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【泉佐野市】“絶滅危惧種” 的存在の『たぬきケーキ』が泉州で復活 きっかけは「一人のお客さんの声」

旅する日々の記憶と記録。matka08ライター(泉南市・泉佐野市)

一人の声が、一人の熱意が、パティシエの心を動かしました。

レトロなお菓子が大好きで、純喫茶や洋菓子店巡りを楽しむ友人は、日頃から「ある問題」に悩みを抱えていました。
それは、昭和から愛され続けてきた“レトロで可愛い洋菓子”が、今 絶滅の危機にあるということ。『たぬきケーキ』も、その中のひとつだといいます。

昭和のアイドル『たぬきケーキ』

「たぬきケーキめぐり 6」より
「たぬきケーキめぐり 6」より

昭和42年ごろには全国に生息していたといわれている『たぬきケーキ』は、昭和のアイドル的存在でした。その愛らしい姿、チョコとクリームの甘ったるさが 子どもたちの心をわしづかみにし、瞬く間に日本中に棲みつくようになりました。主な生息地は、高度経済成長期にできた商店街などにある町の小さなケーキ屋さん。訪れる子どもからの熱い視線を浴び、のんびりと居座り続けた『たぬきケーキ』でしたが、コンビニの台頭とスイーツの多様化により「町のケーキ屋さん」の需要も低下し、ショーケースから次々に姿を消していきます。
その後も急速にその数を減らし、生き残っているものたちは、“絶滅危惧種”として、今もなお、全国でひっそりと暮らしています。

「生息マップ」も存在。「ミニコミ誌」も発行されている!

そんな『たぬきケーキ』を愛してやまない”松本よしふみさん”という人物がいることも取材で知ることができました。
この方は『たぬきケーキ』を愛しすぎて、2007年に『たぬきケーキ』専門ブログ(たぬきケーキのあるとこめぐり/全国たぬきケーキ生息マップ)を開設しています。全国の生息地へ向かい、捕獲しては写真を撮り、その特徴や味をブログやインスタグラムで愛嬌たっぷりに紹介されています。

取材にあたって、松本さんとコンタクトをとり、「生息マップ」「ミニコミ誌」を紹介させていただく許可をいただきました。
その内容を一部掲載いたします。

「全国たぬきケーキ生息マップ」

「全国たぬきケーキ生息マップ」では、数多く生息しているようにも見受けられますが、“稀に生息(緑)”や“絶滅(灰)種”もあり、生き残りをかけた戦いが全国で繰り広げられています。

こんなところにも!
こんなところにも!

ミニコミ誌「たぬきケーキめぐり」

「たぬきケーキめぐり 6」(編集、写真、文:松本 よしふみ 発行日:2018年11月20日)
「たぬきケーキめぐり 6」(編集、写真、文:松本 よしふみ 発行日:2018年11月20日)

ミニコミ誌「たぬきケーキめぐり」は、ブログに書かれている内容によると現在vol.6まで発行されています。販売もあったようですが、現在「注文フォーム」は閉鎖されていました。

2018年に発行された冊子のため、現在「たぬきくん」と「ポン太くん」の生息は不明
2018年に発行された冊子のため、現在「たぬきくん」と「ポン太くん」の生息は不明

全国に生息する『たぬきケーキ』は、それぞれにユニークな名前がついており、捕獲直後に名前を呼び愛でる、撮影する、など楽しみ方もさまざま。ですが、これはケーキ。
ためらわずに食べていらっしゃいます。

中には、こんな悲しいカードが。“絶滅種”です…。

元老舗高級洋菓子店のパティシエが動く

『たぬきケーキ』の復活を願う友人の想いに力を貸してくださったのは「ケーキ工房 ツリーハウス」代表の山岡 勉(やまおか つとむ)さんです。
老舗高級洋菓子店「ポアール本店帝塚山」ご出身の一流パティシエということを、前回の記事でご紹介させていただきました。

参考記事:まさか泉州にあったなんて。元高級洋菓子店のパティシエが復活させた『想い出のスワンシュー』

その取材と並行して、友人がなんと山岡さんに「たぬきケーキをつくってほしい」と密かに懇願していたのです。
そんな大胆なお願いをしていたとは。
そして、まさか実現してくれるなんて。

南大阪初の生息地へ。感動のご対面

「たぬきケーキが完成しました!」

そんな連絡を受けたのは5月末日。
はやる気持ちを抑えられない友人は、捕獲を前に 乙女のようにはしゃぎっぱなしでした。
たぬきケーキラバー” の人たちは、『たぬきケーキ』を買いに行くことを「生息地に捕獲しにいく」と言います。
南大阪初の生息地が、わが町の「ケーキ工房 ツリーハウス」となったわけです。
なんだか素敵なお話です。もちろん、わたしもワクワク。

*『たぬきケーキ』は、どこかに潜んでいる可能性もあるため、南大阪での生息の有無は定かではありません。

「こんにちは~!」
「こんにちは~!」

パティシエの勉さんと底抜けに明るい圭子さんの笑顔に迎えられ、お礼を言う友人。
早速、『たぬきケーキ』を発見し大興奮!

「たぬたぬ」470円(税込)
「たぬたぬ」470円(税込)

「たぬたぬ」と命名された『たぬきケーキ』が、まるで昔からここで生息していたかのような顔つきでショーケースに鎮座していました。その姿の愛らしいこと!

