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子ども・若者が未来に希望が持てる社会を目指して

今村久美認定NPO法人カタリバ代表理事
高校生の様子

主に高校生を対象とした事業を日々実施しているカタリバでは、「最近の子ども・若者」の動向についてご質問を頂くことが多くあります。

ここでは内閣府が実施をしている「若者の意識調査」の結果をご紹介しながら、カタリバの取り組みやそこで接する生徒達の様子についてお伝えしたいと思います。

■データから見えてくる子ども・若者の現状

13〜29歳の世界の若者を対象に行われた調査で、「自分自身に満足している」という質問に対して「満足している」と答えた日本の若者の割合は45.8%となっています。

自分自身に満足している割合 出典:「我が国と諸外国の若者の意識に対する調査」
自分自身に満足している割合 出典:「我が国と諸外国の若者の意識に対する調査」

また、「私の参加により、変えてほしい社会現象が少し変えられるかもしれない」という質問に対して、「そう思う」と答えた割合は約3割、「自分の将来について明るい希望をもっている」割合は約6割といずれも日本が最も低くなっています。

社会現象が変えられるかもしれない 出典:「我が国と諸外国の若者の意識に対する調査」
社会現象が変えられるかもしれない 出典:「我が国と諸外国の若者の意識に対する調査」
自分の将来について明るい希望を持っているか 出典:「我が国と諸外国の若者の意識に対する調査」
自分の将来について明るい希望を持っているか 出典:「我が国と諸外国の若者の意識に対する調査」

調査を分析した専門家は、「将来に明るい希望が持てるかどうかは、大きく分けると、1:自分自身を肯定的に捉えられるか(内部要因)、2:自国の将来が肯定的に捉えられるか(外部要因)が関係する」と指摘しています。

そして、自己肯定感を育むためには「家庭・学校・地域で自分が役に立つ存在である事を経験する機会を通じて自分の能力や存在意義を確認することで自信に変えていける」と分析しています。

(出典:内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査(平成25年度)

■「カタリ場」から見えてくる事

現在、カタリバでは年間200校以上の高校・大学でキャリア学習プログラム「カタリ場」を導入いただいています。

実際に生徒達に接する中で、「自分にはどうせできっこない」「頼られる人になりたい」と言った声を耳にする事が多くあります。

また、高校時代に勉学や課外活動などで成功体験や他者のサポートを持てないまま、漫然と受かる大学へ進学し、ミスマッチを起こし中退してしまうというケースが顕在化しています。

■高校生に“きっかけ”を届け続ける

将来に向けて背中を押される“きっかけ”さえあれば、主体的になれる生徒も多いはず。

カタリバが設立以来14年間、大事にしてきた思いです。

カタリ場の授業では、大学生や社会人などのボランティアスタッフが高校生の話を聞き、自らの体験談を語りかけます。

利害関係のある親でも先生でもない、同じ視点になりがちの友達でもない少し年上の「先輩」の存在をカタリバでは<ナナメの関係>と呼んでいます。この<ナナメの関係>による対話が高校生の心に火を灯し、将来への一歩を後押しします。最近では、学力を身につける前の段階として、意欲や目標を持つ機会が必要だと考え、高校1年生の早い段階でプログラム実施を検討して下さる高校も増えています。

また、「カタリ場」の成功は学校の先生方とどれだけ連携できるかがとても重要です。

「カタリ場」の授業を通じて生徒達が日々の学校生活を前向きに捉え直す事ができる様、一つ一つの「カタリ場」プログラムは先生方との打ち合わせに始まり、それぞれの学校の特徴に応じたオーダーメイドの内容になっています。

プログラム実施後、先生方からは、「生徒の進路選択の意欲が高まった」、「自ら、将来の話をする様になった」という声を頂いています。

・「カタリ場」を導入して頂いた高校の先生の声:

「生徒の仮面がはがれる瞬間〜先生から見た『カタリ場』」

98%は高校に進学する現在、この時期にどのような進路選択を取るかが彼らの人生に大きく影響を及ぼします。

今後、首都圏で培ってきたカタリ場事業のノウハウを基に地域展開に力を入れ、全国の高校に「カタリ場」を届けていきたいと考えています。

・カタリバのキャリア学習プログラムに関して詳細はこちら

■「社会の役に立ちたいという思い」を支える

先の調査において「自国のために役立ちたい」と答えた日本の若者は諸外国よりも多くなっています。

調査全体を踏まえて有識者は「日本のために何らか役に立ちたいのだけれども、具体的にどのように関与できるのか、また、自らの社会参加により具体的に社会を変えられるのかについては確たる意識を持つことができていない」と述べています。

自国のために役立つと思うような事がしたい 出典:「我が国と諸外国の若者の意識に対する調査」
自国のために役立つと思うような事がしたい 出典:「我が国と諸外国の若者の意識に対する調査」

カタリバでは東日本大震災後、津波被害の最も激しかった宮城県女川町、岩手県大槌町にて「コラボ・スクール」という学習支援事業を開始し、その中で高校生たち自身の「復興のために何かしたい」という思いを後押しする「マイプロジェクト」(課題解決型のプロジェクト学習)を始めました。

そこで得た気付きは、主体的に考え、実際に行動することで子どもたちが自信を得、社会参画に対して前向きになれるという事でした。その気付きを基に現在、全国の高校生たちが地域課題の解決に取り組む事を支援する「高校生マイプロジェクト」という取り組みを進めています。

・全国で地域の課題解決に取り組む高校生が一同に介する「全国高校生 MYPROJECT AWARD」を昨年より度開催。

2014年11月1日をもってカタリバは設立から14年目を迎えました。

引き続き、子ども・若者に“きっかけ”のタネを届けられる様、活動を続けています。

認定NPO法人カタリバ代表理事

2001年にNPOカタリバを設立。高校生のためのキャリア学習プログラム「カタリ場」を開始。2011年の東日本大震災以降は子どもたちに学びの場と居場所を提供するなど、社会の変化に応じてさまざまな教育活動に取り組む。「ナナメの関係」と「本音の対話」を軸に、思春期世代の「学びの意欲」を引き出し、大学生など若者の参画機会の創出に力を入れる。ハタチ基金 代表理事。地域・教育魅力化プラットフォーム理事。中央教育審議会 委員。著書に「NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書」(ダイヤモンド社、2023年)」

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