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報徳に続いて智弁和歌山も負けた! 波乱続きだった初戦が終わる 優勝争いを左右するのはこの試合だ!

森本栄浩毎日放送アナウンサー
報徳が大社に競り負け、智弁和歌山もタイブレーク負け。波乱続出だった(筆者撮影)

 夏の甲子園は7日目の13日に、49代表校が初戦を終えた。センバツで2年連続準優勝し、今大会も前評判が高かった報徳学園(兵庫)が、32年ぶり出場の大社(島根)に1-3で敗れたほか、2回戦から登場の智弁和歌山が甲子園未勝利の霞ケ浦(茨城)にタイブレークの末、4-5で敗退。また関東の有力校である花咲徳栄(埼玉)も、初出場の新潟産大付に1-2で惜敗するなど、初戦は波乱が相次いだ。

練習試合でも引き分けていた報徳と大社

 抽選が終わったあと、報徳の大角健二監督(44)と話す機会があった。大社については、5月に練習試合をしていて、1-1で引き分けたと言う。「左のピッチャーを打てなくて、むちゃくちゃ足の速い子がいた」と、かなり警戒していたが、調整期間である5月の試合であり、甲子園経験の差は歴然としている。報徳ほどの名門なら、むしろこの苦戦を教訓にして、しっかり対応するだろうと見ていた。センバツで課題だった得点力も夏に向けて上がっていて、投手力にも不安がないことから、報徳の優位は動かないと多くのファンも思っていただろう。

大社ペースで報徳の反撃が遅れる

 しかし試合は、大角監督の警戒していた通り、大社のペースに引きずり込まれた。初回から足を使って報徳の守備陣を混乱させ、失策絡みで2点を奪う。5月に報徳を抑えていたエースの馬庭優太(3年)も抜群の制球力でコーナーに投げ分け、決定打を許さなかった。7回にも、報徳のエース・今朝丸裕喜(3年)から加点した大社は、馬庭が9回の報徳の猛追を1点でしのぎ、3-1で逃げ切った。大角監督は、「外の真っすぐをしっかり投げ切られた。完敗」と、潔く敗戦を受け入れた。9回裏は疲れの見える馬庭を攻めて3安打を集めたが、走者がオーバーランしての幕切れで、「逆転の報徳」の本領は発揮できなかった。

新潟産大付は見事な継投で徳栄を破る

 徳栄は、1-2のスコアながら、相手の鮮やかな投手継投と、しぶとい打撃に苦しんだ。最速148キロを誇るエース・上原堆我(3年)は、5回まで5安打を許したが、1点のリードを守る。しかし6回に追いつかれると、その裏から救援した新潟産大付の田中拓朗(3年)が徳栄の中軸を抑え、終盤の1点勝負の様相となった。そして7回、上原は2死3塁から相手4番の多田大樹(3年)に打たれ、勝ち越しを許す。田中は低めに球を集め、7回以降は無安打に徳栄を抑え、新潟勢令和初勝利に導いた。2得点ながら上原から11安打した打線と、見事な投手継投で優勝経験校を堂々と打ち破った試合内容は、とても初出場とは思えない。

小松大谷や新潟産大付は強豪連破で甲子園へ

 4年連続出場の明豊(大分)に8-4で打ち勝った小松大谷(石川)は、3度目の挑戦で甲子園初勝利となったが、石川大会では、センバツ出場の日本航空石川、星稜を連破していて、先述の新潟産大付も、新潟明訓、日本文理、中越という甲子園経験校を破っている。名の通ったチームに比べると過小評価されがちだが、県大会での実績は正直だ。複数の強豪を倒して甲子園に出てきたチームが、弱いはずがない。初勝利で得た自信と勢いで、次戦以降にも期待が持てる。

智弁和歌山は終盤に追いつくも勝ち切れず

 7日目にも大波乱が待っていた。智弁和歌山は、霞ケ浦の軟投派左腕・市村才樹(2年)の「超遅球」に幻惑され、終盤まで無得点に抑えられた。しかし、3点ビハインドで迎えた8回裏、2死から失策をきっかけに、途中出場の高桑京士郎(3年)が2ランを放つと、続く4番・花田悠月(3年)の同点本塁打も飛び出し、息を吹き返した。これで一気に逆転かと思われたが、霞ケ浦は救援した右腕の真仲唯歩(3年)が踏ん張り、決着は延長タイブレークに持ち込まれた。

10回で決められず、2年生エースが力尽く

 お互い好打順だった10回は霞ケ浦が強攻策、智弁和歌山はバント失敗の無得点で11回にもつれ込んだ。智弁和歌山は6回から救援で力投していたエース・渡辺颯人(2年)が、不運な内野安打などで2点を失って力尽き、その裏の反撃も1点届かず、まさかの初戦敗退となった。智弁和歌山は3年前の全国制覇のあと、センバツも含めて出場3大会連続の初戦敗退となった。市村の投球にかわされ続けて、終盤まで相手ペースだったのが誤算とはいえ、追いつき方がいかにも智弁和歌山らしかったこと。タイブレークも有利な後攻だったことから、霞ケ浦の土壇場での踏ん張りが見事だったと言うしかない。優勝候補からもぎ取った甲子園初勝利に拍手!

広陵と東海大相模の対戦が優勝争いを左右か

 さて大会は、6日目の12日から2回戦に入り、ここを突破すればベスト16となる。広陵(広島)は熊本工との名門対決を2-1で制し、出場6大会連続の初戦突破。打線の援護が少なく、9回にはあわや逆転のピンチを背負ったが、キャリア十分のエース・高尾響(3年)が連続三振で逃げ切った。この広陵と3回戦で当たるのが、富山商に4-0で快勝した東海大相模(神奈川)。昨夏も、同じ3回戦で同じ神奈川代表の慶応と当たり、タイブレークで敗れた。この広陵-相模が、今大会の優勝争いを左右すると見ている。

大型左腕とキャリア十分、両校の投手起用に注目

 注目は両校の投手起用だ。相模のエースは198センチの大型左腕・藤田琉生(3年)で、富山商戦では7回3安打無失点。13奪三振の力投だった。救援した右腕の福田拓翔(2年)も、2回を1安打無失点で3三振を奪い、実力の片りんを発揮している。一方の広陵は、中井哲之監督(62)が「他の投手も成長している」と話すが、4大会連続で甲子園を経験している大黒柱の高尾以外の投手を、振りの鋭い相模の強力打線にぶつけられるか。打線では相模の4番・金本貫汰(2年)、広陵の1番・濱本遥大(3年)が目立っていた。3点までの勝負なら広陵、それ以上の得点なら相模に分がありそうだ。

健大高崎や大阪桐蔭の2回戦も注目

 1回戦勝者同士の2回戦では、センバツ優勝の健大高崎(群馬)が智弁学園(奈良)と。また大阪桐蔭は、初勝利で意気上がる小松大谷と当たる。好調の近畿勢がどんな戦いぶりを見せるか。また中京大中京(愛知)と神村学園(鹿児島)も好カードで、久しぶりの甲子園勝利となった掛川西(静岡)は、岡山学芸館との対戦。また報徳に勝った大社は創成館(長崎)と当たり、上位進出を狙う。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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