フジテレビ『池上彰 緊急スペシャル!』の「日本が嫌いです」字幕捏造事件は本当? 調べてみると……
韓国の反日騒動を受けて、SNS『Twitter』で「#好きです韓国」、「#嫌いです韓国」のハッシュタグが日本で拡散しています。
その流れのなかで、2015年6月5日に放送されたフジテレビの『池上彰 緊急スペシャル! 知っているようで知らない韓国のナゾ』にて「(日本の)文化が好きです」と喋っている韓国人女性のインタビュー映像に「嫌いですよ。だって韓国を苦しめたじゃないですか」との嘘字幕を当てはめたと指摘するツイート(2019年8月7日投稿)が約7万件もリツイートされ、4年後のいまになって再び注目されています。
気になったので実際にどのようなことが起きていたのか調べてみました。
セリフと字幕が異なっていたのは事実
まず、ツイートにあった字幕が異なる放送は本当にされてました。当時のニュース記事もいくつか見つかりました。
この件は韓国メディアも多く取り上げていたそうです。
フジテレビは謝罪するも「別の部分でそう喋っていた」と釈明
字幕を捏造しているとの批判を受け、フジテレビは『池上彰 緊急スペシャル!』公式ページでお詫びを発表しました。
しかし、このお詫びでは字幕が異なっていたことを認めつつも、「使用した映像の部分が間違っているだけで、インタビューの別の部分で実際に『日本が嫌いです』と答えています」と編集ミスを主張しています。
同番組ではもうひとつ字幕にミスがあり、こちらは「過去の歴史を反省せず、そういう部分が私はちょっと…」と話している男性の映像に、「日本人にはいい人もいますが、国として嫌いです」との字幕を当てはめていたとのことです。
ツイートの「文化が好きです」→実際のセリフは「文化がたくさんあります」
なお、拡散しているツイートの画像では「文化が好きです」と喋っていたとありますが、実際のセリフは「文化がたくさんあります」だったようです。
これは事件当時に複数の人が同様の内容を指摘しているため、正しいと考えられます。
つまり、日本が「好き」と喋っている人に「嫌い」との字幕を被せたわけではありません。細かい話ですが、指摘しておきます。
フジテレビは映像による検証を拒否
このお詫び内容を読んだ視聴者の人はこう思ったはずです。「じゃあその喋っている映像を出してくれ」。
けれどフジテレビ広報部は韓国メディア国民日報の「インタビュー元の映像を見せて欲しい」との電話取材に対して、映像を提供することを拒否したとの報道があります。
お詫びとともに該当箇所のインタビュー映像が公開されていれば、編集ミスかどうか確かめることができました。しかし、公開されていないため本当に別のインタビューでそう喋っていたのかどうかわかりません。
BPOでの討議後、フジテレビは正しい映像で再放送
そのためBPOに対して字幕捏造問題の検証・究明を求める署名が立ち上げられ、「字幕スーパーと実際にしゃべっている内容が違う」との批判も多数寄せられました。
こうした抗議活動を受けてか、BPOは「韓国人へのインタビューの翻訳が間違っていたフジテレビの日韓問題番組『池上彰 緊急スペシャル!』」との題で討議を2回行っています(第95回、第96回)。
その結果、「フジテレビから提出された報告書はわかりやすいものの、視聴者への説明責任が十分に果たされているとは言えない」と判断され、最終的にフジテレビは報告書を一般向けに公開。さらに正しい映像での再放送も2015年8月29日に行われました。
つまり字幕が捏造されたのではなく、公開する映像の部分を間違えた編集ミスが原因だったことが明らかになりました。
修正された再放送のことは伝わっていない
ただ、調べてわかったのはこの修正映像が再放送されたことはほぼ伝わっていないということです。
記事冒頭で取り上げたツイートの投稿者は「嘘の字幕をつけられた」と思い続けているため投稿したのでしょうし(それだけショックだったのだと思いますが)、それを見て怒っている人も「使用する映像の部分が間違っていた」、「正しい映像で再放送された」という情報までたどりつけた人はどれだけいるでしょうか。
再放送のことが伝わっていないために多くの人が怒りのツイートに共感し、さらに怒るという悲しい状況になっています。
この多くの怒りを招いた原因はフジテレビのミスです。ただ、映像にミスはあったものの実際にそのように答えていたことは事実だったとBPOの調査でわかりました。ミスに対して怒ることはあっても、字幕の捏造や嫌韓を煽っていると怒る必要はもうないと思うのです。