ジャニーズ事務所に入所後、先輩グループのバックダンサーを経験し、「宇宙Six」のメンバーとして活躍していた原嘉孝（はら・よしたか）さん。同期入所は、同じ「宇宙Six」で活動後に「Snow Man」としてデビューした目黒蓮さん、「Sexy Zone」佐藤勝利さん、「Travis Japan」宮近海斗さん、中村海人さん、松倉海斗さんなど華やかな面々がそろいます。中でも、「はらめぐ」と呼ばれてステージでもシンメトリーで踊るなど、多くの時間を過ごしてきた目黒さんには特別な思いがあります。舞台を中心に活動を続けてきた原さんは今、天性の才能と努力により演劇界での評価を高め、確実に存在感を増してきています。

―今年は初めてのことにいろいろ挑戦されていますね。3月には、初めてのバラエティ番組『アイ・アム・冒険少年』（TBS系）に出演されました。

　あれは全部、目黒蓮（「Snow Man」）のおかげです。目黒が番組のプロデューサーさんに「『脱出島』の企画ロケには原と行きたいです。原としか行きたくないです」とずっと言ってくれていたみたいで…本番は緊張し過ぎて、目黒がいなかったら無理だったかもしれない。でも、目黒のあんな無邪気な笑顔を引き出せたのは僕だからかな、とは思っています（笑）。

　放送後の反響は大きかったです。中学・高校の先生が卒業以来に連絡をくれまして、先日ご飯に行きました。放送日は定時で仕事を終えてリアルタイムで家族そろって見てくれたそうで、シンプルに「テレビすげぇ！」と思いました（笑）。

―目黒さんを「Snow Man」に送り出した時の思いは？

　送り出すしかなかったです。正直100％応援の気持ちではなかったし、「なんで目黒だけ」という思いがありました。でも送り出したからこそ、目黒が頑張っているからこそ、今自分も頑張れているのだと思います。

　ずっと一緒にやってきた仲間が目に見える場所で頑張っていて、街を歩けば目黒、テレビをつけたら目黒、CMになったと思ったらまた目黒（笑）。悔しくて、アイツが出ているドラマもバラエティも最初は見られなかったです。

　初めて見たのが、去年放送されたドラマ『silent』（フジテレビ系）です。最近ですよね（笑）。ちゃんとアイツを見なきゃダメだと思いました。自分は自分の道を切り開いて確立していこうとやってきましたが、ようやく少しずつ、根拠のない自信でもできてきたのかなと思います。

―原さんにとって目黒さんはどんな存在ですか。

　家族でもないし、単なるライバルでもない…人生の一部です。常に脳内にいます。

　この間、東京ドームで行われた「Snow Man」のコンサートに初めて行きました。カッコよかったですね。大きなステージの後ろにあるJr.マンションのセットの端と端で、僕と目黒は先輩のバックとして踊っていたんです。その目黒が、同じ会場で堂々と自分のライブをやっている。もう登場から泣いちゃって…分かってはいましたが、目の前で見ると全然違いました。

　目黒とは電話でよく話しますけど、今も「俺はお前の名前を、できる限りいろいろな所で出していく」と言ってくれるんです。だから、一緒になった時には絶対アイツに負けていない自分でいたいと思います。

―今年出演した『Endless SHOCK』『Endless SHOCK‐Eternal‐』は“キレキレ”だと評判でした。

　僕は外部舞台への出演が多くて、ジャニーズのキラキラしたショーの世界から何年も離れていました。2年前、そこに戻った時にどんな自分でいられるのだろう、外部で学んだことをどう活かせるのだろうと思い、『～SHOCK』が自分にとって新たなスタートになるのではないかと考えて、マネジャーさんに相談しました。

　ちょうど前年まで出演していた寺西拓人が、仕事の都合で出られないのでそのポジションが空くということもあり、堂本光一くんや東宝さんが「OK」を出してくれて出演できることになりました。

　去年は久しぶりだったこともあり、楽しさが先行して全身で踊りまくって歌いまくりました。でも、振付師の方から「腕が上がってない」と怒られました。自分では上げているつもりなのに、トレーニングし過ぎたのか増量した筋肉が邪魔して上がりきってない。踊るためには余計な筋肉もあるんですね（笑）。

―体力面が大変な舞台ですよね。

　1年目は大変でした。2年目の今年は、何でも力任せに踊っていた去年と比べて、表現する・演じることが大切だと気付いたんです。単なる踊りから、役として踊る“演技”になった瞬間にすごく楽になって、呼吸も自然になって表情もついて、1曲があっという間に終わるようになりました。

　同じ役が何ヵ月も続くロングラン公演も、2年目ともなると、進化した自分を見せないといけない。観てくれる人の期待に応えたいし、外部で経験を重ねたからこその変化を見せなければというプライドもあります。物語に厚みを持たせるのは自分たち“周り”の仕事だと思ったので、僕なりのポジションを演じられたかな、とは思っています。

―初参加で光一さんに本身の刀を渡す重要な役を演じた人は過去にいないです。

　皆に言われましたが、寺西がやっていたポジションにそのまま入れたので、それは寺西に感謝です。光一くんとは仕事をしたことがなかったので、最初は僕のことを認識していなかったと思いますが、1年目から「お前本当に初年度？」とか「10年いるだろ」とか言われていました（笑）。

