小中学生も「見せしめ」参加強制…金正恩の"若者締め付け"
北朝鮮が2020年12月に制定した「反動思想文化排撃法」。北朝鮮の若者の9割は韓流コンテンツに接しているとも言われるが、それを取り締まることを主目的としたもので、これにもとづく摘発が繰り返されている。
北部の両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)では今年3月中旬、公開批判、つまり吊し上げ大会が開かれた。詳細を現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
恵山市競技場で開かれた公開批判には、多くの人が見守る中で、10代から20代の男女17人の若者が引き立てられてきた。いずれも不純録画物(韓国や外国の映像コンテンツ)を見たり、南朝鮮(韓国)式の言葉遣いを使ったりした者だ。
映像を見ることにとどまらず、それを見て韓国式の言葉遣いを取り締まる「平壌文化語保護法」も今年1月に制定されている。
公開批判には、朝鮮少年団員(小中学生が加盟する旧ソ連のピオネールに相当する組織)、大学生、青年同盟(社会主義愛国青年同盟)のメンバーが参加させられ、青年同盟のイルクン(幹部)が引き立てられてきた17人の若者を一人ひとり呼びたて、その罪状を読み上げ、吊し上げにする。最後に、処分が言い渡される。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
北朝鮮ではしょっちゅう、こうした「見せしめ」イベントが開かれているが、少年団員までが批判に加わる例は初めて知った。もっとも、小学生が公開処刑を見せられたという証言は多数あるから、実際は珍しくないのかもしれない。
韓流コンテンツ視聴を主導した若者には10年の労働教化刑(懲役刑)、他の若者にはそれぞれ7年の刑、または韓国式の言葉遣いを真似た少年には、少年教化(少年院)2年の処分がくだされた。
当局は、反動思想文化排撃法施行後に、大々的に取り締まりを行った結果、あまりにも大量の青少年が逮捕され、実刑判決を受けることとなった。教化所(刑務所)の受刑者は4倍にも増えた。
朝鮮労働党法務部から報告を受けた金正恩総書記は、取り締まりの緩和を命じた。14歳以下は釈放、17歳以下は釈放の上、警告処分といった内容だ。
今回処分を受けた17人の年齢は不明だが、おそらく取り締まり緩和を逆手に取り、韓流コンテンツに接しようという空気が広がったことに危機感を覚えた当局が、再び取締を強化したものと思われる。
2000年代初頭から北朝鮮への流入が始まり、今に至るまで度重なる取り締まりを行ってきたが、根絶どころか広まる一方で、文化、習慣、考え方に変容をもたらすまでに至った。
当局は、一度定着したものをしつこいほどの思想教育で追い出そうとしているものの、多くの国民は「面従腹背」で対応している。いや、取り締まる側の幹部も、実は隠れて韓流コンテンツを楽しみ、韓国商品を高級品として愛用しているのだ。これでは示しが付くわけがない。
かくして、運悪く取り締まりにひっかかった者だけが割を食い、残りの大多数は以前より難しくなったとは言え、取り締まりの緩んだ隙を見て、韓流コンテンツを楽しんでいるというわけだ。