日本のアニメがフランス観光キャンペーンの切り札に
ふらんすへ行きたしと思えどもふらんすはあまりに遠し…
と、詠んだのは萩原朔太郎。大正時代の詩だそうですから、今から100年近くも前のことです。
コロナ禍で海外旅行を控えるようになってから2年以上が経ち、旅慣れていた方にとってもこの言葉が実感を持って響いていたのではないでしょうか?
けれどもここにきて、日本とヨーロッパの往来が復活してきています。まだまだ心配はあるものの、前向きにウイズコロナ時代に適応していこうという風潮がよりグローバルになってきていることを、パリの巷の賑わいから見て取れます。
世界有数の観光大国フランスは、日本人にとっても魅力的な旅のデスティネーションです。毎年フランス観光開発機構では、日本人向けの力の入った観光キャンペーンを繰り広げてきましたが、今年2022年のそれは、今までとはひと味違います。7月21日からスタートしたキャンペーンは、日本のアニメでフランスを紹介するという画期的なものです。
「あなたのフランスはどんなところ?」をテーマにしたオリジナルアニメーション動画は「studio daisy」という会社が制作したもので、フランスの名所を、女子旅、夫婦旅、母娘三世代旅というそれぞれのスタイルで巡る様子がオムニバスで展開します。
フランスというと、どうしても「おフランス」といったような少々お高くとまっているイメージがあるかもしれませんが、この動画にはそうした雰囲気よりもむしろ、爽やかで親しみやすい空気が流れている感じです。
フランス初体験のティーンエイジャーも、熟年リピーターも、さまざまな背景をもつ人達が自分らしく旅をする。全編を通して画面に透明感があって光をはらんだ印象ですが、それもそのはず。制作にあたっては、フランスの印象派絵画を意識したのだそうです。
さて、アニメ動画で観光キャンペーンというこのアイディアの主は、フレデリック・マゼンクさん。フランス観光開発機構の在日代表です。
これまで20年以上にわたってキャンペーン企画に携わってきた彼ですが、コロナ禍で日本からフランスへの観光客がほぼゼロになったばかりか、スタッフが現地に出向いて何かを制作することができないという苦境に立ち向かうことになりました。
そこで思いついたのがアニメ。アニメは日本人にとって親しみ深いものですし、優秀な日本のスタッフが日本で制作できるという強みもあります。
「私自身、アニメが大好きです」というフレデリックさん。1973年にフランスのミディピレネー地方で生まれ、パリ政治学院で政治学修士号を取得したそうですから、エリート中のエリートですが、聞けば、幼少期には毎週火曜18時に放映されていた「ゴールドラック」(日本の原題は「グレンダイザー」)を楽しみにしていたそうです。
他にも、「キャンディ・キャンディ」「家なき子」、さらに中学時代には次のような日本のアニメに親しんできたのだとか。
Olivier et Tom (キャプテン翼)
Robotech (マクロス)
Ken, le survivant(北斗の拳)
Dragon Ball(ドラゴンボール)
Nicky Larson (シティハンター)
Catz Eyes(キャッツアイ)
Les Chevalier du Zodiaque (聖闘士星矢)
Ranma 1/2(らんま1/2)
Juliette Je t’aime (めぞん一刻)
Judo Boy (紅三四郎)
※欧文はフランスでのタイトルで、カッコ内が原題
以前、「ゴールドラック」の記念切手と展覧会が大人気になり、日本のアニメに親しんできた世代が今、フランスの社会の要になっているということをご紹介しましたが、フレデリックさんもまさにそのひとりなのです。
さて、このキャンペーンでは、12の質問に答えると、フランスでのぴったりの旅先を提案してくれるという「診断ゲーム」があります。そして、アンケートに答えた人の中から抽選で2名1組にフランスへの往復航空券が当たるというビッグなプレゼントも用意されています。
フランス旅、そろそろ考えてみようか、という気分になってきませんか?
たくさんの日本人が再び訪れるようになることに、フランスの人たちはとても好意的。早く実現するといいですね。