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「東京メトロでもアシストできる」 エリクセン加入で期待と重圧、インテルは「言い訳無用」

中村大晃カルチョ・ライター
2018年11月のCLではインテルと対戦したエリクセン。コンテの新たな切り札に?(写真:ロイター/アフロ)

恒例の冬眠期間が訪れるのか――不安を覚えつつあったサポーターを熱狂させるには十分だった。クリスティアン・エリクセンの加入は、全力疾走を続けるインテルの新たな糧だ。

◆的確補強が高評価

チャンピオンズリーグでボルシア・ドルトムントに痛恨の逆転負けを喫した直後、アントニオ・コンテ監督は選手層の薄さに対する不満を爆発させた。以降、フロントに求められたのが、中盤のクオリティー向上と戦力の充実度アップだ。

そして迎えた冬のマーケットで、ジュゼッペ・マロッタCEOとピエロ・アウジリオSDは、アシュリー・ヤング、ビクター・モーゼス、そしてエリクセンの3選手を獲得した。

コンテ戦術に欠かせないサイドは、クワドゥオ・アサモアの負傷離脱が長引き、ヴァンティノ・ラザロが化けず、アントニオ・カンドレーヴァも調子が下り坂になっていた。ヤングとモーゼスは、その両翼を強化するピンポイント補強だ。

そして何より、エリクセンはインテリスタが待ち望んだワールドクラスのMFだった。半年後に契約満了を迎える選手に、2000万ユーロ(約24億円)の移籍金が妥当なのかは評価が分かれるかもしれない。だが、本来の市場価値や必要としていたラストピースであることから、インテルの決断は称賛されている。

インテルの冬補強に関するメディアや識者の評価は、総じて「ヤングとモーゼスも良い補強で、特にエリクセン獲得は重要。ロメル・ルカクの控えも獲得できれば完璧だった」というところだ。

実際、各メディアとも補強採点でリーグ最高の数字をつけた。スクデットを争うユヴェントスやラツィオと比べると、その差は歴然としている。

筆者作成
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◆王者との差を縮めた?

中でも、エリクセン獲得には様々な賛辞が寄せられた。

「違いをつくれる」(ファビオ・カペッロ/『ガゼッタ・デッロ・スポルト』)

「バランスを揺るがす補強」(マリオ・スコンチェルティ記者/『コッリエレ・デッラ・セーラ』)

「適切なタイミングに適切なかたちで加えた正真正銘のトッププレイヤー」(『メディアセット』)

「1月市場では珍しい、とびっきりのヒット」(ステーファノ・アグレスティ記者/『Calciomercato.com』)

「インテルがいかにユヴェントスのレベルにたどり着く時間を早めたいと望んでいるかの証」(『トゥットスポルト』)

特に、ガゼッタのルイジ・ガルランド記者は「これでコンテはFWにベルベットの橋をかけた。東京の満員の地下鉄車両でもアシストを通せ、マルセロ・ブロゾビッチのプレーメークとサイドの走りを生かす」と絶賛している。

「クリスティアーノ・ロナウドのカリスマやトロフィールームはない。だが、周囲の仲間全員を成長させる力がある。エリクセンが加わったインテルは、C・ロナウドのユーヴェにより近づいた

インテルがユーヴェとの差を縮めたというのも共通認識だ。ガゼッタではカペッロやアッリーゴ・サッキが同調。マルチェッロ・リッピは「縮めたかどうかは置いておこう」としたうえで「インテルがスカッドを完成させ、頂点にとどまるために必要な動きをしたことが大事」と述べた。

◆不満を言えなくなった指揮官

だが、期待の大きさはハードルの高さにつながる。マーケット終了翌日、『コッリエレ・デッロ・スポルト』は一面で「コンテ、言い訳無用」との見出しをつけた。

アルベルト・ポルヴェロージ記者は「インテルは最強の選手を獲得した。そして、クオリティーや組織の次元に不満を述べるさらなる機会をコンテから取り去った」と記している。

エリクセンが先発デビューした2月2日、インテルはウディネーゼに敵地で2-0と勝利した。リーグ戦での連続ドローを3試合で食い止める白星だ。ルカクが2ゴールを決めたのは、コンテがエリクセンとラウタロ・マルティネス(出場停止)の代役を務めた若手セバスティアーノ・エスポージトを下げ、負傷明けのブロゾビッチとアレクシス・サンチェスを投入してからだった。

マッシモ・マウロは、『レプッブリカ』に「選手層が非常に厚くなり、もう言い訳はできないという証明だ。インテルはユヴェントス、ラツィオとスクデットを競わなければならない」と綴っている。

インテルはこれからミランとのダービー、ナポリとのコッパ・イタリア準決勝ファーストレグ、3強の一角ラツィオとの大一番と、大事な試合が続く。さらにヨーロッパリーグ決勝トーナメントを挟んで、3月1日には敵地でユーヴェとの天王山だ。

肝となる1カ月を乗り切っても、スクデットに手が届くわけではない。だが、乗り切れなければ、10年ぶりの覇権奪還は夢と消えるだろう。コンテには、言い訳不可のうれしい重圧がかかっている。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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