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利上げを急ぐFRB、一見慎重なECB、正常化放棄の日銀

久保田博幸金融アナリスト
(提供:U.S. Federal Reserve Board/ロイター/アフロ)

 ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は14日、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで、0.5ポイントの利上げについて「フェデラルファンド(FF)金利は現在非常に低いことから、妥当な選択肢だと考えられる」とし、「政策をより中立に近い水準へと戻す必要がある」と付け加えた(14日付ブルームバーグ)。

 ウィリアムズ総裁自身が考える中立金利は2~2.5%の範囲内だとも述べている。FRBは3月16日のFOMCでフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0~0.25%から0.25~0.50%に引き上げると賛成多数で決定した。

 実はこの際にも0.5%の利上げが検討されていたが、ロシアによるウクライナ侵攻によって0.25%に止めたとの経緯があった。5月のFOMCからは0.5%の利上げが決定される可能性が強まった。それとともに資産縮小(QT)の開始が決定されるとみられる。

 欧州中央銀行(ECB)は14日の理事会で、量的緩和政策の縮小を続けると決めた。債券の新規買い入れをめぐり、声明文で「7~9月期に終える見通しが強まった」と明記した(14日付日本経済新聞)。

 新型コロナウイルスに感染したため自宅からオンライン形式で記者会見に臨んだラガルド総裁は、「インフレ見通しが上振れするリスクは短期を中心に増した」と発言した(15日付ブルームバーグ)。

 声明文やラガルド総裁の会見からはうかがえないものの、今回も利上げの有無などについて激しいやり取りがあったであろうと思われる。

 ドイツのリントナー財務相は14日、公共財政にとってインフレが最大の脅威だとし、欧州中央銀行(ECB)は物価安定の責務を果たすため行動すべきとの見方を示していた。

 このように利上げを急ぐFRB、一見利上げには慎重にみえるECBとなるが、ECBの内部でも次第に利上げ賛成派の勢力が強まることが予想される。

 それに対して日銀は引き続き、追加緩和しかみていない、片道切符のままの状態となっている。現状、利上げにみえてしまう正常化ができないとしても、状況に応じて適切な金融政策を行う程度の修正すらできないのであろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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