ツンと上を向いた鼻、とぼけた表情、かわいらしい真っ赤なリボンでおめかししています。

きゃー! と言いながら写真をバシバシ撮る友人。そりゃ、こうなる
きゃー! と言いながら写真をバシバシ撮る友人。そりゃ、こうなる

『たぬきケーキ』の製作は、企画担当の奥様 圭子さんの審査を経て、やっとこさ完成したといいます。カタチがだめ、顔が嫌、フォルムが気にいらないなど、圭子さんのダメ出しは相当厳しかったようです。
(まだ納得していないとか?)

友人の反応は、「想像以上に可愛い。300%の出来栄え!」と大満足。

わたしも、取材をきっかけに『たぬきケーキ』がわが町に生息してくれることを嬉しく思うと同時に、絶滅させてはいけないという使命感のようなものが込み上げてきました。

『たぬきケーキ』フォーエバー

捕獲後、「たぬたぬ」と対峙する時間の愛しいこと。
もう、永遠にあなたたちを愛し続けます。

おとぼけ顔にあわせた胴体はいくつかの平面を纏う「多面種」。
「四角種」や「二匹一組種」など、全国にはいろんなキャラの『たぬきケーキ』が存在します。

可愛いのはわかった。だけど、ごめんよ。君たちはケーキとしての使命を果たさなければなりません。人間に食べられる運命なのです。
それでは、大胆にいただきましょう。

「ちょ、ちょっと、なにしおんねん」という顔をしますが、遠慮せずにいっちゃってください。
顔の部分は生クリームをチョコでコーティング。昭和の頃の『たぬきケーキ』は主に甘ったるいバタークリームが使われていましたが、こちらは甘さ控えめのオトナ味
渋めのチョコも良い感じです。

胴体部分は、バナナが混ぜ込まれたしっとりプルプルのスポンジ生地+ふんわり軽いミルクムース+渋めのチョコの三層構造。
王道の「チョコバナナ味」ですが、とても上品でおいしい。
和歌山や神戸など、方々捕獲に励む友人でさえ、フルーツが入った『たぬきケーキ』は捕獲したことがないとのこと。生き残りをかけ、キャラを変えてさまざまな姿や味で生息する『たぬきケーキ』ですが、「チョコバナナ」という“ハイカラ種”は珍しいのかも。
人なつっこそうな風貌に甘さを想像するが実はクール。そんなやつらです、この子たちは。

今回の製作にあたり、『たぬきケーキ』のことをいろいろ調べてくださり、友人の熱い想いにこたえて 復活に力を貸してくださったパティシエの勉さんと奥様の圭子さんに心から感謝いたします。

「ケーキ工房 ツリーハウス」のオーダーケーキ

「300%の出来栄え」と友人が満足した『たぬきケーキ』ですが、「ケーキ工房 ツリーハウス」では、オーダーケーキも受け付けています。
この日も友人と過去の作品をアルバムでチェックし、それぞれの誕生日にオーダーすることを決めました。

想い出のランドセル
想い出のランドセル

乗りもの
乗りもの

え⁈ 鍋
え⁈ 鍋

ら、ラーメン⁈
ら、ラーメン⁈

そして、わたしはこれに決めました!

阪神タイガース! クリーンナップ、もっとがんばってよ…

オーダーケーキは、5日前にお電話でご予約いただければ製作可能とのこと。

こちらはバースデーケーキの価格表ですが、オーダーケーキの価格は要相談となりますので、希望のデザインを伝えたうえでご相談くださいね。

一人の声が「昭和レトロな洋菓子」の歴史を紡ぐ

「一生に一度の想い出!」と感無量の様子の友人。
一人の声が「昭和レトロな洋菓子」の歴史を紡ぎました。

「インスタで見かけてから“たぬきケーキ愛”が加速した。次は、折りを見て『鹿児島』に捕獲しに行く予定」なのだとか。
すごすぎる情熱。

「ケーキ工房 ツリーハウス」で『たぬきケーキ』を定番商品とするかどうかは現時点ではわからないとのこと。
夏場不在”や“稀に生息”ということがあったとしても「たぬたぬ」は、わたしたちの町に居続けてほしいですね。

いつか「たぬたぬ」が「生息マップ」入りする期待を込めて。

みんなちがってみんないい
みんなちがってみんないい

「たぬたぬ」フォーエバー
「たぬたぬ」フォーエバー

【基本情報】
たぬきケーキ「たぬたぬ」
生息地:「ケーキ工房 ツリーハウス」
公式インスタグラム(外部リンク)
住所:泉佐野市上瓦屋335-16
Tel:072-496-8206
営業時間:10:00~20:00
定休日:火曜
駐車場:あり(店前2台)
取材協力 「ケーキ工房 ツリーハウス」店主 山岡 勉 様、圭子 様
*記事内容は取材当時のものです。
*「たぬたぬ」の生息につきましては、インスタグラムをご確認ください。


ライター(泉南市・泉佐野市)

なんでもない日々を旅するように暮らす日常写真家。「ローライ35s」という小さなフィルムカメラでささやかな日常を記録しています。私たちの町のちょっとうれしくなるあんなことこんなこと。皆様の日常がもっともっと楽しくなりますように。

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