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【新型ゴールドウイング試乗レポート】愛する人と世界一周の旅に出るとしたら……その答えが此処にある

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
HONDA GOLDWING TOUR

 

圧倒する存在感

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世界中にバイクは数多あれども、これほどまでに強烈なオーラを放つモーターサイクルは他に見たことがない。心底そう思えるほど、新型ゴールドウイング(北米名GL1800 ※以下GL)には見る者を圧倒する存在感がある。

唯一無二の水平対向6気筒1800ccエンジンや4輪スポーツカー並みのダブルウィッシュボーンサスペンション、リバース付き7速DCTに電子制御コンバインドABSなど、今ある先端テクノロジーのすべてを盛り込んだと言っても過言ではないスペックと、贅を尽くしたディテールの作り込みなど、言葉では表し切れない凄さが新型ゴールドウイングにはある。

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まさに王者。「キング・オブ・モーターサイクルの称号は美辞麗句ではない、と今回試乗してみてあらためて感じたことだ。

 

ジェネレーションXに向けて若返ったGL

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約40年前、北米向けのフラッグシップモデルとして世界最高性能を目指して開発されたGLは世代を重ねる度に大型化し、ラグジュアリー色を強めた大陸横断ツアラーになっていったのは周知のとおり。それが今回17年ぶりにフルチェンジした。

まず、見た目から劇的に変わった。試乗会では旧型も展示されていたのでじっくり見比べてみたが、新型はだいぶスリムに若返った感じだ。従来の図太い押し出し感は今もって圧倒的だが、新型はずいぶんとシャープに躍動感のあるデザインになった。

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開発者にも話を聞いた。誕生以来、豪華さや快適性を求め続けたGLが主なターゲット層としてきた米国のベビーブーマー世代も最近では高齢化が進んでいるそう。このままだとGLに乗る人がいなくなってしまう危機感から、新型GLはジェネレーションX世代を狙って開発されたという。

X世代は今の40代~50歳前後で、世の中が重厚長大から軽薄短小へとパラダイムシフトしていった時代に青春を謳歌した世代である。コンピュータなどの電子機器に代表されるように、コンパクトで効率的なことが美しいと刷り込まれた最初の世代とも言える。

バイクを使ったツーリングに話を戻すと、のんびり大陸横断というよりも、もっとコンパクトな旅をスポーティな走りとともに楽しみたいニーズを持った人々だ。

 

時代のニーズを反映した新世代パッケージ

新型を目にして実際に乗ってみて、自分の琴線に触れた部分はまさにここ。つまり、新型のコンセプトそのものだ。略せば「日常から長旅まで幅広く使える軽量・高密度な新世代パッケージを目指したという。

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従来型GL1800やその前身となったGL1500などの歴代GLシリーズも、見た目によらず軽快な運動性能を持っていたのは事実だが、故にグランドツアラーとしての能力を削がずにさらに一歩スポーツに踏み込んだ走りができたなら、より手軽に乗り回せたらどんなに素晴らしいかと自分勝手に夢想していた。

新型ゴールドウイングはまさにその願いを形にしたようなマシンだった。

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さて、試乗インプレッションだが、新型GLのハード面での機能やメカニズムに関しては、ホンダのホームページにどこよりも詳しく解説してあるので、ここでは純粋に自分が乗って感じたことをお伝えしたい。

 

操る楽しさを優先したライポジ

目の前にあるGLの彫りの深い伸びやかに洗練された造形や、得も言われぬ艶やかで濃密な色合いなど、ちょっと近付き難いような雰囲気は何なのだろう。これは開発者の方々が新型GLに注いだ並々ならぬ情熱が憑依したものだと気付いた。さらに言うとそれは世界一の2輪メーカーであるホンダが本気で作り上げた頂上モデルの威圧感だった。

跨ると意外にもコンパクト。従来モデルはパッセンジャー主体でライダーの居住空間がやや犠牲になっていたが新型ではシートまわりや懐に余裕があり、それでいてハンドルが近い。

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ライダーが積極的に操る楽しさを優先したライポジであることは明らかだ。コックピットを見回すとそこは未来感のあるゲージが並び、高級サルーンのような気品に満ちている。スマートキーでエンジン始動し、右手元のDCTスイッチをドライブに入れると、スルスルと水面を滑るように動きだした。

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宙を飛ぶようなF6エンジン

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水平対向6気筒、通称「F6」エンジンは昔から“シルキーシックス"と呼ばれる滑らかな出力特性が特徴。その乗り心地の素晴らしさは、時として空飛ぶ絨毯にも例えられてきた。

今回排気量はほぼ同じ1833cc(従来型は1832cc)ながら完全新設計となってよりパワフルかつコンパクトに刷新され、最高出力も126psと従来型から17psアップし、全域でよりトルクフルになっている。

