【泉南郡】デジタルまみれの生活に月イチの「自然体験」を 芋掘り、秘密基地づくり、本気の肝だめしも⁈
生まれた時から、デジタルにまみれた生活を余儀なくされる現代のこどもたち。
それは便利な反面、五感で抱きしめるさまざまな出来事を遠ざけてしまうことにも。月に一度、心が豊かになる「自然体験」を提供してくれる学校があります。
秋晴れが心地いい11月23日土曜日、「無農薬栽培のさつまいもの芋掘りと焼き芋体験」におじゃましました。
【親子で収穫体験】無農薬栽培のさつまいもの芋掘りと焼き芋体験!!
日時:10月20日(日)~12月初旬
① 10:30~11:30 ② 14:00~15:00 ➂15:30~16:30
場所:くまとりこもれび菜園(泉南郡熊取町久保2325-1)
料金:大人(中学生以上) 1980円 こども(4歳以上) 1280円
好奇心を刺激する「小さな農園」
2024年2月に開校した「くまとりこども農業学校」は、種まきや収穫などの農作業、自然の中での虫とりや遊び体験を通して「自然との繋がり」や「持続可能な生活の大切さ」を学ぶ場所。熊取町の山の中にある「小さな農園」がその舞台です。
「学校」といっても入学手続きの必要もなく、好きなイベントに参加するだけでOK。
自称「こどもおじさん」の岩﨑 則重(いわさき のりしげ)さん(学校長)が考案するプログラムは、農作業だけでなく「秘密基地づくり」や「水遊び」「本気の肝だめし」など、こどもの好奇心を刺激し、昔こどもだった大人に響くものばかり。
10時30分「芋掘り体験」スタート
今回の参加者は、 大阪市、堺市、熊取町からお越しの3組のご家族。
堺市ファミリーは、このあとキャンプに行かれるそうで30分早く到着して既に芋掘り中なんだとか。案外自由なんですね 。
注意事項もシンプル。「ここでは多くの野菜を育てています。ほかの野菜の上にのらないように」「掘りにくい時は“ゴールデンシャベル”を貸し出します」など。
一般的な「芋掘り体験」は、こどもが掘りやすいようにあらかじめ“掘り起こしておく”ことも多いそうですが、ここではガチ。
救世主的役割の“ゴールデンシャベル”でお芋を真っ二つにしてしまうお父さんに冷ややかな視線が集中することもあるから気をつけて。(「ヒーロー」から「いらんことしい」へ一気に降格)
香り高い土の匂いとゆらめく秋風。ダンゴムシも発見
湿った土の匂いが香ばしい、野菜がいっぱい植わったおいしそうな畑。ゆらめく秋風が頬をなでます。
今回の「芋掘り体験」では、“安納芋株”と“紅はるか1株”を掘ることができるのですが(こどもはどちらか1株)、これが なかなか手強い様子。
家族の協力のもと、無事に引っこ抜けた喜びに笑みが止まらないともきくん(小1)。スーパーで売られているさつまいもとの違いに、ビックリ仰天!
よいしょ、よいしょ、と本腰を入れて(?) さつまいもを抜こうとしているのは3歳のなつきちゃん。ご家族は、2年ほど前に兵庫県から熊取町に住まいを移し、ネットでこの場所を見つけて申し込んだのだそう。「こどもが気軽に体験できる場所を探していました。近くに良いところがあってよかった」とお母さん。
「芋掘り職人」のように黙々と掘り続けていたなつきちゃん。聞くところによるとお芋が大好きなんですって! きゃわゆい。
こちらのご家族も力強く大地に根のはった さつまいもに苦戦しています。
年中さんのゆうすけくんは、どうやらお芋以外のなにかが気になっている様子。
ダンゴムシです!
ゆうすけくんは、年長さんが「芋掘り体験」をしたと聞いて、ぼくもやりたい!
と、憧れて参加。でも、虫が大好きで意識がそっちへいっちゃってます。
けれど、こどもは「思うまま」がいい。
興味が枝分かれしていくのも人間形成の基盤となる原体験(*)があってこそ。こどもたちが、自らの興味・感心によって五感で楽しむ体験は、のちのちの個人の行動や思想に大きな影響を及ぼします。自然と触れあい、命の大切さを学ぶこと、家族でよろこびを分かちあう経験の必要性を「デジタル社会」を生きる今、強く感じます。
*「原体験」とは、人の思想形成に大きな影響を及ぼす幼少時の体験のこと。
ヤフーで調べたけど「ココしかなかった」芋掘り体験
どうやら、今年はさつまいもの育ちが悪いようで「ヤフーで調べたけどココしかなかった」と参加者の声。「くまとりこども農業学校」では、年内いっぱい「芋掘り体験」に参加できます。
芋掘り後は、お楽しみの“焼き芋の食べ比べ大会”です。
焼き芋(紅はるか・安納芋)は、あらかじめ岩﨑さんのこどもたちがスタンバイ。掘ったさつまいもは、お持ち帰りする流れとなります。
〈豆知識〉
さつまいもは、洗わず新聞紙に包んで 15度くらいの部屋で1カ月ほど寝かすと甘くなる。
労働のあとの食事はうまい⁈
「労働のあとの食事はうまい!」と言わんばかりに美味しそうにパクつくこどもたち。「働かざる者食うべからず」なんて言葉とは無縁のこどもたちも、この時ばかりは この瞬間の尊さを知ります。
男性には、あっさりとした甘さの「紅はるか」が、女性には、まったりとした甘さの「安納芋」が人気でした。
農地の引き受け手、10年後は4割に
デパ地下に野菜を卸す「八百屋さん」に勤めていた岩﨑さんは、大阪府が実施した「準農家制度(*)」(令和6年10月末で終了)を利用して農家の道へ。地元の産直市場や観光協会、食事処などに新鮮な野菜を届けています。
*「準農家制度」とは、小規模な農地を借りて農業経営を行うことができる制度。
農林水産省は、効率的で安定的な経営を営む「担い手」に農地の8割を集めることに注力してきましたが、現状は6割に届かず。このままでは、10年後には農業が4割になる未来が待っている、と岩﨑さんは話します。そのような懸念から、「畑を遊び場」にして、農業というものをもっと身近に感じてもらおう、いま自分ができること(農業の知識)で地域に貢献しよう、と「くまとりこども農業学校」を開校。
「こどもの貧困や不登校問題をどうのこうのとかじゃないんです。僕自身もこどもみたいなところがあるから、畑で一緒に遊ぼうぜ!! ってノリですよ」と茶目っ気たっぷりに笑います。
その言葉の通り、「くまとりこども農業学校」のプログラムは遊び心あふれる魅力的なイベントがいっぱい。
たとえば、令和7年のイベント(予定)は、「山の畑で秘密基地作り」(4月)、「夏野菜の収穫体験」(6月~7月)、「山の畑で水てっぽう大会」(夏休み中)、「山の畑できもだめし大会」(夏休み中)など。
バーチャルな世界では味わえない「リアルな遊び」が、こどもの五感を刺激します。
詳しい内容につきましては、「くまとりこども農業学校」公式ホームページ(外部リンク)をご確認ください。
不確実な時代に、ささやかな未知にふわりと連れ出してくれるような体験は、未来を生きるこどもたちの光となるはず。
月イチの「自然体験」を、デジタルにまみれた生活に取り入れてみませんか?
大人だってきっと、あの頃の「自分」を思い出します。