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【福山市】「車いすでダンスしたい」小学生の夢を叶える車いすダンスワークショップが開催されました

山口ちゆきライター(福山市)

宇田百花(うだ ももか)さんは、身体を動かすのが大好きな小学5年生です。他の子と少し違うのは、車いすを使っていること。

「ダンスをしてみたい!だけど、車いすでダンスができるのかな?」

という百花さんに「できるよ!車いすでダンスをしている友達がいるよ」と答えたのは、ゴミ拾いの活動を通して知り合った藤井佳奈(ふじい かな)さんです。

百花さんの夢を叶えるため、大阪で活動する車いすダンスユニット「Flavary(フレイバリー)」のMIHOさんとASUKAさんが、福山に来てくれました。

2024年6月15日、緑丘小学校の体育館で開催された車いすダンスワークショップのようすをお伝えします!

この日、緑丘小学校の体育館に集まった人はおよそ150人。車いすの人もそうでない人も、大人も子どももいます。体育館には十数台の車いすが用意されていました。車いすを使ったことがない人にも、体験してもらう試みです。

スタッフとしても活躍する宇田百花さん(中央)
スタッフとしても活躍する宇田百花さん(中央)

はじめに、百花さんから車いすの使い方の説明がありました。

「自走用の車いすにはブレーキがついていますが、競技用の車いすにはブレーキがありません。乗り降りするときには、近くの人に『支えてください』など声をかけてください」

百花さんの夢の実現のためにワークショップを企画した藤井佳奈さん
百花さんの夢の実現のためにワークショップを企画した藤井佳奈さん

佳奈さんの案内で、フレイバリーの2人が登場しました。

MIHOさんは3歳から車いすを使い、18歳で車いすダンスを始めました。車いすダンスの大会では何度も優勝している、実力派ダンサーです。

ペアを組むASUKAさんはダンサー兼理学療法士。車いすの機動性を生かした、車いすを使うからできるダンスを、MIHOさんと一緒に創っています。

フレイバリーのMIHOさん(左)とASUKAさん(右)
フレイバリーのMIHOさん(左)とASUKAさん(右)

はじめに、車いすダンスとはどのようなものかを皆さんに知ってもらうため、2人がパフォーマンスを見せてくれました。

筆者も初めて目にした車いすダンスに目を奪われます。

1曲終わると、会場から大きな拍手が沸き起こりました。

さあ、いよいよワークショップ開始です。最初に、車いすの人と立っている人でペアを作ります。

「車いすを用意していますので、乗ってみたいなという人は挑戦してください!」

おずおずと車いすに乗ってみる参加者たち。初めての操作に戸惑う声も、あちこちから聞こえてきました。

「今日のワークショップでは、このダンスをしてもらいます!」

2人が踊ると、会場が「えっ?」とざわつきました。

MIHOさんが、すかさず伝えます。

「こんなダンスなんかできないよ!と思ったかもしれませんが、大丈夫。ワークショップが終わる頃には不思議とできるようになるんです。フレイバリーの魔法をかけます!」

不安そうだった皆さんの顔が、明るくなりました。これもフレイバリーの魔法でしょうか。

ストレッチで身体をほぐしてから、一つひとつの動きを練習します。

はじめは緊張していた皆さんの顔が、次第に笑顔に変わっていきます。

今までダンスをしたことがない人も、身体を動かすことの楽しさを感じているようです。

休憩中、百花さんのお友達に話を聞きました。

「百花さんは普段こんなふうに車いすを使っているんだな、とわかりました。百花さんはとても優しい人。一緒にダンスできてうれしいです」

また、交代しながら車いすを使っていた女性2人は

「ダンスどころか、車いすが思うように動かせるようになるまでが大変でした!」

「でも、楽しいです」

と話してくれました。

難しい振り付けもありますが、カッコよく踊りたいと、練習に熱が入ります。

皆さんの動きがスムーズになってきました。では、1曲通して踊ってみましょう!

本当にフレイバリーの魔法がかかりました。皆さんが踊っています。

笑顔、笑顔、笑顔です。

踊り終わると皆さんがお互いに、大きな拍手を送りました。

百花さんの進行で、ワークショップを振り返ります。

「車いすでダンスをしたい、という夢が叶ってとてもうれしいです。お2人が車いすダンスを始めたきっかけはなんですか」(百花さん)

「車いすダンスに出会うまでの私には、他の人よりも得意なことがありませんでした。車いすダンスを知り、ダンスを私の得意なことにできたらいいなと思って始めました」(MIHOさん)

「理学療法士の仕事では、健常者と障害者が支援する側とされる側としてしか、かかわれないことに違和感を覚えました。車いすダンスなら誰もが一緒に踊れます。そこに魅力を感じて、始めました」(ASUKAさん)

「今日は福山でフレイバリーのワークショップがあると聞いて、大阪からきました。フレイバリーの魔法にかかって踊るのが楽しいんです。今後もどんどん参加させてもらおうと思っています」(大阪在住の車いすユーザー)

最後にフレイバリーの2人が別の衣装で登場し、再びダンスを見せてくれました。

圧巻のパフォーマンスに、拍手はしばらくの間、鳴り止みませんでした。

福山市で初めて開催された、車いすダンスのワークショップ。

フレイバリーの2人にとっても、大阪以外で行う初めてのワークショップでした。

車いすのイメージが、ダンスで変わればいいなと思っています。車いすダンスは、4歳くらいの子どもから高齢者まで、幅広い世代の誰もが安全に楽しめるスポーツです。車いすのかっこよさというか、こんなにリズムに乗ってこんなにいろいろなことができるんだ、と伝わればうれしいですね」(MIHOさん)

「車いすダンスでは、どちらかがどちらかに合わせるわけではありません。躍らせてあげるのでも、引き立てるのでもない。車いすの人と立っている人の2人がいるから、こういう形で楽しめるんですね。ダンスであり、人間関係そのものでもあるなと感じます」(ASUKAさん)

今回のワークショップは、佳奈さんの呼びかけに緑丘学区まちづくり推進委員会が協力して実現しました。委員長の柏原さんたちは、チラシを貼ったり回覧板で開催を案内したりと準備を進めました。

「初めてのことなので、どうなるのかわかりませんでしたが、およそ150人もの皆さんに来ていただき、うれしい悲鳴を上げました。できればまた、開催したいですね

誰でも楽しめるスポーツである車いすダンスの輪が、広がっていくことを願っています!

詳細情報
開催された日時:2024年6月15日(土) 13:30~16:00
開催された場所:福山市緑丘小学校 体育館
開催された住所:福山市春日町5-15-1
URL:緑丘交流館

ライター(福山市)

地域コミュニティWebメディア「備後とことこ」などで活動するフリーランスライターです。男子2人の母。グルメ・観光・福祉など、幅広いジャンルの情報をお届けします。

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