　事務所の後輩がいることもうれしかったです。普段後輩は、僕のこと絶対に分かってないですもん（笑）。事務所で顔を合わせても、スタッフさんなのか先輩なのか、半信半疑の顔であいさつされます。だから深田竜生（「少年忍者」）や阿達慶（ジャニーズJr.）が、お芝居や踊りのことを聞いてくれるのが本当にうれしかった。

―次の舞台『スローターハウス』は全然違う雰囲気ですね。

　本当に違います。出演者は4人で、那須佐代子さんという大女優との会話劇です。出ずっぱりで集中力を切らせるわけにはいかない、今までで一番大変な舞台かもしれません。人を殺した過去を持つ役柄で、僕たちには想像しかできない範囲なので、体に落とし込む作業が全く初めての経験でした。

―役作りで大事にしたことは？

　日常で誰かに腹を立てたり、暴言を吐いたり、人に苛立つ気持ちは誰にでもあります。その中で罪を犯すラインが“ここ”だとしたら、僕たちも“そっち”側にいた可能性はあったかもしれない。感情が爆発して偶然が重なって、殺人を犯してしまう可能性は実は誰にでもある。ではなぜ罪を犯してしまうまで感情が爆発したのか…。その感情を読み解いて自分の過去と重ねて、共感できる部分を膨らませていくという作業を大事にしています。常に考えているので、疲れます。体より脳を使う方がどっと疲れます。

―役は引きずる方or切り替えられる方？

　稽古中、外食は減りました。サッと食べて台本を見直したり、足りないところを確認したり、この感情はもっと想像力を膨らませないと、などと考えていたら、疲れて夜11時くらいには寝ちゃいます。引きずるのが悪いとは思っていないので、落ちた感覚を持ったまま翌日の稽古に行きたい、と思うこともあるし、全部忘れて原に戻ろうと思うこともあるので、比較的感情をコントロールできているようには思います。

　『hedge1-2-3』という作品で演出家・詩森ろばさんとご一緒して。そのご縁から「次はどんな役をやりたいの？」と聞いてくださっていたので、「犯罪者の役がやりたい」と伝えていました。理由は、自分と一番かけ離れたところに少しでも共感してみたいと思ったからです。ろばさんも、障がい者施設で起きた殺人事件（2016年・神奈川県）が気になっていたのと僕の希望があったことから、この作品を書いてくれました。

　なぜ殺してしまったのか、どういう感情になったら人を殺してしまうのか、興味がない話ではなく、誰にでもある感情だと僕は思うんです。お芝居で少しでも近づきたいです。

―その後は、9月開幕のミュージカル『天翔ける風に』と続きますね。

　スゴく踊るみたいです。　2～3年前から共演を熱望していた屋良朝幸くんと初共演です。屋良くんは誰もが認めるプロフェッショナル、プロ魂の塊です。楽しそうに「ダンスが好きだ！」とキラキラしている先輩とずっと一緒にやりたかったので、今回選んでもらえてうれしいです。

―ミュージカルはずっとやりたいと言っていた世界ですよね。

　「ミュージカルをやりたい！」と言っていた頃は、『レ・ミゼラブル』を観て感動して東宝ミュージカルに憧れていたので、それしか見えていませんでした。もちろん今もやりたいですが、ストレートプレイやコメディもやりたいと、どんどん欲が出てきています。

　売れている俳優さんは、まったく違う役をやっています。今の僕が自分で可能性を狭めてはダメだと思いますし、この先いろいろな役がやりたいです。

―原さんが今の自分を説明するとしたら？

　「表現者」です。僕の体で何かを作り上げる、僕じゃなきゃダメな、代わりのない仕事だと思っています。だから、最近は体を大事に思うようになりまして、人間ドックに行ってきました（笑）。これからも健康第一で頑張っていきます！

【編集後記】

季節を問わずいつでもタンクトップ姿が印象的な原さん。豪快で明るくて、舞台映えします。例え大勢で舞台に立っていても、つい目がいってしまう。物語の中で生命力を感じさせ、客席にパワーを届けることができるのです。巷では確実に原さんの魅力が浸透してきているように感じます。予定より早めに始まったインタビュー終了後に「何時から来てくれていたんですか」と聞いてくれる優しさは、日々の疲れた心に染みました。

■原嘉孝（はら・よしたか）

1995年9月25日生まれ、神奈川県出身。2010年ジャニーズ事務所に入所。2016年ジャニーズJr.ユニット「宇宙Six」へ加入後、多くの舞台・ステージで活躍。解散後、2021年にジャニーズJr.を卒業し、ソロ活動に専念。2019年『THE BANK ROBBERY！～ダイヤモンド強奪大作戦～』で舞台初単独主演。2020年『両国花錦闘士』主演。他『Les Miserables～惨めなる人々～』『リチャード二世』などミュージカルからコメディ、シリアスなものまで幅広いジャンルの作品に出演。Serial number09『スローターハウス』は7/15～23東京芸術劇場シアターイーストにて上演予定。ミュージカル『天翔ける風に』は9/29～10/9東京芸術劇場プレイハウス、10/13～15兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール、10/19～22愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホールにて上演予定。