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Billyrrom、LIQUIDROOMワンマン公演で魅せた圧巻のトーキョー・トランジション・ソウル

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
photo by Hayato Niiya

フェスやライブハウスに人が戻りはじめ、ダンサブルなライブバンドに注目が集まっている。そんな、来るべき2024年の音楽シーンに向けて新しい才能を紹介したい。

ロックを経由したソウルフルなファンクネスを奏でる6人組バンド、Billyrrom(ビリーロム)だ。初のワンマンツアー千秋楽公演のライブレポとともに、バンドの魅力を紐解いていこう。謎めいたバンド名の由来は、敬愛するビル・エヴァンスが持つ“流されないマインド”と、移動型民族であるジプシーのロマ族による“自分たちの音楽を様々な場所から発信していく”という流動性を大切にしたいという信念から名付けられたという。

●ソールドアウトした、恵比寿LIQUIDROOM超満員の会場

東京ライブハウス・シーンに地殻変動が起きつつある。キーとなるバンドがBillyrromだ。2023年、ライブハウスシーンで最も飛躍した音楽集団であり、初のワンマンツアー『Billyrrom First One-Man Tour“noidleap”』千秋楽公演を、11月2日、恵比寿LIQUIDROOMで行った。

配信シングルは、Spotify『RADAR: Early Noise』、『Tokyo Rising』、『キラキラポップ:ジャパン』など、軒並み人気プレイリストにリストイン。ミュージックビデオも4作品連続で100万再生を突破中。J-WAVE『SONAR MUSIC』内のレギュラーコーナー「SONAR'S ROOM」への出演も好評だ。

現在23歳のメンバーは、Mol(ボーカル・ギター)、Rin(ギター)、Taiseiwatabiki(ベース)、Shunsuke(ドラム)、Leno(キーボード)、Yuta Hara(DJ・VJ・MPC)による6人。それぞれ、マイケル・ジャクソン、山下達郎、ジャミロクワイ、レディオヘッド、RIP SLYMEなど様々なジャンルの音楽や、芸術家である岡本太郎、そしてジョージ・オーウェル、攻殻機動隊などのSFカルチャーを敬愛する、幅広いルーツを持つメンバーによって、次世代ポップミュージックを創出する。

photo by Hayato Niiya
photo by Hayato Niiya

本格始動から2年。たどり着いた、夢のひとつであったLIQUIDROOMワンマン公演。ソールドアウトした超満員の会場。開演前から、フロアは期待に満ち溢れた熱気に包まれていた。

●赤いレーザー光線が左右から投影されフロア上空で交差するインパクト

オープニングSEは、ノイズまみれの通信メッセージ。エレクトロな信号音からはじまる「Mayday」からスタート。救難信号の意味を持つ曲タイトルとシンクロするレッドアラートのような照明。さらに、赤いレーザー光線が左右から投影されフロア上空で交差するインパクト。一気にフロアにエモーショナルな衝動がほとばしる。

ボーカリストMolが、「Billyrromです。よく来たね、こんなにいっぱい。みんなで楽しんじゃおうぜ!」と、ファーストコンタクト。イントロからフロアが沸いた「Danceless Island」をプレイ。Billyrromの1st配信シングルであり、抑え込まれた感情を解放するキラーチューンだ。

「調子はどうですか? いくぞ!」と、Molが語りかけテレキャスを持ち、最初期チューン「Control」へと続く。骨太なビートにフロアが湧き立ち、中盤にはShunsukeによるドラムソロからはじまった、メンバーのソロプレイのまわしに盛り上がるオーディエンス。

その後MCでは、「楽しいねえ。ツアーファイナルということで大阪、名古屋とまわってきました。今日はLIQUIDROOM、ソールドアウトです!」と、Mol。「言葉が出ないとは言いますが。本当に嬉しい限りです。みなさん来てくれてありがとうございます!」と、Rin。さらに、「一生の思い出に残る日にしませんか? あなたたちの記憶に残りたいです、僕たちは今日。だから協力してくれ!」と、Mol。あたたかな人間力が伝わってくるワンシーンだ。

今年の頭、彼らはZINE(※ミニ写真集)を作りライブハウスの現場で販売した。そのタイトルであり、本公演タイトルでもある大切なナンバーが「Noidleap」だ。“noid(妄想)”と“leap(飛躍)”の意を組み合わせた造語であり、自分の望む世界を実現し、拡張していくという意思の表れを表現するナンバーである。

●フックの強いダンサブルかつ踊れるキラーチューンが多い

ここで、Yuta Hara(DJ・VJ・MPC) によるDJ TIMEが展開。ワンマン公演ならではの、個性あふれる6名の特色を活かしたソロパートは見どころだ。DJプレイから、キーボードフレーズのイントロダクションへスムーズにチェンジ。曲に気がついたオーディエンスが声をあげながら「Time is Over」へ。

途中、Molが、オーディエンスにハンドクラップを求める。だんだんスピードを上げることを促し、会場のテンションは最高潮へ。ライブを支配する、Molの扇動力に驚かされた。

そして、世界観は一変してキーボーディストLenoによる静かなピアノソロ・パートへ。リスペクトする坂本龍一へ捧げる、「Merry Christmas Mr. Lawrence」のフレーズが心に染み渡る。

