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トキエア 新潟-仙台就航は本当か?

鳥塚亮大井川鐵道代表取締役社長。前えちごトキめき鉄道社長
今年1月に新潟-札幌(丘珠)線を就航させたばかりのトキエア 筆者撮影

新潟空港を拠点とする新しい航空会社「トキエア」が、今年1月31日に新潟空港から札幌市内の丘珠空港までの定期便を就航させました。

雪国を結ぶ路線の冬期の就航ということで、なかなか厳しい船出のようですが、そのトキエアが次の路線として新潟-仙台間を4月26日に就航させるというニュースが流れています。

この間札幌線を飛ばし始めたのに、もう次の路線?

本当かなあ?

筆者はそう思ってトキエアのWEBサイトを確認すると次のような表示がありました。

どうやらマスコミで報じられていることは、会社からの正式発表ではないようです。

でも、会社のWEBサイトでは仙台も就航予定路線となっていますから、おそらく情報がどこからかリークされたのでしょう。

会社の正式発表は航空局や空港の許可、そして航空券の販売システムなどすべての準備が整ってからになるのが通常ですから、その発表を前にこういう情報が出るということは、それだけトキエアという会社に対して地域の期待感が高いということだと筆者は考えます。

長谷川社長にお聞きした

実は筆者はトキエアの長谷川政樹社長とは以前から懇意にさせていただいていて、就航に当たっての事業展開などを以前にお聞きしていたのですが、その時に長谷川社長は新潟-仙台路線の可能性について大きなものがあるとおっしゃっていました。

東京や大阪の方々から見ると、新潟と仙台という地方都市間を結ぶようないわゆるローカル航空路線にどれだけの可能性があるのかを疑問視される方も多いと思いますが、仙台市の人口は約110万人、新潟市は約78万人ですから、この2大都市間にはそれなりの需要があると思われます。

金沢市の人口が約45万人、富山市が約40万人、今度北陸新幹線が延伸した福井市が約25万人ですから、人口約78万人の新潟市が日本海側の県庁所在地でどれだけ大きいかがご理解いただけると思います。

事実、新潟-仙台間を運行する高速バスはコロナ前までは夜行便を含めて1日8往復走っていました(現在は4往復)から都市間バスをみても需要があることがわかります。

長谷川社長はこの辺りに大きな可能性があると考えられていて、トキエアとしてこのような地方都市間の航空輸送を開拓していくお考えのようです。

昭和の時代はどうだったのか?

新潟-仙台間の需要を予測するために、昭和の時代の輸送を見てみました。

筆者所蔵の昭和53年(1978年)の交通公社の時刻表です。

新潟県の坂町と山形県の米沢を結ぶ米坂線のページですが、新潟と仙台を結ぶ急行「あさひ」という列車が1日2本設定されています。例えば急行「あさひ1号」は7:19に新潟を出て、坂町から米坂線に入り、奥羽本線、仙山線を経由して仙台に12:30に到着しています。所要時間は5時間11分で、指定席を連結する編成だったことがわかります。

この急行「あさひ」が上り下りそれぞれ2本の2往復体制で走っていたということは、新潟-仙台間を日帰りする需要があったということになります。

昭和53年と言えばまだ東北・上越新幹線もなく、高速道路の整備も進んでいなかった時代でしたが、当時から新潟-仙台間という地方都市同士の需要があったことがわかります。

こちらは同じ時刻表の巻末にある航空時刻の欄になりますが、驚いたことに新潟と仙台を結ぶ航空路線が存在していました。

1日1往復ですが、全日空が新潟-仙台間を40分で結んでいたことがわかります。

使用していた機種はボーイング737。当時の737は120席ほどの機体でした。同じ全日空にはもっと小型のYS-11という60席級の機体もありましたが、あえて120席級の機体を使っていたということはYS-11では対応しきれない需要があったことになります。

現在の新潟-仙台間の需要はどうか

きみまろ風に言うと「あれから40年!」ということになりますが、現在の新潟-仙台間の需要はどうかというと、高速バスで4時間半ほど。または上越新幹線と東北新幹線を大宮で乗り継いで約3時間です。

昭和の時代の米坂線経由のような列車は走っておりません。

高速バスは片道5000円程度ですが、新幹線となると大宮乗り継ぎでかなり遠回りになりますので乗車券と特急券で片道2万円ほどかかります。

こういう区間にトキエアが1万円程度の金額で40~50分の所要時間で新規に就航するとすれば、勝算はあるのではないでしょうか。

トキエアの所有する飛行機は70席級ですし、昭和の時代と違って、国民は飛行機という乗り物に抵抗がかなり少なくなっていますから、ビジネスマンの出張などであれば十分に満席になる需要は見込めると思います。

大手航空会社に比べると小型の機体で、燃料消費も少なく、運航経費も低いトキエアが、そういう隙間のような路線を開拓していくことは決して無謀なことではなく、しっかりとした戦略があることを筆者は感じます。

いずれ近いうちにトキエアから正式発表があると思いますが、新潟-札幌線に続く第2路線の新潟-仙台線にも大きな期待を込めて注目していきたいと考えます。

【NST新潟総合テレビ】トキエア 新潟ー札幌丘珠線を週5日運航へ 仙台線は4月26日目指し調整続く

大井川鐵道代表取締役社長。前えちごトキめき鉄道社長

1960年生まれ東京都出身。元ブリティッシュエアウエイズ旅客運航部長。2009年に公募で千葉県のいすみ鉄道代表取締役社長に就任。ムーミン列車、昭和の国鉄形ディーゼルカー、訓練費用自己負担による自社養成乗務員運転士の募集、レストラン列車などをプロデュースし、いすみ鉄道を一躍全国区にし、地方創生に貢献。2019年9月、新潟県の第3セクターえちごトキめき鉄道社長、2024年6月、大井川鐵道社長。NPO法人「おいしいローカル線をつくる会」顧問。地元の鉄道を上手に使って観光客を呼び込むなど、地域の皆様方とともに地域全体が浮上する取り組みを進めています。

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