オミクロン株対応ワクチンについて 現時点で分かっていること
オミクロン株対応ワクチンの接種が始まって2ヶ月が経ち、現実世界における有効性や新たな変異株への効果も報告されてきました。
オミクロン株対応ワクチンの現時点で分かっていることについてまとめました。
オミクロン株対応ワクチンとは?
新型コロナウイルスはスパイク蛋白というウイルス表面のトゲトゲの部分が、ヒトの細胞表面のACE2受容体に接着することで細胞内に侵入します。
つまり、スパイク蛋白は感染するための「鍵」の役割を果たしており、ACE2受容体は「鍵穴」になっているわけです。
新型コロナウイルスのmRNAワクチンは、この「鍵」となるスパイク蛋白を標的としたワクチンであり、「鍵」の設計図を持ったmRNAが細胞内で「カギ」を作り出します。ヒトの免疫は、この作り出された「鍵」に対して免疫を作ることで、次にウイルスが侵入してきた際にウイルスの鍵が鍵穴にくっつく前にウイルスを捉えることができるようになります。これにより、新型コロナウイルスの感染や重症化を防いでいました。
しかし、オミクロン株はこれまでの新型コロナウイルスからスパイク蛋白が大きく変異しているため、「鍵」の形が大きく変わってしまったことで、従来のmRNAワクチンによって得られた「鍵」に対する免疫は、オミクロン株のスパイク蛋白を鍵として上手く認識できなくなってしまっています。
このため、従来のmRNAワクチンではオミクロン株による感染・発症を防ぐことが難しくなっていました(一方、重症化を防ぐ効果はオミクロン株に対しても保たれています)。
オミクロン株対応ワクチンは、野生株とオミクロン株の両方のスパイク蛋白の設計図を持ったmRNAを接種することで、野生株とオミクロン株のそれぞれの鍵に対して免疫が作られることが期待されます。
令和4年10月現在、野生株とオミクロン株BA.1の2価ワクチン、そして野生株とオミクロン株BA.5に対応した2価ワクチンが接種可能となっています。
BA.1とBA.5は同じオミクロン株であり、この2種類のオミクロン株対応ワクチンの違いは、従来ワクチンとそれぞれのオミクロン株対応ワクチンとの違いほど大きなものではないと考えられます。
このため厚生労働省は対応するオミクロン株の種類にかかわらず、その時点で接種可能なオミクロン株対応2価ワクチンの接種を推奨しています。
オミクロン株対応ワクチンの効果は?
オミクロン株対応ワクチンは、従来のmRNAワクチンと比較してオミクロン株に対する中和抗体が高くなると報告されています。
中和抗体は概ね感染・発症予防効果と相関すると考えられていることから、オミクロン株対応ワクチンは従来のmRNAワクチンよりも感染・発症を防ぐことができると期待されていました。
先日アメリカのCDCがオミクロン株BA.5対応ワクチンの現実世界における有効性についての解析結果を発表しました。
36万人を対象としたこの研究では、2回以上従来型ワクチンを接種した人では、すべての世代において、オミクロン株BA.5対応ワクチンの追加接種によって発症予防効果が高くなったとのことです。
従来型ワクチンを最後に接種したのが2-3ヶ月の人では相対的な発症予防効果(オミクロン株対応ワクチンを接種していない場合と比べた効果)は約30%でしたが、最後の接種から8ヶ月以上経っている人では約50%と高い効果が認められています。
このことからは、従来のmRNAワクチンを接種してから時間が経っている人は、特にオミクロン株対応ワクチンを接種する意義が高いと言えます。
オミクロン株対応ワクチンは新たな変異株にも有効?
オミクロン株対応ワクチンは野生株とBA.1またはBA.5を標的としたワクチンです。
しかし、すでに日本国内でも新たな変異株が徐々に広がろうとしています。
例えば東京都でも、BQ.1系統などが少しずつ増えてきています。
オミクロン株対応ワクチンは、これらの新たな変異株に対しても有効なのでしょうか?
前述のアメリカにおける現実世界での研究は2022年9月から11月に実施されており、後半はBQ.1系統や他の変異株が広がり始めた時期に行われていますが、この後半部分のオミクロン株BA.5対応ワクチンの有効性についても大きな変わりはなかったとのことです。
また試験管内の研究では、オミクロン株BA.5対応ワクチンを接種した場合、従来のワクチンよりもBQ.1やXBB、BA.2.75.2といった新たな変異株に対する中和抗体も上昇したと報告されています。
これらの結果からは、今後日本国内で主流になりそうな他の変異株に対してもオミクロン株対応ワクチンはある程度効果が期待できると考えられます。
オミクロン株対応ワクチンの副反応は?
モデルナ社、ファイザー社のオミクロン株対応ワクチンの副反応についてもデータが発表されています。
従来のmRNAワクチンと同様に、接種部位の痛み、腫れ、発赤、全身症状としてのだるさ、頭痛、筋肉痛、関節痛、寒気、発熱などの症状が報告されています。
アメリカでは21万人のオミクロン株対応ワクチン接種者のデータが報告されていますが、現時点では従来のmRNAワクチンを上回る副反応ではないと考えられます。
なお、接種人数が十分ではないことから現時点では心筋炎など稀な副反応の頻度についてはまだ分かっていません。
オミクロン株対応ワクチンの接種対象者は?
日本国内では、初回接種(1,2回目)が完了した12歳以上の方のうち、最後の接種から3ヶ月以上経っている方がオミクロン株対応ワクチンの接種対象者となっています。
現時点では、追加接種としてオミクロン株対応ワクチンを接種した際のデータしか得られていないため、初回接種としてオミクロン株対応ワクチンを接種することはできません。
年末年始に向けて、忘年会やクリスマスパーティー、新年会など人が集まるイベントが増えてきます。
安全に年末年始を過ごすためにも、ぜひワクチン接種をご検討ください。