喫茶店「コメダ珈琲店」のファン交流サイトがオープン! 業界トップの新しい“常連づくり”の形とは?
一週間で7000人以上が登録。コメント参加も活発
名古屋発祥の喫茶店チェーン「コメダ珈琲店」(以下「コメダ」)が公式コミュニティサイト「さんかく屋根の下」を2020年3月31日にオープンしました。大手飲食店チェーンが既存のHPとは別に独立したファン専用サイトを開設するのは、業界でもあまり例のないユニークな試みです。
「マーケティングという観点ではなく、お客様との交流を通してコメダのことを知っていただき、親近感を感じていただきたいと思って作ったサイトです」と同社広報の清水大樹さん。
象徴的なのが「コメダ部トークルーム」。「モーニング食べた?」「シロノワールを愛する会」などのページがあり、会員が活発にコメントを書き込んでいます。
コメダ部の活動レポートも、かねてよりファンづくりに力を入れてきた同社ならではのコンテンツ。2017年12月からほぼ月1回開催されているコメダ主催のファンミーティングの模様がつづられます。他にもパン工場潜入レポートや、障がい者アートを採用した豆菓子パッケージの開発秘話など、現地取材による読み物記事も読みごたえがあります。
「サイトをオープンして一週間で集まった会員は7000人以上。トークルームでも熱心なコメントがたくさん寄せられています。開設してすぐにこんなに反響があるとは正直驚いています」と清水さん。
オリジナルマガジンやファンサークルの弱点をサイト開設で解消
実はこのサイトには前身があります。2017年12月に前出のコメダ部が発足。コメダファンが会社や工場を見学したり、新商品開発のモニターになるなど、本社主催の“部活動”は現在にいたるまで継続され、サイトの中核的コンテンツにもなっています。2018年2月にはオリジナルマガジン『くつろぎの時間(とき)』を創刊。隔月発行で2019年5月まで7号を発行しました。
「コメダ部も雑誌も、“お客様との交流”という目的は今回のサイトと同じです。しかし、雑誌だとこちらが伝えたい思いが一方通行になりがちで、コメダ部は参加できる人数に限りがある。コミュニティサイトの開設は、両者の課題を解消する策という意味合いもあります」と清水さん。
現在登録しているコミュニティサイトの会員約7000人の内訳は、女性60%・男性40%。エリアは愛知県20%・東京10%で47都道府県を網羅。来店頻度は月1回以上が65%・年に数回が35%。店舗へ行くよりもハードルが低く、女性も参加しやすいコミュニティサイトは、ライトユーザーがコメダへの興味を深めるきっかけになることが期待できます。
「コメ友」の輪を広げ、いつでもどこでもコメダを楽しむツールにも
「以前、コメダ部の活動で、同じ店に普段から通っている常連さん同士がリアルなお友だち同士になったケースがありました。コメダを通じたお友だち“コメ友”の輪が、サイトやコメダ部主催の部活動以外の場でも広がってくれるといいな、と思っています」と清水さん。このように部活動がリアルな交流を生み出す一方で、コミュニティサイトはいつでもどこでもコメダに親しんでもらえるツールという役割も果たす、と清水さんはいいます。
「自宅でもネットを介してコメダを楽しんでもらおう、というのがもともとサイトのコンセプトのひとつでした。昨今、新型コロナウイルスの影響で外出自粛が続き、自宅で過ごす時間が多くなっています。お店に来ることができなくても、このサイトを通して、いつでもどこでもコメダとつながり、コメダのくつろぎを楽しんでいただきたい。また、テイクアウトのニーズも高まっていますので、店頭販売しているパンやコーヒー粉のおいしい食べ方・飲み方の情報を発信して、楽しみ方の幅を広げてもらえたらうれしい」(清水さん)
喫茶店に欠かせない“常連作り”の新しい形
喫茶店はそもそも常連客の獲得が生命線の業態。コメダもモーニングサービスなどのお値打ちなサービスや、長居したくなる居心地のよさをウリにして、回転数や利益率よりも来店頻度や満足度を高めるビジネスモデルでファンを獲得してきました。コメダのコミュニティサイトは、大手飲食店チェーンの施策としては目新しさがありますが、顧客により深く愛されるブランドづくりというコンセプト自体は、従来の延長線上にある喫茶店らしい取り組みといえます。
常連に愛されて成り立ってきた名古屋の喫茶店文化。その代表格であるコメダが、常連づくりの新しい方法を業界に先駆けて導入したのは、喫茶王国のトップランナーの面目躍如といえるのではないでしょうか。
(写真撮影/筆者 ※コメダ部写真はコメダ提供)