先進国で一番はオランダ、次いでドイツ、スウェーデン…諸外国の景況感の実情をさぐる
経済の良し悪しは具体的な指標だけでなく、国民の経済への実感(景況感)からも推し量ることができる。無論そこには国民性や地域による性質の違いも反映されるため、国々の経済の実情が国民感情も合わせ反映された形で映し出されることになる。今回はアメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2017年6月に発表した公開調査報告書「Global Publics More Upbeat About the Economy」(※)を基に、数十か国に渡る国の景況感の実情を、先進国と新興国に大別した上で見ていく。
次に示すのはそれぞれの国の国民に対し、自国の経済状態についてどのような感想を抱いているかを「とても良い」「良い」「悪い」「とても悪い」の4選択肢から選んでもらい、そのうちポジティブな「とても良い」「良い」の回答率を合算した結果。半数を超えていれば、その国は好景気な状態にあると国民自身が認識していると見ても良いだろう。
まずは先進国。
もっともよい景況感を示しているのはオランダ。87%の人が「今の自国は景気がイイね」と認識している。ほぼ同率でドイツ、そしてスウェーデンが続く。
3か国から随分と値は落ちるが、ポーランド、イスラエル、オーストラリアが続き、ここまでが6割台。カナダ、アメリカ合衆国、イギリスが並び、ここまでで過半数。日本は41%、スペインやフランスは2割台、そしてイタリア、韓国、ギリシャと続く。中央値は51%で、全体としては半数ぐらいが景気の歩みはしっかりとしているとの感覚。
続いて新興国。
調査対象国に限れば、新興国で景気が良いとの認識率がもっとも高いのはインド。次いでフィリピン、セネガルと続き、ここまでが第一グループ。第二グループとしてトルコ、インドネシアが続き、ここまでが過半数。回答値の偏りが存在するのは先進国と変わらない。
中央値は45%となり、新興国よりは低め。報告書の解説では、低い値を出したベネズエラやブラジルが足を引っ張ったとあるが、先進国でも低い値を計上している国は多々あり、やはり全体的に先進国と比べて景況感の認識がいくぶん後ろ向きなのだろう。
これらは現状の景況感における結果だが、将来的見通しとなるとまた別の方向性が見えてくる。先進国と新興国それぞれにおける、自分達の子供が成長して大人になる頃、自国の経済はどのような動きを見せているかを尋ねた結果が次のグラフ。
伸びしろや楽観主義か否かも要素としてはあるのだろうが、先進国では1/3程度しか景気が良くなるとの認識を示していないのに対し、新興国では5割強が良くなると考えている。将来の見通しもまた、景況感には大きな要因となるため、この考え方の違いは重要な結果に違いない。
報告書では一部の国に関する具体的な値も掲載されている。インドでは76%、ナイジェリアでは72%、チリでは69%が景気は良くなると判断している。他方先進国ではギリシャ、日本、フランス、オーストラリア、カナダ、スペイン、イギリスで、7割以上が悲観的な考えを持つとの話。国民性も影響しているとはいえ、将来に希望が持てるような経済振興を目指したいものではある。
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※Global Publics More Upbeat About the Economy
2017年春に91か国の18歳以上の該当国国民に対し行われたもので、有効回答数は各国約1000件ずつ。原則は電話によるインタビュー形式での調査方式だが、一部の国では対面方式で実施されている。各国の国情(年齢、性別、教育、地域)などに従ったウェイトバックが実施されている。