排気量をキープしながらシリンダーピッチを詰めるために若干ロングストローク化されていることも影響していると思うが、以前よりも低中速トルクが分厚くなった気がする。

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特に最強の「スポーツモード」でフル加速しようとすると40kgも軽量化されたとは言え400kg近い巨体が一瞬、路面を蹴って離陸するかと思う勢いで射出される。続いて、試しにコーナー手前でフルブレーキングしてみたが、電子制御化された前後連動ABSが最大効率で猛烈に車速を削ぎ取っていく。

その気になれば、この巨大なエネルギーを安全かつ相当アグレッシブに操ることが可能だ。40年に渡って改良を積み重ねてきたグランドツアラーとしての資質の高さは言うに及ばずだが、それが本物かどうかはこうした基礎体力の高さがあってこそだと自分は思っている。

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排気音もチューニングされてワイルドに迫力が増した。スロットルを開けたときの空気を震わせるような独特の咆哮はどこかで聞いた気がすると思っていたら、同じ水平対向6気筒のレイアウトを持つポルシェにも似ている。

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たった2000rpmで高速巡行可能なF6エンジンや何事にも動じない超安定した走りも、ダブルウィッシュボーンを得てさらに4輪っぽくも感じてしまうが、これもいい意味でGLの個性だと思う。

 

好みのコース料理でもてなしてくれる

ちなみにライディングモードは4種類(レイン、エコノ、ツーリング、スポーツ)の設定があり、それぞれのモードに応じて出力特性はもちろん、トラコンやABSの介入度の他、サスペンションの減衰力やブレーキ特性なども変化する。

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さらにDCTのシフトタイミングやエンジンブレーキの効き方まで自動的に調整してくれるのだ。まるでメインディッシュを引き立てる副菜が絶妙に組み合わされたコース料理のようである。その日の気分や体調によって、好みのメニューを選べるわけだ。

もちろん、自動変速とマニュアル変速の切り換えや、ソロやタンデムや荷物の有る無しによってサスセッティング(リヤ側プリロードのみ)を個別にセッティングすることもできるわけで、その意味ではアラカルトも用意されているという、まさに至れり尽くせりのもてなし様である。

  

新世代DCTが乗り手のハードルを下げた

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駆動系は相変わらずシャフトドライブだが、マニュアルミッション仕様は5速から6速となり、今回試乗したメインモデルのDCTタイプには第三世代の7速DCTが採用された点も見逃せない。

低中速域はクロス気味の設定で途切れのない俊敏な加速感で、ハイギヤはよりワイドレシオに設定されているため、より低回転でもウルトラスムーズな高速クルーズが可能になっている。

おまけにエンジン動力を使った微速前後進機能、通称「ウォーキングモード」も備えられるなど、坂道や駐車場での取り回しの利便性も大幅に高められた。これにより、体力・体格的なハードルも大いに下げられたと思う。実際、今回参加した女性ライダーも難なく取り回しを楽しんでいる様子だった。

 

巨大なCBRのように曲がっていく

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そして、注目すべきは新採用のダブルウィッシュボーン式フロントサスペンション。操舵とクッション機能を分離したおかげで、通常のテレスコピックのようにインナー&アウターチューブ間に摺動抵抗がなく路面追従性が一定のため、常に乗り心地が良くフットワークも軽快。

フロント荷重を支えているのがテレスコではなく完全な剛体のツインビーム構造のおかげで、カッチリとした正確なハンドリングも実現している。新型では車体の大幅な軽量化とともにエンジン搭載位置を前方に寄せたことで、重心位置もよりフロント寄りになったが、この新しいサスペンション機構のおかげで過度なピッチングモーションを起こすことなく前輪荷重を保ったままコーナーに入っていける。

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つまり、車体は安定したままフロントからスッと曲がっていくのだ。この巨体にしてライン取りの自由度も高く、まるで巨大なスーパースポーツ「CBR」に乗っているみたいな感覚と言ったら放言になるだろうか。

  

新たなキングはやはり玉座に相応しかった

ブルートゥースを通じてマシンとインカムを繋いでスマホの音楽などを楽しめるインフォテイメントシステムや、直接前後に備わったスピーカーから音声を聞けるオーディオシステム、そして、爽やかな風の流れを計算したフル電動スクリーンや前後席に装備されたシートヒーターなど、本当の意味での快適性を極限まで追求しているところもポイントだ。

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もし自分に十分な時間とお金があったとして、愛する人と共に世界一周のバイク旅を楽しみたいとしたら何を選ぶか? その問いに対する迷いようがない答えが此処にある、と自信を持って断言できる絶対感が嬉しい。新たなキングはやはり玉座に相応しいモデルだった。

最後に、タンデムライダーのコメントも含めたリアルな動画インプレッションを掲載していますので是非チェックしてみてください!

■HONDA GOLDWING TOUR 動画インプレッション

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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