【猫との被災に備える】迷子猫を探すときに知っておきたい猫の性質
2024年1月1日に起きた能登半島地震は、人間だけでなくペットたちにも大きな爪跡を残しました。SNSでも次々と迷子になってしまった猫を探す悲痛な投稿が見られ、本当に心が痛みます。
猫を飼っている人の多くは一緒に避難する準備をしていると思いますが、準備していればスムーズに猫と一緒に避難ができるかというと必ずしもそうではないでしょう。
猫は犬と違い、普段からあまり人間に協力的ではありません。特に、大きな揺れのあとなどはおびえてしまい、キャリーにいれるのも一苦労です。建物の倒壊によってパニックになり、外に飛び出してしまうということも十分にありえます。
飼っている猫が迷子になるなんて考えたくもありませんが、飼い主が普段から迷子になったときを想定しておけば万が一のときも効率的に探すことができるはずです。
そこで、この記事では猫が迷子になったときに知っておくと役立つ猫の性質についてご紹介します。
猫は遠くにいかない
迷子猫を探すときまず意識しておきたいのは、猫の移動距離です。
猫と犬はよく、短距離ランナーと長距離ランナーにたとえられます。猫は短距離ランナー型で、その瞬発力と加速は目を見張るものがありますが、長い時間走ることはできません。
また、体が決して大きくないイエネコは捕食者であると同時に被捕食者(食べられる側)でもあります。外敵に襲われることを避けるため、安全ななわばりの中で行動し、獲物を待ち伏せて狩りをするスタイルです。
つまり猫は外に出たからといって、一気に長距離走っていく動物ではないのです。
特に普段室内飼いの猫が迷子になった場合、期せずしてなわばりから放り出されたような状態ですので、誰かのなわばりを荒らしてしまわないようかなり慎重に行動します。さらに猫には長距離を走る体力もないため、一日の行動範囲は限られています。
特に避妊/去勢手術が終わった猫やメスの猫は行動範囲が狭く、多くの場合時間が経っても半径100m圏内に潜んでいるそうです。
猫が迷子になったときはまず家の近所を捜索を始めてみるといいでしょう。意外と隣家との隙間や、床下、エアコン室外機のかげなど、ごくごく家の近くに潜んでいることも少なくありません。
猫が戻ってくるニオイとは?
あまり知られていませんが、猫はかなり鼻が良い動物です。犬のようにニオイがわかったかどうか伝えてくれないのではっきりした数字はわかっていませんが、人間の数十万倍の嗅覚を持つと言われています。
このため、猫が迷子になったとき、猫がいつも食べているエサを玄関先に置き、そのニオイで引き寄せるという方法をよく聞きます。しかし、エサはどの猫にとっても魅力的なニオイであるため、他の猫を引き寄せてしまい、迷子でおびえている猫を却って遠ざける可能性もあります。
そこでおすすめしたいのが、猫のトイレ砂です。猫は自分のニオイを精密に嗅ぎ分けることができます。猫にとって自分のニオイは自分のなわばりを示すもので、最も安心できるニオイです。
排水溝ネットのようなものに猫が使っていたトイレ砂や尿がついたペットシーツの切れ端を入れて家の周りにおいておくと、自分のなわばりだと気づいて戻ってきてくれる可能性があります。
猫を呼ぶときは「いつもの声」で
「猫なで声」という言葉があるように、人は猫や子どもに対して自然と高く優しい声で話しかける傾向があります。そして、猫はその「猫なで声」が自分に向けられたものだと明確に理解しています。
パリ・ナンテール大学の調査では、猫が飼い主の「猫なで声」に対しては反応するものの、飼い主が他の人間に対して話した声に対しては反応しないことが明らかになっています。猫は自分の名前を覚えることができますが、それは普段の飼い主の声色も含めての記憶なのです。
飼い猫が迷子になったら誰もが必死でその名前を叫びたいと思います。しかし、それでは猫は「呼ばれた」と認識できないかもしれません。迷子の猫を探すときには、不安な気持ちを抑えて「いつもの声」での呼びかけを心掛けてみてください。
迷子札やマイクロチップの検討も
猫が迷子になっても、時間を置かずいつもの声で家の周りを探したり、トイレ砂やエサで呼び寄せたりすれば見つかる可能性は十分にあります。
とはいえ、地震などの自然災害では飼い主にも余裕がありません。怪我をしてしまうなどすぐに探し出せないこともあるでしょう。
そんなとき猫を見つけた誰かがあなたの猫と気づくためにあるのが、迷子札やマイクロチップです。特にマイクロチップは埋め込み式であるため、迷子札のようにはずれてしまう恐れもありません。
マイクロチップの登録は2022年から義務化されていますが、それ以前に飼った犬猫や、保護された犬猫については努力義務であるため、つけていない個体も多いのが現状です。
災害はいつ起こるかわからないもの。「埋め込みって痛そう」と思ってしまいますが、日本獣医師会のHPによるとマイクロチップの埋め込みは注射器を使って行われ、麻酔や入院は必要なく、痛みも注射と同程度であるそうです。大切な家族を失わないためにも、この機会に導入を検討してみてもいいかもしれませんね。