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水による蕁麻疹、かゆみ、角化症‐水接触性皮膚疾患の種類と治療法

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【水に濡れるだけで発症する珍しい皮膚疾患】

みなさんは、水に触れるだけで皮膚に異変が起こる病気があるのをご存知でしょうか。水接触性皮膚疾患と呼ばれるこれらの病気は、水に触れることで蕁麻疹やかゆみ、角化症などの症状が現れます。

水接触性蕁麻疹は、水に触れた部位に発赤を伴う膨疹(ぼうしん)が発症する疾患です。多くは思春期の女性に見られ、水に触れて数分から30分ほどで痒みを伴う膨疹が現れ、30~60分ほどで消失します。特に首や上半身、腕に現れやすいのが特徴です。

一方、水接触性そう痒症は、水に濡れた後に激しいかゆみや痛みが起こりますが、皮膚には目に見える変化はありません。中高年の方に多く、かゆみは 1時間以上続くこともあります。

水接触性角化症は、水に触れて数分から20分ほどで手のひらや足の裏に白っぽい丘疹(きゅうしん)や浮腫(ふしゅ)、皺(しわ)が現れる病気です。10代の女性に多く、乾かすと数分から1時間ほどで症状は消えます。

これらの疾患は珍しいものの、日常生活に支障をきたす場合もあり、正しい知識を持つことが大切だと考えます。

【水接触性皮膚疾患の原因と診断】

水接触性皮膚疾患の原因は明らかになっていませんが、水接触性蕁麻疹は皮脂や汗腺由来の物質がマスト細胞からヒスタミンを放出させるのではないかと考えられています。水接触性そう痒症では、アセチルコリンやセロトニンなどの神経伝達物質が関与している可能性が指摘されています。

水接触性角化症の原因としては、汗管の異常やケラチンと水分の結合が考えられており、嚢胞性線維症との関連も示唆されています。

これらの疾患はいずれも水との接触後の特徴的な症状から診断されます。水接触性蕁麻疹などでは、水を用いた誘発テストで確定診断されることもあります。

【水接触性皮膚疾患の治療とケア】

水接触性皮膚疾患の治療法は確立されていませんが、抗ヒスタミン薬の内服である程度症状を抑えられる場合があります。ステロイド外用薬やUVB・PUVA療法が奏功した例も報告されています。

水接触性そう痒症には、抗ヒスタミン薬の他、鎮痛薬やセロトニン再取り込み阻害薬、入浴時の重曹の使用などが試みられています。水接触性角化症では、ボツリヌス毒素の注射や胸部交感神経節切除術が有効だったという報告もあります。

ただし、これらの治療法はあくまで対症療法です。原因が解明されていない現状では、水に触れないよう工夫することが最も確実な方法と言えるでしょう。皮膚の乾燥を防ぐスキンケアを心がけることも大切です。

水接触性皮膚疾患は非常に稀な病気ですが、水に触れるという日常的な行為で発症するため、日常生活への影響は少なくありません。症状でお悩みの方は、皮膚科専門医に相談することをおすすめします。

参考文献:

Fang Wang et al. Aquagenic cutaneous disorders. J Deutsche Derma Gesell. 2017; 15(6):602-608.

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ddg.13234

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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