として、「充電」がある。話題になった、磁力で接するだけの充電方法は良いのだが、専用の充電器以外では充電できない。つまり出張などではかならず専用充電器を持ち歩かねばならない。しかも1日1回の充電は必須で、充電をし忘れると充電器を持って出かける羽目になる。Apple Watch装着中は充電ができないため、一度外して充電しなければならないのだ。これが不便である。筆者は充電器を持ち歩いてしまう「充電器依存」にも陥り始めている。
以上が主だった欠点であろう。他にも、「面白いコミュニケーションアプリがあるがApple Watchユーザーが少ないためあまり使えない」とか、「着けているだけで意識高い系と思われる」などの欠点はある。
以上、前回と今回の記事でApple Watchを買う利点、欠点について論じてきた。
このデバイスが「買い」かどうかは、あなたの体型、年齢、収入、意識の高さにも依るだろう。
多くの人は「高い」「まだ買うのは早い」と考えていることだろう。
Apple社はApple Watchの売れ行きについては完全な沈黙を貫いている。いわゆる「イノベーター」層が買った後、今後どう「アーリーアダプター」「マジョリティー」層に普及していくかが注目される。