じわりと伸びるパソコンの買い替え年数
じわりと伸びる普通の世帯のパソコン買い替え年数
気軽なネットへの窓口の主役はスマートフォンなどにシフトしつつあるが、パソコンがいまだに必要不可欠な情報端末には違いない。そのパソコンの普通の世帯における買い替え年数動向を、内閣府の消費動向調査の公開データをもとに確認していく。
まずは一般世帯(二人以上から構成される世帯)におけるパソコンの買い替え年数の推移。あくまでもパソコンの買い替えをした世帯に限定した平均値であることに注意。
大よそ赤い破線による補助線の動向からも分かるように、パソコンの買い替え年数は伸びる傾向を示している。もっとも古いデータの2002年から始まる3年間では平均4.2年、最新の2015年に終わる3年間では平均5.8年。1年半ほど伸びた計算になる。パソコンそのものの高性能化で買い替えの必要性が薄れたこと、OSのサポート期間延長などで「OSの組み換えが面倒なので新機種へ買換え」といった買い替え動機が減退したようだ。また冒頭の通り、インターネットへのアクセス頻度の点でスマートフォンなどが多用されるようになったことから、パソコンの利用機会そのものが減り、買い替えの必要性が減る事案が増えているのも影響しているのだろう。
これを単身世帯(一人身世帯)の動向と合わせて、世帯種類別の動向を比較しやすいようにしたのが次のグラフ。
全般的に単身世帯の方が買い替え期間が短い。1年前後の差が生じている。これは単身世帯の方が使用しているパソコンのライフサイクルが短い事実を表している。
世代別や性別の変化を探る
次のグラフは一般世帯・単身世帯それぞれの男女、世代属性における、過去8年間の買い替え年数推移をまとめたものである。
一般世帯では男女に差異はほとんど無い。しかし単身世帯では男女間に大きな開きが見られる。前者の女性は配偶者の男性にアドバイスを受け、購入をうながされる場合もあるものの、後者の場合はその機会が少なく、自然と手持ちの機種を長く使い「こなして」しまう状況が想定される。
また一般・単身共に若年層ほどパソコンのライフサイクルは短く、高齢層ほど長い。特に30歳未満層ではそれより上の世代と比べ2~3年ほどの違いが見られる。やはり若年層の場合、新しい技術を持ち話題にあふれる新機種・新OSに目移りしてしまうのだろう。
駆け込み需要を買い替え理由から探る
最後に「買い替え理由」に関する動向。
両世帯種類とも年々「上位品目」が減り「故障」が増えている。これはパソコンが故障しやすくなったからでは無く、「上位品目」の回答数が減ったため、相対的に回答率が上がったのがその理由。パソコンの高性能化やOSのサポート期間延長などから、上位機種への買い替えの必要性が低下したことによるもの。Windows3.1から95にシフトした時のような、「パソコンそのものを買い替えて実装しないと時代に乗り遅れる」的な雰囲気は今や無い。
それでもなお一般世帯では減少がゆるやかで、かつ何度かリバウンドも見せているが、単身世帯では2010年以降ほぼ一貫して、「上位品目」の比率が落ちている。配偶者によるサポートの有る無しに関係なく、パソコンそのものの買い替え必要性が薄れている(と判断されている)可能性が高い。「新OSが出たので必要性が高いとは言い切れないが、良い機会だから新しいパソコンを買って環境を整備しよう」との事例が少なくなっているのだろう。
また2014年に限れば消費税率改定と2014年4月9日付でサポートを終了したWindows XPに関する駆け込み需要的特需の影響が、「その他」の急増に表れている。これらはひとえに「消費税率引き上げ分を余計に払わされる前に、せっかくだから前倒しで買い替え」「XPがサポート切れになるし、OS入れ替えるのも面倒だし、古めのパソコンなので良い機会だから買い替え」的な回答と考えられる。
2015年も大よそ2014年の状況を継続しているが、再び「上位品目」の比率は低下している。今後もこの傾向は継続することだろう。
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