Z世代の部下がやる気のないように見え、育ってくれるかが不安。であればまず最初にすべきこと
■「Z世代」だけが特別なのか?
アメリカ生まれの世代名称である「Z世代」は、一般的に1990年半ば〜2010生まれの世代のことを指します。
確かにその特徴として、「ソーシャルネイティブ」「知人・友人やインフルエンサーからの情報への信頼」「社会的意義重視」等々があるようです。
しかし、どれも彼らが生まれ育った環境から類推できるもので、彼らがほかの世代から見て、理解不能な独特の人たちとは思えません。
また、現代社会は全体的に多様化が進んでいるので、「Z世代」に限らず世代よりも個人差のほうが大きいでしょうから、まず目の前の人をきちんと観察してみてはどうでしょうか。
■「レッテル貼り」をするから嫌われる
と言うのも、もしご相談者が言うように「本人にやる気がない」のが本当ならば、世代論などによる「レッテル貼り」は、やる気をそぐひとつの原因になりうるからです。
当たり前のことですが、どんな人にも個性があり、それを大事にしています。なのに、自分のことをよく知りもしない人から、「お前たちはやっぱりこうだからな」と、十把一絡げに断定されたら気分がよいものではないでしょう。
人は自分と差異の大きい人たちの認識は解像度が低くなります(欧米人から見てアジア人がなんとなく全体的に似ているように見えるというようなもの)。しかし、そうされたほうは不快ですよね。
■難しいけれども「積極的判断保留」を行う
管理職ならば、これをなんとか避ける必要があります。ただ、人はどうしても目の前のことに意味づけをしたくなるもの。自分にとってよくわからない存在は不安を生むからです。
なので、なかなか難しいことではあるのですが、若手の部下が自分にとってどれだけ意味不明な行動をしても、できるだけ積極的に判断を保留してみてください。
世代論のようにわかりやすい(しかし、雑な)理論にすがって、自分の不安な気持ちを満たそうとすると、よい結果にはなりません。
マネジメントの基本は「ケース・バイ・ケース」です。「ほめたほうがいい」というのも誰にも当てはまるわけではありませんし、「どこをほめればうれしいのか」も人によって違うことでしょう。
このようにまずはレッテル貼りの誘惑から逃れて、目の前の若手を一人の個性的な人として観察し、特徴を捉えることから始めてはどうでしょうか。
■受容されてから、育つ準備ができる
人事の世界では新しく加わったメンバーが、組織から求められる役割や知識、規範、価値観などを獲得して、適応していくプロセスのことを「組織社会化」といいます。
そのプロセスがうまくいくうえで新メンバーが「組織に役に立つ人になろう」と思う必要があり、その前提として「自分はこの組織に受け入れられた」と本人が受容感を持つことが条件となります。
確かに、自分が受容されてもいない組織のために、わざわざ求められる能力を身につける努力をしようとなんて思いにくいでしょう。
受容されたからこそ、好意の返報性(好かれると好きになるという心の性質)から、自分も組織のためになることをしよう、つまり「育たねば」と思うわけです。
■「受容」とは「わかってもらえる」こと
そしてこの「受容」される、つまり、組織に受け容れてもらうということは、勝手な価値判断を経ずにありのままの自分をわかってもらえたと本人が感じることが大切です。
昔、リクルートで採用担当をしていたときに、入社を決めてくれた人の多くがその理由を「この会社が自分のことを一番よくわかってくれたから」と言っていたのを思い出します。
そして、ある人は「自分のことをすごいと言ってくれた会社よりも、ダメな部分も含めてありのままの自分を認めてくれたことがうれしかった」とも言っていました。私自身もそんな気持ちで会社を選んできた気がします。
そう考えると、若手が「やる気があるのかどうかわからない」ではダメかもしれません。
■まずは自分から自己開示を始めましょう
このままだと、ご相談者の心配されるように、若手はいつまでも受容感が生まれず、育つ準備ができないままかもしれません。
ですから、まずはとにかく彼らのことをたくさん知ることに努めるべきでしょう。まずは上司である自分から彼らに自己開示を行い(最初はうざがられるかもしれませんが)、「この人には自分をさらけ出してもよいかもしれない」と思ってもらうことからスタートです。
そして、信頼関係が生まれ、心を開き、受容感を得た人は、Z世代であろうとなかろうと、「じゃあ、この場所で役に立つように頑張ってみよう」と思うのではないでしょうか。
※OCEANSにて人と組織に関する連載をしています。こちらもよろしくお願いします。