続いて、ソウルフルかつメロウにアーバンな、バンドの最初期チューン「Babel」へ。

Molが、「いいギターソロだね。ラスト2周が好きなんだよ」と語り、ギターのRinが、「初の大阪遠征は、ちょうど2年前で。まだスタッフもいなくて6人で割り勘して狭い同じ部屋に泊まって、最悪だった(苦笑)」と思い出を振り返る。Molがフロアを見渡しながら、「名古屋ではTAIKING(Suchmos)さんと対バンで一緒で。嬉しいけど、今日だけはメジャーリーグの大谷翔平さんばりに、憧れを捨てようと。でも、楽屋に行ったらTAIKINGさんがいて、メンバーでサイン下さいって行列になって(苦笑)。写真撮影も嬉しかった(笑)」と、場を和ませる。

MCタイムを終えて、Rinによるラップ歌唱がバンド新境地となった「Flower Garden」へ。たゆたうように心地よくビートを刻むグルーヴ。

勢いそのままに、メンバーそれぞれがSE的に音を重ね合わせながら、プログレッシブロックな展開をみせる未発表曲「SERENADE for Brahma」をプレイ。なお、本作は昨年の渋谷WWWでの初のワンマン公演で異なる構成だったが披露されていた未配信のレア曲だ。ノイジーかつロッキンなギタープレイが、サイケデリックかつドープな世界観を構築していく。Rinによるエモーショナルなギターソロでは、赤いレーザーが宙を舞い、カオティックな音像を作り上げていった。

ここまでで気がつくのは、Billyrromはフックの強いダンサブルかつ踊れるキラーチューンを多く揃えていることだ。さらに、バンドの演奏力によって、音楽性の豊かさへと深みを与えていく。そして鳴り響く、キャッチーなイントロダクションからはじまる四つ打ちチューン「Narrator」。

●初披露の新曲、口笛がフィーチュアされたポップチューン「Natural Sence」

ライブは終盤戦へ。

Molが、「今日、この日に至るまでにね。ありえない数の方々が応援してくださって。……まあ、この場を借りてHayato Niiyaを紹介させてください。僕らのファンが0人の頃からフォトグラファーをやってくれていて、アーティスト写真やライブ写真を毎回撮影してくれています。続いて、映像チームYUKIKAZE。僕たちのミュージックビデオまわり全般を担当してくれています。今日、映像監督の間宮光駿もいて。映像表現ならではの悩みもあって、俺らとよくケンカしたりもするんだけど、今日も無事にみんなで迎えられてよかった。これからも心強いチームとして一緒に頑張っていきたいです」と、初期から共にBillyrromのクリエイティブを生み出す仲間への感謝を告げた。

「何よりみんな! この景色は忘れられないね。心の底から感謝しています。ラストスパートいけるか? 初披露の新曲やります!」と、プレイされたのは口笛がフィーチュアされたダンサブルなポップチューン「Natural Sence」だ。まだリリース前ながら、スッとメロディーが入ってくる人懐っこいポップソングに心が湧き立つ。Billyrromの成長が垣間見える、ネクストステップへアップデートされた作品だ。

photo by Hayato Niiya
photo by Hayato Niiya

「ラストいけるか?」と、あらためてMolがシャウト。エモーショナルなメロディー、ギターカッティングが鋭い「Magnet」へ。Rinのエモーショナルなギターソロが熱い。フロア全員が手を挙げ、大きな盛り上がりをみせていく

本編ラストは、ファンクかつダンサブルなキラーチューン「Defunk」で跳ねる最高潮なフロア。「今日イチの盛り上がりを見せてくれ!」と、煽るMol。RinとLenoがギターとキーボードソロでツインリードする展開も胸アツだった。

●ロックを経由したソウルフルなファンクネス=“トーキョー・トランジション・ソウル”

アンコール後は、腹に響く低音メロディーを奏でるTaiseiwatabikiによるベースソロから人気チューン「Solotrip」へ。跳ねるビートが感情をアップリフトするソウルフルなナンバー。まさに、ラストスパートな盛り上がりだ。

ここで、Molがやり切ったという満足げな表情を浮かべながら、「今日はひとつの目標だったんですけど、俺たちはまだまだなんで。でも、この瞬間をみなさんと一緒に過ごせて嬉しいです。最後は、Billyrromにとっても、僕個人にとっても大事なナンバーを歌います」と、今日一日の喧騒を締めくくるバンド唯一のバラード曲「Eyes to the Mirror」を披露。ラスト、逆光のなかで歌うMolの歌声は涙ぐんでいた。ひとつの目標だったLIQUIDROOMワンマン公演という、スペシャルなステージから見渡す超満員のオーディエンスの風景。どんな心情だったのだろうか?

「心からありがとう。Billyrromでした」

メンバーがはけた後、ステージのスクリーンには、11月22日にリリースが決定したBillyrrom最新曲「Eclipse」のミュージックビデオの完成版が初公開された。石原さとみ出演によるすき家“月見すきやき牛丼”CMとしてバズった、あの曲だ。優しく揺蕩うように心を包み込むメロディーの美しさ。Billyrrom、新境地となる開かれたポップソングの誕生である。

バンド本格始動から2年。もちろん、細かなところを言えばまだまだ成長途中な段階だ。しかしながら、来たるべく新時代=照準とする2024年へ向けて。躍動するBillyrromが解き放つロックを経由したソウルフルなファンクネス=“トーキョー・トランジション・ソウル”なサウンドに期待したい。“トランジション”とは、ある段階から次の段階への移行を指し示すワードである。2023年 → 2024年へと飛躍するバンド、それがBillyrromだ。

Billyrrom オフィシャルサイト

https://billyrrom.com/

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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