待ち受ける拷問と性暴力…2千人に「北朝鮮送り」が迫る
米議会と行政府の常設の合同委員会である中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(CECC)は13日、中国における脱北者問題に関する公聴会を開催。グテレス国連事務総長に対し、「中国が難民(脱北者)を強制送還しないよう説得するうえで影響力を発揮すべきだ」と促した。また、出席した議員からは、「(送還するなら)北朝鮮と中国は同じ人権犯罪者だ」との声も上がった。
この日の公聴会には韓国のNGO、北朝鮮人権情報センター(NKDB)のソン・ハンナ国際協力局長が出席。北朝鮮との国境に面した中国・延辺朝鮮族自治州の和竜市の衛星写真を公開し、同市内に位置する脱北者の収容施設が2021年以降に拡張され、追加の施設も建設中だと説明した。
NKDBによれば、和竜など中朝国境沿いに設置されたこうした施設には現在、約2000人の脱北者が収容されているものと推定されているという。
(参考記事:北朝鮮の女子高生が「骨と皮だけ」にされた禁断の行為)
中国は従来、国内で脱北者を摘発すると、速やかに北朝鮮へ送還していた。だが北朝鮮政府は2020年1月、新型コロナウイルスの流入を防ぐために国境を封鎖して以降は、脱北者の送還を拒んできたとされる。そのため中国側施設の収容者数が増大し、施設の拡大が必要になった可能性がある。
当面の問題は、北朝鮮が徐々に国境を開放するに従い、収容されている脱北者が強制送還される可能性が高まっていることだ。送還された脱北者は、拷問や性暴力(強制堕胎を含む)など、非人道的な扱いを受けることが知られている。
国連などはこれまでも、中国に対して脱北者の強制送還をやめるよう説得を続けてきた。中国は北朝鮮との間で結んだ犯罪人引渡に関する条約を強制送還の根拠としている。しかし中国は「難民の地位に関する条約」と「拷問禁止条約」に加入しており、それらの条約は、国内法に優先して難民の強制送還禁止を順守すべきことを定めているのだ。
だが、中国は頑として脱北者を難民として認めようとしない。強制送還されれば処罰されることがわかっていても、「政治難民ではなく経済的な移民で、違法越境者」と主張し続けている。
そして国際法の専門家も、中国に国際法に基づいた強制送還禁止を強いるのは難しいと見ている。韓国の政府系シンクタンク、統一研究院のイ・ギュチャン統一政策研究室長は「難民条約は(特定国家の国民に対する)難民認定を、その難民が滞在している国に任せており、中国が脱北者を難民として認めない以上は、強制送還の中止を求めるにも限界がある」と述べている。
つまり現状を変えるには、国際世論の圧力で中国が自ら方針を変更するよう促すしかないのだ。